これぞ“メルセデス流” ハンブルク工場レポート
掲載 更新 carview! 文:川端 由美/写真:メルセデス・ベンツ日本
掲載 更新 carview! 文:川端 由美/写真:メルセデス・ベンツ日本
この工場の大元となったのは、1935年に「ヴィダル&ゾーン/テンポ」がこの地に開いた3輪トラックの工場である。その後、ダイムラーの子会社に吸収されて、1970年代にダイムラー傘下となる。2007年からはパワートレイン・グループの一員として、正式にダイムラーAGに組み込まれた。現在は主に、フロント・アクスル、リア・アクスル、ステアリング・コラム、ペダル類、排気マニフォールドを製造する。加えて、研究開発部門を担当するDr.ウェーバーの管轄下にある軽量化R&D部門が併設されており、研究開発に約100人が従事している。
工場の解説をしてくれたシュテファン・ゲーブ氏(コンポーネント生産担当)に、もう少し詳しく訊いてみよう。「ダイムラー・グループに属してはいますが、ISO14001、ISO5001、ISO/TS16949といったグローバルで通用する品質管理基準に適合していますから、他社から要請があれば部品供給ができます。また、メルセデス・ベンツの製品に要求されるクオリティを保つには、部品の生産まで遡って高い品質管理をする必要があります。加えて、不良率をppmレベルに下げる努力もしています」。
それでも、ダイムラー・グループとして優遇されているのでは? と勘ぐってみると……、「開発や設計のエンジニアと近いところで生産にあたるメリットはありますが、その一方で、品質やコスト面でグループ企業だからという特別扱いはありません。ダイムラーの技術部門も、購買部門も、部品メーカーと競合させた上で、当工場の部品を採用しています。他のサプライヤー同様、購買部門からはコスト低減の要求があり、技術部門からは軽量化や高品質への要求があります」。
グループ内とはいえ、非常に厳しい競争にさらされていることは、この工場が生き残るうえでも有効だ。「従業員の教育レベルを向上させ、常に工程を進化させて高効率化させることを通して、ハンブルク工場で部品を生産する優位性を保っています。安易に低コスト化を追求すれば、長期的な競争力を失いかねません。簡単に作れる部品であれば、世界のどこで誰が作っても同じになってしまいますから」。
実は、この10年間、ハンブルク工場の生産現場で働く人の数は、1500~1600人程度で安定して推移しているそれでいて、売上は10年前の5億ユーロから12億ユーロへと倍増している。生産効率を高めるために人材教育を徹底して行っているという。
また、国内に生産を留めることは、生産ラインの品質を高く保つことにつながり、ラインを新設計する上でもアドバンテージがある。例えば、「205」の社内コードナンバーで呼ばれる新型Cクラスの生産をスタートするにあたっては、生産現場から設計段階まで遡って改良を施し、フレキシブルな生産に対応できて、品質も高められる設計にすることができた。これは、生産現場の質が高いからにほかならない。
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