ランドクルーザー300オフロード試乗 世界初採用の「E-KDSS」を全グレードに設定してほしい
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:篠原 晃一、トヨタ自動車 107
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:篠原 晃一、トヨタ自動車 107
続いてモーグル路。ここで求められる性能はホイールアーティキュレーション。タイヤ3輪を接地させたまま残る1輪をどの程度ストロークさせられるかという尺度で、これが優れているほど激しい凹凸でも四輪が接地してトラクションが確保される。
ランクルは左右交互に盛り上がったセクションを、四輪を伸び縮みさせながらゆっくりと進んでいく。そりゃなんちゃってオフローダー(世の中のSUVの多く)であっても、どこかの車輪が浮いてもその車輪のみにブレーキをかけ、他の車輪のトラクションを保つため、走行できなくなるわけではない。だが対角のシーソーのようにギッコンバッタンと車体が揺さぶられ、安定を失う。その点、ランクルはかなりの凹凸でも四輪が接地したままなので不安なく走破できる。
モーグルを越えると現れるのは、本日のメニューで最も厳しいロックセクション。お城の石垣を崩したようなゴツゴツの岩が敷き詰められた登坂路だ。普通のクルマでは行かれないイカれた区間だ。
5km/h前後でアプローチ。車輪が岩を乗り越える度に車体が大きく揺れる。四輪それぞれが大きくストロークしながら登っていく。突き出た岩を避けるか、車輪を乗せて乗り越えるかを繰り返し判断しながら進んでいく。
ランクルは車高を上げられないので、ロードクリアランスは常にオフローダーとしては標準的な225mmのまま。なので時折アンダーフロアに岩が当たってガツンと大きな音を立てることもあるが、頑強なフレームと要所に施された補強によって、一日中繰り返しても不具合を起こす車両はなかった。
多くのラグジュアリーSUVはエアサスを採用する。エアサスなら日常の快適な乗り心地を得られるとともに、車高を上げてロードクリアランスを確保することができる(コイルサスでもできないことはないが、エアサスのほうが大幅に上下できる)。
だがランクルはシビアコンディションでの用途を考慮し、耐久性、故障しにくさ、故障した際の修理しやすさを優先してコイルサスを採用する。ただ理由はそれだけではなかった。トヨタのランクル製品化室の納谷良太郎さんによれば、車高を上げた状態のエアサスはロードクリアランスは増すものの、硬く跳ねやすいため、ロードホールディング性が落ち、必ずしも走破性が上がるわけではないという。その辺りも考慮しコイルサスを採用したのだそうだ。
岩場の後は泥濘(でいねい)路。雨でドロドロになった区間を、アクセルペダルを深く踏み込んで走り抜ける。泥で断続的にグリップを失い、車体が左右にダンスするが、修正舵を当てながらアクセルを開け続けて走り抜ける。パワーで切り抜けるイメージだ。
悪路走行に大切なのは一にロードクリアランス、二によくできた4WDシステムだが、こういう場面では単純にパワーが必要となる。この区間はガソリンもディーゼルも低回転域から途方もないトルクを発揮するランクルか、同等のパワーをもつオフローダーでしか走破できないはずだ。
最後は水深700mmのウォーターセクション。怖いけれど、ここはテクニックもクソもない。大丈夫というスタッフを信じてゆっくり進入していくだけだ。エンジンベイ内にわずかに侵入した水が蒸発し、フードの切れ目から水蒸気が上がる。窓を開ければ手が届きそうな高さまで水面が近づき緊張するが、何事もなく通過できた。
※写真は試乗日とは別日に撮影したものです
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