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大型SUV・VWアトラスのクーペ&ピックアップの試作モデルに乗った

クーペ風でも実用性重視のクロススポーツ

まず、市販がすでに決定しているアトラス クロススポーツだが、チーフデザイナーのクラウス・ビショフの解説から始めよう。このモデルはスタンダードのアトラスに対して“クーペ”バリエーションだが、「BMW X6」や「メルセデス・ベンツ CLA」などと違ってルーフラインの傾斜は非常に穏やかで、後方に向かって著しく低められてはいない。

この点に関してクラウスは「フォルクスワーゲン・デザインの原理原則に実用性の重視があること」を強調する。すなわち「自動車デザインとは芸術ではなく道具の形を作ることで、安全性や使い勝手を優先するのが大事であり、クーペと名付けられたとしても5シーターであればリアのパッセンジャーの乗降の容易さや、居住性を犠牲にすることは許されない」と語る。そして「こうした条件の中から最大の美しさを作り出すのが我々フォルクスワーゲン・デザイナーの使命である」と言い切っている。

確かにクロススポーツはアトラスの3列目のシートをなくしたことにより、ベースモデルのアトラスよりも全長が190mm短くなったが、高さは32mmとわずかに低くなっただけだ。ただしリア・エンドの傾斜を強くとり、ワイドなCピラーでそれを強調、さらにルーフスポイラーを加えた結果、スポーティでダイナミックな印象を与えることに成功している。

実は、このクロススポーツは2013年に上海モーターショーに出品された「クロスブルー」がデザインの基礎となっている。また同時にパワートレーンも単純なICE(エンジン)ではなく、時代に合わせた電動化が反映されている。それもシンプルなハイブリッド(HEV)だけでなくプラグイン・ハイブリッド(PHEV)も用意されているのである。すなわち基本的には共に206kW(280ps)と350Nmを発生する3.6L V6エンジンと前が40kWと220Nm、後が85kWと270Nmの出力を持った電動モーター2基を搭載するが、HEVモデルは電池容量が2.0kWhと補佐で、システム出力も314psでEV走行がおよそ2.5kmに留まる。一方PHEVの電池容量は18.0kWhでシステム出力は360psとなり、EV走行は70kmまで可能となる。

テストしたモデルはPHEVだったが残念ながらバッテリー残量が十分でなく、終始内燃エンジンが稼動している状態での試乗であった。ショーカーとは言えエクステリアとインテリアの仕上げはドアハンドルや小さなスイッチ類を除いてすべて量産車レベル、しかもしっかりとした作りで運転操作など特に気を使う必要はなかった。一方、デザイナーの言ったようにリアコンパートメントを犠牲にしないコンセプトはファミリーユースにも十分に応えることができるだろう。

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