■1991年にヒットしていたクルマを振り返る
2020年から2021年にかけて、世界は新型コロナウイルス感染拡大によって生活様式が一変しました。今後収束に向かうためには、2021年の動向が大きな節目になるのは間違いなく、おそらくこの先10年後、20年後には、現代史において2021年がクローズアップされることになるでしょう。
さすがにエンジンがデカすぎでしょ!? 大排気量コンパクトカー5選
一方、今からちょうど30年前の1991年は、日本でバブル経済の崩壊がはじまった年であり、同じく人々の生活が変わる大きな転機となりました。
当時はまだバブル経済による好景気の余韻が感じられ、肌感として景気後退はあまり実感がなく、実際に登録車、軽自動車を含めた販売台数は750万台を突破し、2019年の実績よりも200万台以上多かったほどです。
そこで、今とはニーズが異なる1991年を振り返り、当時人気だったクルマを5車種ピックアップして紹介します。
●三菱2代目「パジェロ」
1982年に発売された三菱初代「パジェロ」は、「ジープ」並の悪路走破性と、乗用車に近い使い勝手の良さを両立する、新世代のクロスカントリー4WD車として開発されました。
しかし、発売当初は本格的なクロカン車を必要とするユーザーが購入するにとどまり、決してヒット作とはいえませんでした。
その後乗用登録車の追加や、3列シート車、エンジンのバリエーション拡大などさまざまなニーズに応え、1980年代後半にはスキーブームやアウトドアレジャーブームといった背景から、徐々にパジェロの人気が高まります。
そして1991年に、高い悪路走破性をキープしたまま、舗装路での走行性能や快適性、安全性を大きく向上させた2代目パジェロが登場。
ボディタイプはジープをイメージさせる後席がオープントップの「Jトップ」、3ドアショートボディの「メタルトップ」、5ドアロングボディでラグジュアリー性を兼ね備えた「ミッドルーフ」、後席がハイルーフとなる「キックアップルーフ」が設定され、5ナンバーのレギュラーサイズと3ナンバーのワイドボディをラインナップ。
エンジンもガソリンとディーゼルで複数のバリエーションが設定され、駆動系もフルタイム4WDとパートタイム4WDそれぞれの特徴を備えた「スーパーセレクト4WD」を採用するなど、クロカン車として大きく進化を果たし、大ヒットを記録しました。
1990年代初頭のRVブームでは、2代目パジェロがけん引役となり、各メーカーのクロカン車が爆発的に売れました。
●トヨタ8代目「クラウン」
すでに景気上昇中だった1988年に、日産は高級セダンの初代「セドリックシーマ/グロリアシーマ」(以下、シーマ)を発売し、高額なセダンとしては異例のヒットを記録。
それに追従するかたちでトヨタも1989年に初代「セルシオ」を発売し、同じくヒット作となり、後に高級セダンが飛ぶように売れたことを「シーマ現象」と呼んだほどです。
しかし、このシーマ現象でもっとも恩恵があったのは、両車に先立って1987年に登場した8代目「クラウン」といえます。
8代目は4ドアハードトップに3ナンバー専用のワイドボディがラインナップされ、トップグレードの「ロイヤルサルーンG」は「ソアラ」など同じ3リッター直列6気筒DOHCエンジンを搭載。
さらに、1989年にはセルシオに先行して4リッターV型8気筒DOHCエンジンを搭載した「4000ロイヤルサルーンG」を追加し、3ナンバー車の自動車税軽減に対応して、1990年には2.5リッター直列6気筒DOHCエンジンを搭載するなど、さまざまなニーズに応えました。
シーマやセルシオと異なり、8代目クラウンはビジネスユースから高級パーソナルカーまで、数多くのラインナップを展開していたこともあり、1990年は歴代クラウンで最高となる年間約21万台(シリーズ累計)を販売。
1991年も勢いは止まらず16万台強を販売するなど、2020年のベストセラーだった「ヤリス」の15万1766台を大きく上回っていたほどです。
●ホンダ5代目「シビック」
1972年に発売されたホンダ「シビック」は、新世代の大衆車として開発されたモデルで、FFを採用したことでコンパクトなサイズながら広い室内を実現し、高い経済性や動力性能から大ヒットを記録しました。
その後、代を重ねるたびに車格が大きくなったことで、ユーザー層を拡大。そして、1991年に登場した5代目は4代目で一気に高性能化を果たしたことを、さらにブラッシュアップしたかたちで登場しました。
ボディタイプは3ドアハッチバックと4ドアセダンの「シビックフェリオ」をラインナップし、後にアメリカで生産されたシリーズ初の2ドアクーペ「シビッククーペ」が加わっています。
トップグレードである「SiR」には、最高出力170馬力(MT車)を誇る1.6リッター直列4気筒DOHC VTECエンジンを搭載。
サスペンションは前後ダブルウイッシュボーンとなっており、1トン少々の軽量な車体と相まって、高い運動性能を発揮しました。
また、3ドア車では上下に開くリアハッチを採用するなど、使い勝手も向上。
スポーティさとユーティリティが好評を博し、5代目シビックは1991-1992日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、好調なセールスを後押ししました。
■今はなき、歴史ある2台の大衆車もヒットしていた!?
●日産7代目「サニー」
日産は前身の快進社から遡ると100年以上もの長い歴史がある会社で、大正時代にはすでに自動車製造を始めています。
大きな転換期となったのは第二次大戦後の財閥解体後で、1955年に戦後初の自社開発となるモデル「110型 ダットサンセダン」を発売し、近代的な自動車メーカーとして軌道に乗りました。
その後、マイカーブームの到来を受け、より庶民に身近なクルマとして1966年に初代「ダットサン サニー」を発売。
サニーはトヨタ「カローラ」と競い合うことで、日産を代表する大衆車のまま進化を続け、1990年には7代目が登場します。
6代目からデザインを踏襲していましたが、各部をラウンドした形状とすることで、モダンな意匠へと変わり、ラインナップは4ドアセダンに特化して、時代背景もあって上質さが追求されました。
エンジンはガソリン、ディーゼル含め、5機種をラインナップ。ガソリンエンジンはすべて4バルブDOHCを採用しています。
また、トップグレードの「GT-S」には1.8リッター直列4気筒DOHCのスポーツユニット「SR18DE型」を搭載。最高出力140馬力を誇りました。
1991年の販売は日本一に君臨したカローラには遠く及ばなかったものの、日産車のなかではトップセラーで、当時は「マーチ」以上に売れていたモデルです。
1994年には8代目にバトンタッチして生産を終えますが、メキシコではこの7代目サニーは「ツル(TSURU)」の名で生き続け、2017年まで販売されていました。
●マツダ7代目「ファミリア」
1966年にサニーとカローラがデビューしましたが、それよりも前の1963年に発売されていた大衆車が、マツダ初代「ファミリア」です。
同社初の小型乗用車としてデビューしたファミリアは、その名のとおりファミリーカーとして代を重ねています。
1980年には「赤いファミリア」という有名なキャッチコピーとともに5代目がデビューし、月間販売台数で通算8回も第1位を獲得するなど、若者を中心に大ヒットを記録。ファミリーカーのイメージを大きく変えました。
そして、1985年に登場した6代目ではスポーティ路線へと変化し、1989年発売の7代目ではより洗練されたスタイルへと生まれ変わりました。
ボディタイプは3ドアハッチバックと4ドアセダンで、5ドアハッチバックは「ファミリア アスティナ」と派生車に分けられます。
搭載されたエンジンは1.3リッターから1.8リッターのガソリンと、1.7リッターのディーゼルを設定。トップグレードでスポーツモデルの「GT-X」「GT-R」には1.8リッターターボを搭載し、ラリーをはじめとするモータースポーツへの参戦も積極的におこなわれていました。
当時、マツダは好景気の波に乗って販売チャネルを5つ展開し、車種の拡充もおこなっていましたが、やはり主力車種はファミリアであり、マツダ車のトップセラーとして重責を担います。
しかし、バブル崩壊後にマツダの業績は急激に悪化。ファミリアは2004年まで生産されましたが、後継車の「アクセラ」にバトンタッチし、乗用モデルは40年もの長い歴史に幕を閉じました。
※ ※ ※
1991年はホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」といった歴史的に重要なモデルが誕生しています。
また、トヨタ「アリスト」や、アンフィニ「RX-7」という、まさにバブルが生んだといえる名車も発売されました。
当時はミニバンが本格的に普及する前とあって、さまざまなスポーツカーやセダンが隆盛を極めていた頃であり、クルマ好きにはたまらない時代だったのではないでしょうか。
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