現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 軽商用車はダイハツ・スズキしか作ってない!? なぜ他社はOEM頼み? OEMでも販売するメリットとは

ここから本文です

軽商用車はダイハツ・スズキしか作ってない!? なぜ他社はOEM頼み? OEMでも販売するメリットとは

掲載 更新 47
軽商用車はダイハツ・スズキしか作ってない!? なぜ他社はOEM頼み? OEMでも販売するメリットとは

■軽商用車を製造するのは2社でも8社が販売している

 クルマにはさまざまなカテゴリーがありますが、いまは軽自動車が売れ筋となっており、国内で新車として売られるクルマの40%近くを占めます。

軽のターボはパワフルだけど取り扱い注意!? ターボ搭載車のメリット・デメリット

 そして軽自動車のなかでも販売比率がとくに高いのは「軽商用車」です。

 2021年に軽商用車は1か月平均で3万台以上が販売され、商用車全体の約半数を占めました。軽商用車は軽乗用車よりも普及率が高く、日本の物流を支える大切な存在といえます。

 そんななか、2021年12月に軽商用バンのダイハツ「ハイゼットカーゴ」と「アトレー」(以前はワゴン)が、フルモデルチェンジをおこないました。同時に「ハイゼットトラック」も、マイナーチェンジを実施しています。

 そしてハイゼットとアトレーがモデルチェンジすると、トヨタ「ピクシスバン/ピクシストラック」、スバル「サンバーバン/サンバートラック」もモデルチェンジをおこないます。

 その理由は、ピクシスやサンバーは、ダイハツが供給するハイゼットのOEM車だからです。

 軽商用車の分野ではOEMが普及しており、スズキ「エブリイ」や「キャリイ」も、日産、マツダ、三菱に供給されており、製造メーカーのスズキを含めると、国内8社の乗用車メーカーのうち4社が実質的に同じ商品を扱っています。

 そしてハイゼットカーゴ、アトレー、ハイゼットトラックの届け出台数を合計すると、2021年の1か月平均は約1万3000台に達します。そこにOEM車を加えると1万5000台を上まわり、軽自動車でもっとも販売されているホンダ「N-BOX」の1万6000台に迫るという状況なのです。

 スズキも同様です。エブリイとキャリイの届け出台数を合計すると、2021年の1か月平均は1万台少々でしたが、そこに日産、マツダ、三菱に供給するOEM車を加えると約1万5000台です。

 このように、ダイハツとスズキの軽商用車の売れ行きは軽乗用車の人気車並みに高く、OEM車も加えると販売1位に匹敵するのです。

 それにしても、なぜ軽商用車ではここまでOEMが発達したのでしょうか。

 スズキ・日産・マツダ・三菱に対して、ダイハツ・トヨタ・スバルがそれぞれ軽自動車OEMの2大グループを形勢しており、残りはOEMに消極的なホンダだけです。

 軽商用車でOEMが発達した背景には複数の理由がありますが、筆頭は軽商用車が薄利多売の商品であることです。

 ハイゼットトラックは、耐久性の優れた積載機能と横滑り防止装置などの安全装備を標準装着して、もっとも安いグレードの価格を90万2000円に抑えています。

 キャリイKCは、パワーステアリングやエアコンを非装着にして、価格を75万2400円まで下げました。

 このような低価格車では、大量に生産して1台当たりのコストを下げる必要が生じます。ダイハツとスズキが製造する軽商用車は、前述の通りOEMを含めると1か月に1万5000台に達します。ここまで大量に生産しないと薄利多売の軽商用車は成立しないのです。

 日産と三菱は、軽乗用車の「デイズ」「ルークス」、「eKシリーズ」を両社の提携で手掛けていますが、軽商用車はスズキ製のOEM車を導入しています。

 軽乗用車は価格が相応に高いために成り立ちますが、軽商用車では無理です。表現を変えると、低価格の軽商用車が生き抜くためには、生産台数を増やせるOEMが不可欠ということなのです。

 そうなると「基本的に同じ軽商用車なのに、OEM車の需要があるのか」という疑問も生じるでしょう。

 例えば、現在のスバルは、水平対向エンジンを搭載した3ナンバー車が主力で、ブランドイメージとして「走りの良さ」をアピールしています。マツダもカッコ良くて運転の楽しいクルマをそろえています。

 その一方で、ブランドイメージが大きく異なる、儲けの少ないOEM軽商用車を導入する必要があるのでしょうか。

 その理由は、スバルとマツダの過去を振り返るとわかります。

 両社ともかつては乗用車を含めて軽自動車を手掛けていました。その後、経営効率を高める目的で薄利多売となる軽自動車の開発・生産から撤退しましたが、販売まで終了するとユーザーを逃してしまいます。

 クルマは購入後の車検や修理、保険の取り扱いなどでも利益を得られるため、販売会社はユーザーを繋ぎ止めておくことからOEM車を導入しました。

 とくに最近の売れ筋は軽自動車やコンパクトカーとなっており、クルマを1台販売して得られる粗利は以前に比べて減りました。

 そうなると自社製品を購入した顧客に、さまざまなサービスを提供して利益に結び付けることが重要になります。顧客の流出を防ぐOEM車は従来以上に大切になりました。

■ユーザーがOEM車を購入するメリットとは?

 さらに、OEMを利用しないで軽自動車の取り扱いを完全に終了すると、ユーザーは他社から購入します。

 例えばマツダ車を使っていた法人がスズキの販売店から軽商用車を購入すると、その後のスズキの販売活動次第では社用車として使っていた「マツダ2」が「スイフト」に替わることもあるでしょう。

 販売会社は自社の顧客を他社とは接触させたくないので、OEM車の導入によりユーザーを囲い込みたいのです。

 軽自動車の話ではありませんが、マツダがミニバンの「プレマシー」や「ビアンテ」を廃止したとき、販売店からは「トヨタと業務提携を結んだのだから『ヴォクシー』のOEM車を導入して欲しい」という意見が聞かれました。

 とくにプレマシーは堅調に売られ、保有台数も多かったので、販売店は顧客の流出を防ぎたかったのです。

 しかしマツダは手を打たず、プレマシーやビアンテ、背の高いコンパクトカーの「ベリーサ」などの顧客が少なからず流出しました。それがマツダの国内販売を低迷させた一因にもなっています。

 さてOEM車は、ユーザーにどのような利益をもたらすでしょうか。

 スバルが自社で開発と生産をおこなっていた以前のサンバーは、4輪独立懸架の採用で乗り心地が優れ、荷物にも優しい軽商用車でした。

 デリケートな果物を積み、デコボコの激しい農道を走るのに最適でした。エンジンは4気筒で後部に搭載され、運転感覚が滑らかで静粛性も優れています。乗員にも快適な軽商用車でした。

 このスバル製サンバーがダイハツのOEM車に切り替わったときには、ユーザーから惜しむ声が多く聞かれました。

 スバルは「軽自動車の開発と生産から撤退して、水平対向エンジン搭載車に集中させたことは、経営上のメリットが大きかった」と述べましたが、異なる見方をするユーザーも多かったです。

 OEM車への切り替えは実質的にユーザーの選択肢を減らすので、好ましい変化ではありません。

 しかしそのOEM車まで導入されないとユーザーは別の販売会社を見つけて、不慣れな相手と商談する必要が生じます。

 販売店が遠方にある場合は、一層不便です。完全に廃止されるのに比べると、OEM車を用意することはメリットになります。

 日産はもともと軽自動車を扱っていませんでしたが、「日産車ユーザーの20%以上が軽自動車のセカンドカーを保有する」というデータに基づき、2002年にスズキ「MRワゴン」のOEM車を日産「モコ」として導入しました。

 その後、三菱と合弁会社を立ち上げて軽乗用車の開発と生産をおこなっていますが、軽商用車は前述の通りスズキ製のOEM車を導入して、日産では1か月平均約3000台を販売しています。

 都市部にはダイハツとスズキの販売店が少ないので、日産がスズキのOEM車を扱うことにより、軽商用車を購入しやすくなりました。

 このようにOEMには欠点もありますが、日本の軽商用車を支える上で大切な流通システムになっています。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
くるまのニュース
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
AUTOCAR JAPAN
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
Auto Messe Web
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
WRCラリージャパンで発生した“一般車両コース侵入事件”、FIAは「非常に深刻な問題」として調査へ。来季大会にも暗雲
motorsport.com 日本版
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
サンパウロGP3位の勢いそのままに……ガスリーがラスベガス予選3番手「最後のアタックはアドレナリンが溢れたよ!」
motorsport.com 日本版
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
【旧車高騰の背景を見たり?】足を運んだファンは過去最大の1万2500人! 全米最大のJDMイベント
AUTOCAR JAPAN
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
アルピーヌ、東京オートサロン2025に『A110 Rチュリニ』など出展へ。山野哲也のトークショーも実施
AUTOSPORT web
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
12月1日は岡山国際でドラテク磨き! 初心者向け「カルガモクラス」もある「TOYO TIRES PROXES DRIVING PLEASURE」は要チェックです
Auto Messe Web
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
F1第22戦水曜会見:レースディレクター交代は「知らなかった」と驚くラッセル。一方で対話を続ける意思も明かす
AUTOSPORT web
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
大人気の輸入車コンパクトSUVが進化! VW改良新型「Tクロス」はどう変わった? 乗って思った「これでいいんだよ」感とは
VAGUE
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
いすゞ新型「FRマシン」発表! 斬新「スポーティ顔」採用&四駆設定あり! “新開発エンジン”と8速AT搭載の「D-MAX」「MU-X」タイで発売!
くるまのニュース
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
トラックの頭と積荷が載ったトレーラーの知られざる接続部! 最後のロックはあえて「手動」にしていた
WEB CARTOP
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
いよいよラリージャパン最終日。勝田貴元の“全開プッシュ”は見られるか?「難しい1年を支えてくれたチームのために仕事をしたい」
motorsport.com 日本版
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
伝説のジャガーXJSが現代に蘇る、660馬力V12スーパーチャージャー搭載『スーパーキャット』誕生
レスポンス
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
ヒョンデのタナクが総合首位をキープ。トヨタのエバンスとオジェが続く……勝田貴元5番手|WRCラリージャパンDAY3午後
motorsport.com 日本版
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
岩佐歩夢の気になる去就。「F1に向いているハイブリッド思考」担当の小池エンジニアが話すローソンとの比較
AUTOSPORT web
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
F1ラスベガスGP FP2:好調メルセデスのハミルトンが最速。角田は初日10番手、アルピーヌやハースもトップ10入り
AUTOSPORT web
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
レクサス「FRスポーツカー」がスゴイ! 5リッター「V8」&4.7m級の“美しすぎる”「流麗ボディ」採用! 豪華内装もイイ「LC」とは
くるまのニュース

みんなのコメント

47件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

163.9191.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.9442.8万円

中古車を検索
アトレーの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

163.9191.4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

9.9442.8万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村