レンジローバー試乗、SCとNAの走りチェック
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:菊池 貴之
1970年にランドローバー社から初代レンジローバーが登場したときの衝撃は今も忘れられない・・・と書くと妙に説得力があるが、実は初代レンジローバーがデビューしたとき、その凄さをどれほどの人が即座に理解したか、大いに疑問ではないかと思う。SUVなどという言葉はまだ影も形もなく、クロスカントリー4WDといった表現が世に出るか出ないかの頃だった当時、レンジローバーがどのように使われるべきクルマなのかというイメージを明確に持った人間は、少なくとも日本にはほとんどいなかったはずだ。
当時、ランドローバーが想定したレンジローバーの用途は、例えば以下のようなものだったらしい。それは、イギリスのカントリーサイドにある広大な農園の主、いわゆるカントリージェントルマンが、ウィークデイには自らの農園で見回りその他の仕事の足に駆使し、週末の夜ともなるとフォーマルウェアに身を包んで、奥方とともにその地方の都会もしくはロンドンに乗りつけ、観劇とディナーを愉しむ際の足になる、というクルマである。
そういった農園には丘も川もあり泥濘もあるから、フルタイム4WDの卓越した駆動力と高いロードクリアランスが要求される一方、未舗装路でも石畳の道でも快適な乗り心地をもたらすサスペンションが求められるのに加えて、週末に都会まで足を伸ばすにはそれなりのパフォーマンスも欲しいからV8エンジンを搭載するというわけで、それまでどこにも存在しなかったジャンルのクルマ、レンジローバーは誕生したのだった。
僕はいつだったか、初代レンジローバーの英国版カタログを見たことがあるが、そこには衝撃的なコピーが掲げられていた。リアのラゲッジルームの有効性を示すページのどこかに、「豚も運べます」といった表現がごく自然に使われていたのだ。その部分の写真に豚が載っていたかどうかは覚えていないが、ラゲッジルームは現在のような豪華なカーペット張りではなく、むき出しの鉄板もしくはビニールレザー張りだった。それなら、豚やワラ束を積んで汚れたラゲッジルームを、週末の用途のために簡単に水洗いできるからだ。
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