SLS AMG ロードスター 早くも試乗&ギリ出し
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:SCOOPY
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:SCOOPY
早くも日本導入が発表されたメルセデス・ベンツSLS AMGロードスターは、SLS AMGクーペをベースにオープントップとしたモデル。クーペとはまた違う、極めてスポーティでありながら華やかさも魅力の1台だ。このクルマをモンテカルロを中心とした南仏で試乗する機会を得た。
パワートレインは、420kW(571ps)/6800rpmと650Nm/4750rpmを発揮する自然吸気6.2リッターV8エンジン“M159”と、トランスアクスル方式の7速デュアルクラッチトランスミッションの組み合わせで、クーペと同一。サイドスカートやAピラー周辺、リアアクスル周辺などの補強を実施し、重量増に繋がる制震ダンパーの装着を不要にした。この結果、車両重量はクーペ比でわずか40kg増の1660kgとなり、2.9kg/psという優れたパワーウェイトレシオを実現。クーペと変わらぬ0-100km/h加速3.8秒、最高速度317km/h(電子リミッター作動)という卓越したパフォーマンスを達成している。
クーペと違ってルーフが無い分乗り降りが容易いと思われるが意外なことに太っといサイドシルに遮られて足の短い私はちょっと難儀だった。しかしこのおかげでオープンボディの剛性はポルシェ・カブリオレの2倍以上高く、どんな悪路でも、またモナコ独特の狭い道路でのすれ違いで路肩に乗り上げてもミシリとも言わなかった。
当たり前のことだがクーペと大きく違うのは天井が無限に広がる青空が標準装備であること、これだけでわくわくするのだからオープン・モデルは不思議な存在である。また乗っているドライバーやパッセンジャーだけでなく周囲の視線も面白い。
多くは羨望のまなざしで「くそっなんで変な東洋人があんなクルマに乗れるんだ!」という感じだ。中には真っ白いブレザーを着てパイプをくゆらしているアストンマーチン・ヴォランテのオジさんと信号待ちで遭遇し「なんだこいつ!」と好奇心に満ちたまなざしが痛かったが、「私はプレス、これは借り物なんです!」と声を上げるわけにもゆかず、しばし金持ち東洋人に成りすました。
シグナルGPではAMGスピードシフトDCT7速デュアルクラッチトランスミッションを生かしてつねにポールポジション、腹に響き渡る独特のV8サウンドを響かせながらモナコのGPコースを突っ走り「セバスチャン・ベッテルでもだれでも連れて来いっ!」とついつい強気になる。3段階に調整可能なダンパーを備えるSLSAMGロードスターのシャーシは当たり前に基本的には固いが、コンフォートを選択すれば町中での低速走行中の凸凹でもなんとかいなすことができる。
速度制限の厳しいフランスのオートルートではVマックスまでは試せなかったものの、大きな声では言えないが相当なスピードにもあっという間に到達する。さらに前方に遅いクルマが車線変更で入り込んできてもオプションのセラミックブレーキは自重1660kgのロードスターを物理の法則を超えるような力で減速させる。
トップには全自動の3層ファブックのソフトトップを採用。開閉時間はわずか11秒、50km/h以下であれば走行中でも開閉可能で、これはちょっとしたシーン、俄雨はもちろん、トンネル内の渋滞に遭遇してしまった時など、とても便利だった。またカラーはブラックとレッド、ベージュの3色が用意される。Zシェイプに折りたたまれるこのソフトトップは、マグネシウムとスチール、アルミニウムによる軽量構造により低重心化に貢献。省スペース設計により、トランク容量はクーペ(176リッター)とほぼ同じ173リッターを確保した。
日本で2012年1月頃にデリバリー開始予定。左ハンドル仕様のみの設定で、価格はクーペより100万円高の2590万円となっている。AMGでは当初およそ3分の1がロードスターと控えめだったが、フランクフルト・ショーや顧客の反応を見るとオープン化の割合は50:50になりそうだと予測している。伝統のガルウィング・クーペ、あるいは華やかなロードスター、確かに大いに迷って、困ってしまうほどの独自の個性的魅力を備えた2台である。
この2台を前にして、私はと言えば、全く困る事も、迷う事も無い。自分がお金持ちでなかったことがこんなに嬉しかったことはかつてなかったほどである。
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