次世代ポルシェの幕開け! 次期ケイマンやボクスターを暗示する未来のレーサー「ミッション R」はどんなクルマ?
掲載 carview! 18
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2021年9月のミュンヘン国際オートショーでポルシェが公開したコンセプトカー「ミッション R」は間もなくやって来るカーボンニュートラルの時代に照準を合わせたカスタマースポーツ用のレースマシンを想定したもので、現在ポルシェカップで使用されている「911 GT3 カップ」のレベルをイメージしているそうだ。
このコンセプトモデルは11月に開催されたLAオートショーでも公開されたが、ポルシェはそれに先立って数名のジャーナリストをトラックでのインプレッションに招待した。場所はロサンゼルス郊外のポルシェ エクスペリエンス センターで、2021年10月に千葉県にも開設されたが、LAは2016年に完成している。
気温14度と、西海岸としては晴れ渡った晩秋の下に現れた全長4.24×全幅1.99×高さ1.19mのコンパクトでフラットなボディには、盛り上がった左右のフェンダー、4灯のLEDドライビングライト、そして横一文字のテールライトなど、最新のポルシェアイコンが散りばめられている。とりわけGT3で採用が始まったスワンネックタイプのリアウイングには、F1に採用されているDRS(ドラッグリダクションシステム:可動式のリアウイングを開いて空気抵抗を軽減し、加速性能を高める機能)も装備されている。
非常に狭いキャビンに乗り込むとフルハーネスのベルトで締め上げられるが、救いは頭上のパノラマルーフで、X字骨格の太いカーボン構造材の間がすべて透明なのでキャビンに開放感がある。後方視界は絶望的だが、リアビューカメラによって安全を確認することができる。ちなみにこのカーボン強化プラスチック構造材を採用することによってロールバーは装備されていない。
またシートはメーターパネルからリアシェルフまで一体構造で、実はこのまま外してシミュレーターとして使うことも可能だ。想像だがひょっとすると車外で、まるで遠隔操作でレースに参加していることが体験できるようになるのかも知れない。それ故にシートは固定式でステアリングとペダルでポジションを調整する。
パワートレーンはフロントに453ps、リアに653psの電気モーターが搭載され、システム最高出力はクオリファイモードで1088ps、定格出力(レーシングモード)では680psをそれぞれ発生する。0-100km/hが2.5秒、最高速度は300km/h以上と発表されている。搭載される80kWhの電池はおよそ30分のトラック走行を可能にする。
両側にグリップのある一文字ステアリングを握り、アクセルペダルを慎重に踏み込むと甲高い金属音と共に未来のレーシングカーはスタートする。しばらく時間をかけて18インチのレーシングタイヤの温度を上げ、前のドライバーが作ったフラットスポットが消えたのを確認してから速度を上げてコーナーへ向かう。
重量の嵩張る電池は床下ではなく、ミッドシップレーシングカーであればエンジンが搭載されている場所にあるために、ドライビングポジションが低いだけでなくハンドリングにも大いに貢献している。ただしステアリングのミリ単位の動きにノーズが反応するので電気モーターの特性を考慮して細心の注意を払いながらのアクセル操作が必要だ。
特にこのエクスペリエンスセンターのハンドリングコースはわずか2kmで狭く、ワンオフの高価なプロトタイプを振り回すには向いていない。しかしフィージビリティ(実現の可能性)を重点に開発したと言われるだけあって、ワンオフモデルとは思えないほどの確かなドライブフィール見せてくれた。
EVレーシングカーはタコメーターもシフトインジケータもなく、そもそもギアシフトの必要がない。エグゾーストサウンドのかわりにRC(ラジコン)カーのような金属音が響くだけなので、アクセルペダルと縦横のGフィーリングだけを頼りに(?)周回するので、この点では若干の慣れが必要となる。
バイワイヤで操作するブレーキはポルシェらしい制動力とコントロール性で安心感を与えてくれる。このコンセプトカーにはトルクベクタリングや電子制御のデファレンシャルロックなどは採用されていないが、それにも関わらず非常にコントローラブルなハンドリングを示した。
果たしてこのミッションRがGT3に代わってこのままの姿でモータースポーツへ参加するのか? あるいはこのレイアウトを利用してEV718シリーズ(2024年にフル電動化して登場するとされる、次期ケイマン&ボクスター)へと発展するのか? このミッションRはポルシェの電動化戦略のさらなる可能性を暗示させるモデルだ。
ドライブ:T.Geiger(トーマス・ガイガー)
レポート:木村好宏
写真:Kimura Office
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