レガシィ08モデルに試乗 アウトバック25XTに注目
掲載 更新 carview! 文:伏木 悦郎/写真:市 健治
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初代レガシィが登場したのはバブルの狂騒の真っ只中の1989年2月。国産スポーツカー&プレミアムサルーンが多数登場したビンテージイヤーとしても記憶される年である。85年のG7(プラザ合意)を契機にした急激な円高の影響で、輸出産業の中心である自動車は深刻な不況に陥っていた。その対応策として登場したのが、内需の刺激策としての高性能スポーツモデルであり、円高環境でも収益性が見込める高級サルーンというわけだ。
当時のスバルは、輸出依存度が極端に高く、しかも、国内市場向けに確たるエースモデルを持ち合わせていなかった。レガシィはレオーネに代わる主力モデルとして、社運を賭けて開発される。新開発のフラット4にターボ、4WDといった当時の技術トレンドを盛り込んだセダン/ワゴンに対する反応は、当初こそ目立たなかったが、やがて新しいライフスタイルを模索する人々がツーリングワゴンに注目。空前のワゴンブームを巻き起こし、スバルの経営危機脱出の救世主的存在となった。
レガシィの経緯をざっと振り返ると、まず初代でフラット4ターボ+4WDを個性的なボディ/シャシーに組み合わせるフォーマットを提示。2代目はメカニズムをキャリーオーバーしてエクステリアの洗練を進めたが、インテリアに課題を残した。3代目ではFFがラインナップから消え、内外装の充実が進んだが、ボディは5ナンバー枠に留められた。そして、現行モデルでは欧州を初めとするマーケットの法規対応からワイドボディ化を選択。当初から3リッターのフラット6がラインナップの一角を占める。基本的には正常進化の道を辿ってきたと思えるが、国内販売の不振や輸出依存の増大、ブランド構築の不徹底などもあって、再び20年前の振り出しに戻った感もある。
過去20年にわたって、レガシィがスバルの主力モデルとして屋台骨を支え来たのは紛れもない事実だし、レガシィの評価がそのままスバルの業績に直結していると言っても良いかもしれない。世界で唯一フラット4/6をフロントに収め、4輪を駆動する。すでにワゴンは世界的な人気を勝ち取り、B4となって以降のセダンも世界のプレミアムに伍して闘えるパフォーマンスとクォリティをバランスさせる可能性を秘めている。
ただ、エンジニアリング偏重とも思えるダイナミックパフォーマンス追求への傾倒は気になる。メカニズムや機能性能の追求は悪いことではないが、凝ったメカニズムや優れた性能は目的ではない。まずブランドとしてのスタイルや提供するサービスを明らかにした上で、それに適う技術を展開する。ブランドは強い意志によって作られるもので、良いモノを作れば自動的になれるものではない。これは世界のブランディングの常識だ。
スバルはトヨタと提携することで生き残りを図る道を選んだ。となると今、徹底すべきはブランド戦略の優先であり、エンジニアリング主導による暴走の回避だろう。パフォーマンス競争への熱中は何となく華々しい成果が上がったように見えるので社内的に盛り上がるが、スターモデルが脚光を浴びる陰で不人気モデルの山が出来上がっているのが常である。スカイラインGT-R、ランサーエボリューション、インプレッサWRX。その隆盛と対照的に各社が傾いて行ったのを、我々はつぶさに見てきたはずである。いずれも航空機メーカーに始まるエンジニアリング会社の系譜であることも、無関係ではないはずだ。
トヨタとの提携によって進められているというFRスポーツの共同開発は、正直言って意図が見えにくい。経済合理性という側面があるだろうが、ブランドを優先させる考え方からは絶対に出ない発想ではないか? 軽自動車からの撤退はスバルの体力的には必然かもしれないが、軽という法的枠組みに拘らないコンパクトカーにシフトして、ブランドの厚みをつけるという手もあったはずだ。
スバルが今どういうメーカーになりたいと考えているのか? その一端は今回のアウトバック25XTで垣間見ることができたが、より鮮明になるのは次期レガシィ登場の時。いろんな意味で楽しみに待ちたいと思う。
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