日産の世界戦略SUVテラは久々ヒットしそうだがブランディングに難あり?
掲載 更新 carview! 文:大田中 秀一/写真:大田中 秀一
掲載 更新 carview! 文:大田中 秀一/写真:大田中 秀一
そんなテラを眺めつつ、ふと思いました。これは往年の「ダットサントラック」の再来かもしれない、と。あのころはピックアップにカロセリ(※)してSUV風に仕立てて乗っていましたが、時を経て豊かになり、サイズも大きくなり、ボディもメーカー純正になった、ある意味で正統派の後継モデルじゃないかと。もしかしたら来場者も無意識にそれを感じているかもしれません。あれから40年と言えば、その頃の少年がテラを買えるくらいの大人になっているころです。
※カロセリ
メーカーから出荷されるシャシーの上にボディを架装し、乗用車のように仕立てること。いわゆるカロッツェリアです。ダットサントラックの場合、鉄製のボディを作り、3列シートSUV風に仕立てたクルマで、インドネシアでは乗用車として多くの人に愛されました。
そんなことを思いながら日産ブースの奥にあった「SUVヘリテージ」のコーナーを見て、思わず「それちゃうやん!」と声を上げてしまいました。そこに展示するべきは、大して売れなかった「テラノ」でも、インドネシアでは売ったことがない「パトロール」でもなく(パトロールという名前の別のモデルを売っていたことはあった)、ダットサントラックのはずです。それもSUV風にカロセリした。
もはや今売っているダットサンはリセットして、今の日産車を売るためのヘリテージとして、過去のダットサンモデルを使うべきでしょう。日産はブランドの使い方が根本的にわかってないと思います。
すみません、日本の皆さんには関係ない話を延々としてしまいました。会社の業績を見ると日産がやってることは間違っていないんでしょうけど、クルマ好きとしては魅力的な日産車を見たい。そう思っている往年の日産ファンは多いんじゃないでしょうか?
「今の若者にもっとクルマを買ってもらいたい」と、多くのメーカーが苦労している昨今、若者が真剣に買いたくなるクルマこそ、本気で開発するべきです。日産はそれができると僕は思っています。そしてそれをダットサンブランドで出してほしい。西部警察(ガルウイング仕様のフェアレディZをはじめ、日産車が活躍した日産協賛の刑事ドラマ)のように、伝説になるようなプロモーション・ドラマを作るのもいいかもしれません。
「もうちょっとしたら自動運転の時代が来るんでしょ?」なんて言ってる場合ではありません。アセアンウォッチャーの自分としても、「日産はどこに?」という寂しすぎる状況からなんとか脱してもらいたい。日産さん、若者が、日本人が、アジア人が欲しくなるクルマを作りませんか?
(ジャーナリストコラム 文:大田中秀一)
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大田中秀一(おおたなか しゅういち):自動車エッセイスト
ジャカルタで過ごした少年時代、バジャイ(現地の名物三輪タクシー)を無免許で走らせクルマに目覚める。インドネシア語と英語を操るトリリンガルで、某電池系大手企業の国際営業部、父が経営するインドネシア企業を経て、現在複数のクルマメディアに寄稿中。語学力と押しの強さを武器に、世界のモーターショー巡りをライフワークとし、バスにまで及ぶ知識は仙人の域。
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