フォルクスワーゲン「Tクロス」試乗。真面目さはそのままにちょっとしたスパイスのバランスが絶妙
掲載 更新 carview! 文:伊藤 梓/写真:編集部 163
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エンジンは1.0L 3気筒ターボで「この大きさのクルマに対してはちょっと非力かな」と思ったが、思いのほかすんなりと走り出すことができた。同様のポロの1.0Lモデルではややもったりとした走り出しだったのが、すっきりと加速できるようになっていたし、特に中~高速域ではまったく力不足を感じない。
発進時は丁寧に操作しないとガツンとシフトショックが起きる時もあるので注意が必要だが、高速道路などを走っている時には、地面と常に並行を保っているようなフラットな乗り味はまさにフォルクスワーゲンだと思った。さらにベースのポロよりもしっかり衝撃を受け止めてくれるような足回りで、少しゆったりとした乗り心地もSUVらしくて良い。
「コンパクトSUVなら、もっとはつらつとした斬新なモデルを出してもいいのではないか」という意見もありそうだが、私は逆にフォルクスワーゲンの合理的で堅実なクルマづくりはそのままに、そこから手を加えてもいい部分だけを慎重に吟味して作り込んだTクロスに接して、初めてゴルフに乗った時のような好感を覚えた。
TクロスのようなコンパクトSUVは、これまでのフォルクスワーゲンのラインアップと比べれば、より若い世代も触れるモデルになる。斬新で目を引くドラスティックなモデルも大切なのかもしれないが、これまでブランドの歴史を裏切らない“芯”を中心に据えることで、若い人たちの中にも自然とそのブランドが受け継がれていくのではないだろうか。そういった意味でTクロスは、あのさらりとした肌に馴染む着心地はそのままに、若い人をも刺激するちょっとしたスパイスのバランスが絶妙だと思う。
最近、私はオーガニックのスキンケアブランドを愛用しているのだが、Tクロスはそれと似ている気がする。値段は決して安くはないけれど、肌にひたりと合い、体に浸透して自分の一部になるような。そして、自然をそのまま閉じ込めたような少し野性的な良い香りがして、いつの間にか手放せなくなっている。時間をかけてTクロスに触れるほど、ゴルフを所有していた時に少しだけ物足りないと思っていた部分を絶妙に埋めてくれるモデルだと思えてくる。
良品というだけでなく、シンプルながらも自分のわくわくする気持ちを満たしてくれるキャラクター性。もしゴルフを検討していた時にTクロスに出会っていたら、こちらの契約書にハンコを押してしまっていただろうなと思わせられる魅力的なモデルだった。
【 フォルクスワーゲン Tクロスのその他の情報 】
フォルクスワーゲン Tクロスの中古車一覧
フォルクスワーゲン Tクロスのカタログ情報
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