発表直前、タイカン クロスツーリスモのプロトタイプに緊急試乗。乗り心地や走破性は上回っている
掲載 carview! 写真:Kimura Office 21
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乗り込む直前に気付いたのだが、クロスツーリスモに標準装着されているエアサスペンションはタイカンよりもデフォルトで20mm高く設定されているのに、トレッドが広げられているせいか、視覚的には安定感が増して見える。(クロスオーバーではあるが)オフローダーっぽさを強調するためにホイルアーチエクステンション、ルーフバーが備わり、オプションでは21インチのホイールも用意される。トレッド拡大に対応してホイールベアリングも強化されているそうだ。
オプションのオフロードパッケージでは車高をさらに10mm高めたシャシーも用意される。ここまで背が高くなっても空力特性は一般的なワゴンより低いCd=0.26を維持しているという。
運転席からの景色はタイカンと同じで、ドライビングポジションも思ったほど高くは感じず、足を伸ばせるフラットな床と、ほぼ垂直なステアリングホイールの位置関係で、スポーツカーらしい感覚がある。一方、後席は高くなったドア開口部のお陰で乗降性がタイカンよりも優れ、ヘッドルームもセダン比で+36mmが確保され、居住性が向上している。トランクルーム容量の正確な数字は語られなかったが、タイカンの366Lよりは大きいはずだ。フロントの81Lのトランクに変化はない。
原稿執筆時点ではポルシェは細かなスペックやラインアップを発表していないが、日本向けにはまず「4S」、「ターボ」、「ターボS」という基本グレードを提供するに違いない。ドライブトレーンは前述したようにタイカンと共通で、前後に備わるモーターに2速ギアを組み合わせた4WDとなり、水冷式リチウムイオン電池がフロア下に配置される。
テスト車は「ターボS」で、オーバーブースト時には最大560kW(760PS)と1050Nmを発生。2.3トンを超える空車重量にも関わらず、静けさの中から無限のようなパワーで加速してみせた。正確な数字ではないが、0-100km/h加速はセダンのターボよりも0.2秒速い3.0秒と予想されている(セダンのターボSは2.8秒)。直線ならハイパーカーとも互角に張り合えるだろう。ステアリングホイール背後から突き出たパドルは2段階でエネルギー回生を調整する。
走行時は最初、電気モーターの笛のような高い音、その直後にタイヤノイズがキャビンに充満する。そこでサウンドシンセサイザーをオンにすると、不思議な静けさに包まれる。新体験のポルシェの世界だ。
まだ正確に発表されていないが、航続距離はタイカン(383~452km)と大きくは変わらないと同行のエンジニアは語った。また、欧州ではセダン同様に800V、270kWの超高圧充電システムを使って23分未満で充電が可能だという。
セダンボディのタイカンと比較すると乗り心地が良くなっているのは、高めのサスペンションによって不正路面からの吸収に対してコンプライアンスが取れているからであると説明された。一方で、起伏のあるカントリーロードでスピードを上げても締め上げられたシャシーはしっかりと路面をつかんでいた。
およそ3時間弱のテストでは、「タイカン クロスツーリスモ」を知るには到底足りないが、ターボSグレードの印象から単なるライフスタイル狙いのマーケッティングの産物でないことは確信できた。タイカンのもつ優れたGT性能に、クロスツーリスモがもつスポーツワゴンの実用性とオフロードサスペンションの走破性という魅力が加わった存在になっているのだ。
レポート:グレッグ ケーブル(Greg Kable/Kimura Office)
※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。
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