オンロード最速「911 S/T」爆誕。最良の911は投資価値も◎、4000万円台でもお値打ち!
掲載 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office 12
掲載 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office 12
ポルシェは1963年の誕生以来、これまで何度か「究極のオンロードスポーツ」と呼ばれる「911」を世に送り出してきた。1973年にはRSの元祖である「カレラRS」、80年代の「930 ターボ(911ターボ3.3)」や4WDの「959」、そして水冷時代に入って2016年の「911R」、そして最近では「GT3 ツーリングパッケージ」などがそれに相当する。
ポルシェのオンロードGT開発チームは今回、私たちの想像を超えた組み合わせがあることを明かしてくれた。それが今回テストした「911S/T」で、911の誕生60周年を記念して送り出されたスペシャルモデルである。
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ベースに選ばれたのは「GT3ツーリングパッケージ」で、プラス15ps(525ps)を発揮する「GT3 RS」用のフラット6エンジンを搭載しているが、驚きはその空車重量で1380kgとGT3よりも40kg、RSよりも70kgも軽い。
その結果パワーウェイトレシオは2.63kg/psと992シリーズの中で最軽量、フェラーリやランボルギーニなどのパイパーカー並みの数値だ。この軽量化を達成するためにボンネットやドア、シート、ルーフなど多くの部分にカーボンパーツを採用し、リアシートは外され、防音材も極力省略、さらにリチウムイオン・スターターバッテリー(-3.5kg)、マグネシウム製のセンターロックホイール(-10.3kg)、セラミックディスクブレーキ(‐18kg)、軽量ハウジングのクラッチ(-10.2kg)、シングルマスフライホイール(‐10.5kg)を採用。さらには後輪ステアシステム(‐10.5kg)まで外されている。※()内はいずれも標準パーツとの差。
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搭載されるRS用のエンジンは最高出力525馬力/最大トルク465Nmを発揮、組み合わされるトランスミッションは6速MTのみでギア比は8%ほど落とされている。その結果、最高速度は300km/hとベースモデルのGT3ツーリングパッケージのMTモデル(320km/h)よりは遅いが、逆に0‐100km/hは3.9秒から3.7秒に短縮され、さらに0‐200km/hでは11.9秒から11.2秒と明らかに速い。
カーボン製のスポーツシートに身を任せ、左手でスターターキーを捻ると乾いたボクサーサウンドが薄い防音材を通してダイレクトに耳に届く。専用デザインのショートストロークのシフトノブで1速を選択し、シングルマスのフライホイールでありがちなエンジンストールを避けるためにわずかにクラッチを滑らせながら慎重にミートさせる。
このテクニックというか感覚は古い911を知る者にとっては非常に懐かしい。筆者は当時ポルシェの代理店であった六本木のミツワ自動車で「73カレラRS」を購入したユーザーが信号を3つ超えた交差点でクラッチを焼き付かせてしまったという逸話を思い出した。
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クラッチが繋がった911S/Tはまさに背中を蹴とばされたような加速を始め、スロットルペダルの動きに呼応して軽快に速度を上げて行く。イタリアの田舎に広がる一般道路に設定された、コーナーに富む試乗コースはまさにこの911S/Tに相応しいルートで、ステアリングホイールに当てているわずかな手首の動きに反応してコーナーをヒラリヒラリと通過、さらに続くわずかな直線で鋭い加速を楽しむ。
ちなみにリアスポイラーは公道走行を考えて走行抵抗を減らすため、120km/h以上出さないと立ち上がらない。今回大いに存在感を示したのは標準装備のセラミック製ディスクブレーキで、踏力に合わせて切れの良いコントローラブルな制動力を発揮した。
繰り返すがこの911S/Tはサーキットでタイムを競うモデルではない、しかし今回の試乗コースのようにコーナーに富んだ一般公道でA地点からB地点へ到達するには最速の911だろう。ポルシェが用意したおよそ半日の試乗コース設定は帰りの飛行機に間に合うのかと心配になるくらいの距離だったが、到着してみればコーヒーを堪能する余裕もあった。
911S/Tの日本価格は4118万円。最良のロードゴーイング911、そして投資としても申し分のない素性と内容をもった911ゆえに、十分な可処分所得とガレージに余裕あり、購入を検討している方はディーラーへ急ぐべきである。ポルシェジャパンは8月2日から受注を始めていて、1963台の限定生産ゆえに既にすでに完売かもしれない。
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