卵の殻が引っ掻き材!? ファルケンエスピアEPZ

走りやすさ＆使いやすさを追求

試乗してまず感じるのは、圧雪路での走りやすさだ。圧雪路での前後および横方向のグリップバランスがとてもいいことがその理由。ドライバーは無意識のうちにブレーキの効きやアクセルを踏んだときのグリップ感から、横方向のグリップ性能を予測している。このとき横方向のグリップが期待値よりも少ないと不安感を覚える。

エスピアEPZは、ハンドルを切り出したときのタイヤが雪を捉える手応えや、路面へのエッジの引っかかり感が期待通りに出ており、これが安心感や走りやすさにつながっているのだろう。

トレッド中央部のブロック密度が高く、総体的に溝が細く少なめで、雪の上にタイヤが乗ってしまわないのか？ とも思えるのだが、実際に圧雪路を走らせてみると、ブロックが雪面を踏み締め蹴りだすような感触がしっかりとでている。路面が締まってタイヤが雪面に沈み込みにくい状態でもエッジが効果的に効いているような感触がある。

さらに路面が磨かれ、つるつるの半凍結路面になると、センターの接地面積の広さがグリップを作り出す。もっともこれは表面に浮いた水幕の量にもよるから、どんな場面でもグリップがいいとはいえないが、たとえば氷盤路では、トレッド面の氷盤路への密着感がしっかり感じられる。

氷盤路を走って感心したのは、ホイールスピンする直前がもっとも強いトラクションを出すのだが、さらにパワーをかけホイールスピンしてしまっても、引っ掻き効果による（と思われる）トラクションが残っており、クルマを前に進めてくれたり、緩い上り傾斜の氷盤路を路面をかきむしりながら登ってくれるといった性能を見せてくれる。

氷盤でホイールスピンしてもトラクションが残ってくれる性能は、凍結した交差点からの発進で無造作にアクセルを踏んでもクルマを前に進めやすいことにもつながる。

絶対的な性能ももちろん悪くないが、それと同時に感覚的な走りやすさ、使いやすさがきちんと作りこまれているという点で、出来の良いスタッドレスタイヤだと思う。