新たな仲間募集、JAFの給水素+給電カー、新型GR86の方向性…S耐最終戦で見えたトヨタと水素の現在地
掲載 carview! 文:編集部/写真:編集部、トヨタ自動車
掲載 carview! 文:編集部/写真:編集部、トヨタ自動車
今回発表された機構はあくまでも技術コンセプトのため、S耐ファイナル富士のレースを走る車両には搭載されていないが、トヨタによると、今後これらの技術の一緒に作る“仲間”を募り実用化を目指し一緒に開発を行ない、来シーズンの実戦投入を目指すそうだ。
液体水素エンジンを公開した時も「うちのこの技術を活用できないか」という反響が数多く寄せられ開発が進んだ経緯があり、今回も「我こそは!」と熱い志を持つ企業を絶賛募集中とのこと。
「(この1年で水素技術の開発は)前に進んだのは間違いない。(燃焼技術の)頂上が見えるぐらいまでできているかと思っている。ただ商品化する上で水素以外の山(課題)がまだいっぱいあるというのが見えてきた(GRカンパニープレジデント 高橋智也氏)」
また今回のS耐ファイナル富士では、JAFと共同開発した「給水素+給電ロードサービスカー」も公開された。トヨタはCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)として2023年9月に給水素サービスカーのプロトタイプを公開していたが、今回は急速充電機能も追加したという。
まだ数は多くないとはいえ、MIRAIのような燃料電池車(普通車)や燃料電池トラック(FCEVトラック)などの普及に伴い、ガス欠ならぬ“水素欠”は重大な社会課題となってくる。道路上で水素欠を起こしてしまうと、レッカー車で運ぶしかないのが現状だ。
今回開発したサービスカーは、FCEVトラックの荷台に水素燃料タンクを搭載し、わずか10分ほどの作業で約100km分の水素を“給水素”できるそうで(充填時間のみだと1分半ほどで完了)、最大16台分の給水素ができるという。
今回は静岡県での認可を取得したことで、実際に水素充填のデモが行われた。従来であれば水素ステーションといった特殊な場所でしか行えなかった水素の充填作業が、JAF隊員の手により多くの来場者で賑わう富士スピードウェイのイベント広場で“普通に”行われる点でも画期的な出来事なのだ。
またこのサービスカーは近年増加する“電欠”(2023年は975件で前年比+226件)にも対応し、5kWの急速充電機を備え、10分で約50km分を充電できるという。
従来のサービスカーは10kWの普通充電を搭載し20分で約20km分しか充電できず、次の充電まで4時間ほど時間を空ける必要があったのだが、半分の時間で倍以上充電ができる計算となる。また繰り返し充電も可能で、より実践的な運用が可能になるそうだ。従来のサービスカーが行っていた給油やパンク修理、バッテリー上がりなどにも対応するまさに“次世代のサービスカー”となっている。
今回は完成披露という位置付けで、関係者によると来春から実証実験を行いたいとしているが、地域ごとの認可や各省庁の理解が必要なこともあり、福島や東京など一部の地域で行なっていくとしている。
カーボンニュートラルへ向けた水素社会の実現はゆっくりと、だが確実に近づいている。そして、その実現に向けては、さらなる“仲間”と人々の“理解”が必要なのだ。
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