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名門車が続々消えるなか問われる意義 セダンを選ぶ理由と長所

掲載 更新 59
名門車が続々消えるなか問われる意義 セダンを選ぶ理由と長所

 セダンが売れていない。「セダンはカッコいい」と思う人も一定数いるだろうが、セダンを「ダサい、オジさんっぽい」と思う人のほうが圧倒的に多いのが現状だ。

 とはいえ、クラウンやスカイラインといったビッグネームのセダンはきちんと残っているし、各メーカーのフラッグシップはセダンであることが多い。これほど不人気なセダンが「フラグシップ」である理由とは!? セダンでしか味わえない魅力、セダンだけがもつ価値というものは、本当にあるのだろうか。

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文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUBARU、DAIHATSU、ベストカー編集部

[gallink]

実用性が重視されるようになり、価値観に変化が

 セダンは一般的に、フロントにエンジンスペース、キャビンスペースである中央部には4枚のドアを装備し、リアは荷室スペース、となっている。前・中央・後ろと3つの部分に分かれることから、「3ボックスカー」とも呼ばれる。1980年代までは、乗用車はセダン形状がスタンダードであり、カローラやサニー、クラウン、マークII三兄弟が販売ランキング上位の常連であった。

 ところが1990年代に入ると、パジェロ、ハイラックスサーフ、テラノといった、今でいうライトクロカンSUVや、レガシィツーリングワゴンなどのステーションワゴンが人気となり、90年代後半になると、RAV4、オデッセイ、ステップワゴンなどが爆発人気となる。これまで、「乗用車といえばセダン」だった価値観が覆り、実用性が高いクルマに人気が集中するようになったのだ。

 もともと軽自動車やコンパクトカーはサイズに制約があるため、実用性を持たせるためにリアがハッチバックになるのが必然ではあったのだが、これはある意味ヒエラルキーを生み出していたものでもあった。つまり、リアにトランクを持てるセダンはゆとりのある「贅沢」なクルマであるのに対し、ハッチバックはそれに劣る、実用性重視のコミューターという位置づけだ。

 しかし、SUVやステーションワゴン、ミニバンなどがヒットしたことによって、「実用性が高い方が素晴らしいクルマ」という価値観に置き換わっていく。

トヨタを代表するセダンであったマークXも、2019年いっぱいで生産中止となってしまった。写真はマークXファイナルエディション

運転を楽しむ、高級感を味わうならセダンが有利

 セダンのメリットとしては、まず、キャビンスペースと荷室とを仕切るリアバルクヘッドがあることで、ボディ剛性を高くすることができる。ボディ剛性が高いことは、優れた操縦安定性につながる。基本骨格が強固につくられるほどに、サスペンションやブレーキのポテンシャルを最大限に引き出すことができるからだ。また、キャビンと荷室が別々であることから、荷室からの騒音を遮断しやすく、静粛性も高くなる傾向だ。

 さらには空力特性や重心の高さなども、セダンは断然有利だ。これらは燃費性能や、横風安定性にも影響する。総じて、セダンの方が安定した走行特性であり、安定しているからこそ、運転が楽しいクルマになる。

 また高級感のあるデザインを求めるなら、セダンタイプの方が似合っているように思う。いまはアルファードなどのミニバンが使われることもあるが、やはりショーファードリブンといえば、セダンのほうが優雅で気品あふれる雰囲気を味わえる。「実用性が高い」ことは、高級感を演出したい場合、ときに邪魔になる。各国首脳や要人が乗るなら、やっぱりセンチュリーやロールスロイスでなければ、あの威厳は出てこない。

セダンの中でも別格の存在である、トヨタ センチュリー。この威厳はミニバンでは出せない

しかしながら、現代において「セダンでなければならない」理由は乏しい

 日本は海外と比較して、道路事情が狭く、駐車場も限られたスペースであることが多い。そのため、コンパクトなサイズ、もしくは実用性の高いモデルが人気となるのは当然のことであり、売れるモデルに、各メーカーが力を入れるのも当然だ。

 伝統的にセダンタイプをつくり続け、いまでもセダンにステータスがある欧州プレミアムメーカーとは違い、日本の一般ユーザーが主なターゲットとなる国産メーカーが、新型のセダンを出さない理由のひとつには、やはりSUVやミニバンの方が「便利で万能」だからだ。

 ハンドリング性能や乗り心地、そしてロードノイズがセダンの方が有利になることは確かだが、昨今のミニバンやSUVは、車両開発技術の進化によって、セダンと同等に近いレベルまできている。アルファードやハリアーの静粛性は素晴らしいし、操縦安定性の観点でも、エクストレイルやCH-Rの走行特性は高く評価されている。

 2021年の現代においては、セダンに圧倒的な優位性はなく、特に実用性が求められる日本においては、セダンでなければならない理由に乏しい、これが新型のセダンが日本に出てこない理由のひとつだ。

 そうなるとセダンは、新たな価値観や性能を見出してアピールするか、エクステリアのデザインを訴求するか、クラウンやスカイラインなど歴史あるブランドのネームバリューに頼るか、ということになるが、残念ながら現状は、セダンに新たな魅力は見いだせておらず、「高級感」や「ネームバリュー」といった価値観もユーザーには響いていない。

 もちろん、伝統的なセダンのラインアップが急に消えてなくなるのは考えにくいが、それでも次期クラウンはFFで登場するとか、スカイライン消滅説とか、レジェンド生産終了だとか、セダン市場にネガティブな噂が絶えないのも事実だ。いくらネームバリューがあっても、過去の歴史がすばらしくても、今後は、売れなければ切り捨てられる覚悟はしなければならないだろう。

それでも、クルマ本来の楽しさを味わうならセダン

 しかし、現行型スカイラインに国産初のハンズオフACC「プロパイロット2.0」を搭載して話題となったように、メーカーの技術力や先進性をアピールするためにセダンが活用されるという例もある。

 また、カムリだって素直にカッコいいデザインだし、日産にはアルティマとかマキシマ、シルフィといった、日本には売っていないカッコよいセダンが存在する。無理やり日本でも売ってくれとは言わないが、「うちではこんなカッコいいクルマもつくってます」という主張がもっとあったら、「セダンはオジサン臭い」というイメージも少しは変わってくるのではないだろうか。

日本未導入の日産アルティマ。素直にカッコいいデザインである。北米や中国で人気だ

 「運転して楽しい」とか「スポーティなハンドリング」とか「静かで快適」というセダンの魅力は、どうしても「広々室内空間」とか「狭い道でもスイスイ」とか「背の高い荷物もラクラク積めちゃう」というミニバンやSUVの前で霞んでしまう。

 それでも、クルマ本来の楽しさや快適さは、やっぱりセダンで味わってもらいたい。それが、セダン不人気のいまでも、フラグシップがセダンである理由であろう。いまも、乗用車の基本形はセダンであり、セダンはクルマをつくるメーカーとしてのプライドなのだ。

[gallink]

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みんなのコメント

59件
  • 他人の価値観なんて気にしない、自分だけの価値観を尊重する人こそがセダンに乗ってるんですよ。
  • 自分はミニバンもSUVもハッチバックも乗ったあとにセダンに落ち着いた。
    他人が何に乗ろうがどうでもいいけど、週に5回ほど高速道路を走る自分の生活スタイルや運転技術にはセダンが最も適してたんだと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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