一昔前と比較して、クルマが高くなったと感じる人は多いはず。
かつて100万円前半で買えた軽自動車も、いまや200万円台に突入することも珍しくなくなった。高くなった分、各種安全装備や運転サポートシステムなど、クラスを問わず進化を遂げている側面もある。
30年前と令和4年では買える新車が違い過ぎる!? 新車が150万~450万円前後で買える国産スポーツとは
さらに、原材料や各種資材、輸送費などの高騰、安全装備、開発費、人件費・・。1台のクルマが誕生するまでに掛かるコストが増えているだけに、やむを得ない面も少なからずあるだろう。
今回、30年前の「平成4年5月」と現在の「令和4年5月」で、それぞれの価格帯でどんなスポーツモデルを選ぶことができたのか?検証してみた。
文/松村透
写真/トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱
■30年前の平成4年5月と現在の令和4年5月で比較してみた
平成4年5月の時点で売られていたNAロードスターと、令和4年5月時点で新車が購入できるNDロードスター。いちども途切れることなく今日まで販売されている数少ないスポーツカーだ
150万円を起点に、上は450万円まで。50万円刻みでそれぞれの価格帯の近似値に属するスポーツモデルをピックアップしてみた。
30年前を知らない世代の方にとっては新たな発見となるかもしれないし、当時を知る方にとっては「この価格でこれが買えたんだ…」と驚き、絶句するかもしれない。それではいってみよう。
■対比例1:車両本体価格150万円前後
平成4年5月:ホンダシビックSi-R(153.3万円)
・発売開始:1991年9月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1595cc
・最高出力/最大トルク:170ps/16kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4070×1695×1350mm
・中古車の平均価格:241.8万円(全グレード平均)
いわゆる「EG」と呼ばれるシビック。シリーズとしては5代目にあたる。4ドアセダンには「シビックフェリオ」というサブネームが与えられていたのもこの時代だ。当時、グループAカテゴリーなどでサーキットで活躍したモデルとしても知られる。
EG系シビックもすっかり数が減ってしまった。シビックといえばこのくらいのサイズ、価格帯でもいいような・・・
令和4年5月:日産マーチニスモCVT(163万3500円)
・発売開始:2010年7月
・エンジン:直列3気筒DOHC
・排気量:1198cc
・最高出力/最大トルク:79ps/10.8kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3870×1690×1500mm
・中古車の平均価格:48万円(全グレード平均)
2013年にカタログモデルとして追加されたマーチニスモ。街中での走りを重視した仕立てが特徴。スーパーGTを戦ったGT-Rの空力ノウハウが反映されたエアロパーツもこのモデル専用品だ。
ニスモの名を冠したエントリーモデルでもあるマーチニスモ。ホットハッチの末裔といえる1台だろう
■対比例2:車両本体価格200万円前後
平成4年5月:日産シルビアQ'sクラブセレクション 5MT/4AT(199.5~209.2万円)
・発売開始:1988年5月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1998cc
・最高出力/最大トルク:140ps/18.2kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4470×1695×1290mm
・中古車の平均価格:264.6万円(全グレード平均)
昭和末期および平成初期にデートカーとして一世を風靡したS13型シルビア。流麗なデザインを持ちながら、トップグレードのK'sにはターボエンジンを搭載。Q's、J'sにはノンターボのエンジンが搭載された。
見た目よし、走り良し、女子ウケ良し!それでいて手が届く存在・・・なS13型シルビア。こういうクルマが増えてほしい
令和4年5月:スズキスイフトスポーツ 6MT(201万7400円)
・発売開始:2016年12月
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ
・排気量:1371cc
・最高出力/最大トルク:140ps/23.4kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3890×1740×1500mm
・中古車の平均価格:162.6万円(全グレード平均)
スイフトスポーツとして4代目にあたる現行モデル。いまや200万円そこそこでこの性能や走りを味わえる貴重な存在といえる。古き良きホットハッチの末裔となるかもしれない1台だ。
スズキの良心!? まさに「お値段以上」なスイフトスポーツ
■対比例3:車両本体価格250万円前後
平成4年5月:トヨタMR2 Gリミテッド Tバールーフ 5MT/4AT(241.9~251.2万円)
・発売開始:1989年10月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1998cc
・最高出力/最大トルク:165ps/19.5kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4170×1695×1240mm
・中古車の平均価格:208.1万円(全グレード平均)
角張ったデザインが特徴的だったAW11型初代MR2の後継モデルとしてデビューしたのがこのSW20型。初期モデルでは操安性の問題が指摘されたが、マイナーチェンジを繰り返すにつれて改善していった1台。
SW20型MR2。当時、フェラーリに憧れた当時の若いオーナーが選ぶことが多かったという
令和4年5月:トヨタコペンGRスポーツ 5MT(243万7200円)
・発売開始:2019年10月
・エンジン:直列3気筒DOHCターボ
・排気量:658cc
・最高出力/最大トルク:64ps/9.4kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3400×1480×1280mm
・中古車の平均価格:268.8万円(全グレード平均)
トヨタGRブランドから発売されているコペン。ボディ剛性をアップし、専用の足回りもおごられる。また、専用のモモ製ステアリングやBBS製アルミホイール、レカロシートを標準装備する。
ライトウェイトオープンスポーツともいえるGRコペン。予算的にはNDロードスターも視野に・・・?
■対比例4:車両本体価格300万円前後
平成4年5月:トヨタスープラ2.5GTツインターボワイドボディ(305.5~314.8万円)
・発売開始:1991年8月
・エンジン:直列6気筒DOHCターボ
・排気量:2491cc
・最高出力/最大トルク:280ps/37kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4620×1750×1300mm
・中古車の平均価格:374.6万円(全グレード平均)
発売当初は3リッターおよび2リッターエンジンであったが、マイナーチェンジ時に2.5リッターと2リッターに変更。ノーマルボディ、ワイドボディ、ノーマルルーフ、エアロトップなどボディバリエーションも豊富だ。
スペシャリティーカーとしても、チューニングカーのベース車両としても人気を博したA70型スープラ
令和4年5月:トヨタGR86SZ 6MT(303万6000円)
・発売開始:2021年10月
・エンジン:水平対向4気筒DOHC
・排気量:2387cc
・最高出力/最大トルク:235ps/25.5kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4265×1775×1310mm
・中古車の平均価格:377.5万円(全グレード平均)
昨年、2代目へと進化した86。先代同様、水平対向4気筒DOHCエンジンを搭載。排気量がこれまでの2リッターから2.4リッターに拡大。スバルBRZとは兄弟車といえる関係。
2台目へと進化したGR86。これが純内燃機関を心臓に持つ最後の86となるのか・・・?
■対比例5:車両本体価格350万円前後
平成4年5月:日産フェアレディZ 300ZX Tバールーフ5MT/4AT(345.0~360.0万円)
・発売開始:1989年7月
・エンジン:V型6気筒DOHC
・排気量:2960cc
・最高出力/最大トルク:230ps/27.8kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4310×1790×1250mm
・中古車の平均価格:206.9万円(全グレード平均)
バブル絶頂期にデビューした4代目フェアレディZ。3リッターツインターボおよびノンターボのエンジン、2シーターおよび2by2のボディバリエーション、そしてノーマルルーフとTバールーフ(コンバーチブルも追加)。いずれも非常にまとまったデザインが魅力。
パッと見では2シーターか2by2か分からないZ32型フェアレディZ。識別ポイントは給油口の位置だ(リアタイヤの手前が2シーター、後ろが2by2)
令和4年5月:マツダロードスターRS 6MT(333万4100円)
・発売開始:2015年5月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1496cc
・最高出力/最大トルク:132ps/15.5kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3920×1740×1240mm
・中古車の平均価格:307.4万円(全グレード平均)
2015年にデビューした4代目ロードスターはND型と呼ばれる。エンジンは1.5リッターと2リッターの2本立て。ボディはソフトトップとリトラクタブルハードトップモデルのRFの2種を用意。
■対比例6:車両本体価格400万円前後
平成4年5月:三菱GTOツインターボ 5MT(404万円)
・発売開始:1990年10月
・エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
・排気量:2972cc
・最高出力/最大トルク:280ps/42.5kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4570×1840×1290mm
・中古車の平均価格:229万円(全グレード平均)
各自動車メーカーが「280ps自主規制」のスポーツカーを発売していた次期、三菱が世に放ったモデルがGTO。3リッターツインターボおよびノンターボのエンジンに4WD機構が組み合わされた全天候型のスポーツクーペだ。
マイナーチェンジ時に固定式ベッドライトに変更されたGTOだが、このクルマといえばリトラクタブルヘッドライトをイメージする人が多いはずだ
令和4年5月:マツダロードスターRF RS 6MT(390万円)
・発売開始:2016年12月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1997cc
・最高出力/最大トルク:184ps/20.9kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3920×1740×1250mm
・中古車の平均価格:373万円(全グレード平均)
現行ロードスターの発売から遅れること約1年半後に追加されたリトラクタブルハードトップモデル。クローズ時のシルエットの美しさにもこだわって開発されたという。
コミコミ400万円オーバーは確かに高価だが、一生モノとして(修理ができるうちは)所有する価値も充分にあるロードスターRF
■対比例7:車両本体価格450万円前後
平成4年5月:日産スカイラインGT-R(451万円)
・発売開始:1991年8月
・エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ
・排気量:2568cc
・最高出力/最大トルク:280ps/36kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4550×1760×1340mm
・中古車の平均価格:709.2万円(全グレード平均)
いまや当時の新車価格をはるかに上回る相場で取り引きされている「アールサンニィGT-R」。91年から93年まで4シーズン全29戦をすべて優勝するという前人未踏の記録はもはや伝説の域に。
10年ほど前であれば100万円以下の個体も少なくなかったR32型GT-R。平常値の相場に戻る日は訪れるのだろか・・・
令和4年5月:トヨタGRヤリスRZハイパフォーマンス(456万円)
・発売開始:2020年9月
・エンジン:直列3気筒DOHCターボ
・排気量:1618cc
・最高出力/最大トルク:272ps/37.7kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3995×1805×1455mm
・中古車の平均価格:500.1万円(全グレード平均)
マスタードライバー・モリゾウこと豊田彰男社長が「トヨタのスポーツカーを取り戻したい」という想いのもと、「モータースポーツ用の車両を市販化する」という逆転の発想で開発されたヤリスのスペシャルモデル。
車両本体価格であればR32GT-Rとほぼ同価格帯のGRヤリス。このクルマの造り込みを知ればバーゲンプライスといえるかも
■まとめ:販売台数が期待できないのに、発売してくれるだけで感謝なのか?
今回、ピックアップした各モデル(特に現行モデル)は、クルマ好きのあいだでは話題になるモデルだとしても、大多数のユーザーにとっては選択肢に入りにくい存在だ。つまり(デビュー時はともかく)コンスタントに売れるようなクルマではないし、今後もトヨタヤリスより月間販売台数を上回るということはぼぼないだろう。
型式やグレード構成など、スープラオーナーやファンが喜ぶツボを押さえて登場した現行スープラ
30年前と比較してこの種のモデルの選択肢はあきらかに少なくなっているし、相対的に販売価格も上昇している。
たとえば、スープラの最上階モデルを買おうとした場合を例に挙げてみる。平成4年5月時点で販売されていたA70型スープラ(2.5 GTツインターボ リミテッド エアロトップ 4AT/378.1万円)に対して、現行モデル(A90型)の最上階モデルのRZは731万3000円である。単純に倍以上だ。
現在、トヨタ(レクサス)が多くのスポーツモデル、クーペモデルを発売しているのは豊田彰男社長がいたからこそ・・・かもしれない
声高に「高い! 」と声を上げたくなる気持ちは理解できなくもないが、メーカーとしては決して売れ筋とはいえない存在となってしまったスポーツモデルを企画し、市販してくれるだけでもありがたい・・・と思うべきなのかもしれない。
そして、いまから30年後、比較するとしたらどんなクルマが存在しているのだろうか?PHEVか、EVか。それとも・・・?
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