3気筒エンジン……。ちょっと前だったら、軽自動車のエンジンでしょ? といったイメージで、別に軽自動車を軽視しているわけではないものの、やっぱり「小さいクルマのエンジン」、「廉価版のエンジン」のようなイメージが拭えなかったのは紛れもない事実だろう。
コンパクトカーは1.3Lクラス以上は4気筒が基本で、3気筒エンジンは1L級の廉価グレードという位置づけが一般的だった。軽自動車だって、先代コペンやスバルは4気筒を用意して高級感をアピールしていた。
GRヤリス登場で注目度急上昇! 「軽のエンジンでしょ?」なんて古い古い!! 3気筒エンジン最新事情
3気筒エンジンはメカニズム的にどうしても振動が避けられない。また、爆発間隔が不均等になるため、排気音もボロロロロ~と安っぽく聞こえる。
気筒数が少ないということは、必然的に小排気量となるため、コンパクトカーの、比較的廉価なエントリーモデルに搭載されることが多くなり、音振対策が不十分で、室内に入り込んで気になるということも多い……。などなど、3気筒エンジンはネガ要素が多かった。
しかし! 今、3気筒は新開発エンジンが各メーカーから積極的に送り出され、新世代エンジンとして脚光を浴びている。3気筒はむしろ積極的に選ばれる時代となったのだ。
その理由はどこにある? 最新3気筒エンジン搭載車を徹底的に研究しよう!!
※本稿は2022年10月のものです
文/国沢光宏、渡辺陽一郎、片岡英明、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年11月26日号
■国内外から続々登場している新開発3気筒エンジン
そんなわけで調べてみると、3気筒エンジンを搭載するクルマ、たくさんあるのです。
おおっと、今回は軽自動車、あえて除外です。現在販売されている軽自動車はすべて3気筒なので、別枠で論じましょう。
国産車ではトヨタが積極的。
ヤリス用に新開発した、新世代「ダイナミックフォース」シリーズのM15A型が気合の入った積極的3気筒エンジン。
トヨタ GRヤリスの1.6L・直3ターボの登場で3気筒エンジンの注目度が上がっている
日産の3気筒はe-POWERの発電用エンジンとしてNA・1.2Lがあったけれど、衝撃的なのがエクストレイル用に新開発された1.5Lの直列3気筒。
なにしろ可変圧縮比(VC)機構を盛り込んだターボエンジンという最新技術を満載した意欲作。
ダイハツもロッキー/ライズのマイナーチェンジに合わせて1.2Lの直3エンジンを新開発。
シリーズハイブリッドの発電用エンジンとして搭載される一方、直接タイヤを駆動するコンベンショナルなモデルもある。ロッキー&ライズは1Lターボも含めて全車3気筒エンジンだ。
海外メーカーでも3気筒エンジンが積極的に新開発されている。
BMWの1.5L直3ターボは1シリーズ、2シリーズなどに搭載されているし、VWは8代目ゴルフの主流エンジンを、マイルドハイブリッドを組み合わせた直3、1Lターボとしている。
フランス車も1.2Lターボの3気筒エンジンを搭載するモデルがたくさんラインナップされているぞ!
プジョー、シトロエンの1.2Lターボも直3。100~130psを発揮し、軽快な走りを見せる
ゴルフのe-TSIの直3、1Lターボは110ps、20.4kgmを発揮。48Vマイルドハイブリッドだ
■評論家3人が選ぶ世界の“いい”3気筒エンジン車
■「ハイブリッド化で3気筒は価値を発揮!!」(国沢光宏)
当たり前のことながら3気筒は排気量が大きいほど振動面などで不利になっていく。一方、搭載するクルマは大きいほどエンジンの存在感を薄くできる。
一番わかりやすいのはセレナ(日産 ※ここでは先代型)のe-POWER用1200ccの3気筒。
排気量が小さく、モーターという大きくて重いフライホイールに直結しているため、そもそも振動が出にくい。
加えて本来なら2000cc級エンジンを搭載するボディだからして、エンジンの存在感は薄くなる。
実際、セレナに乗っているとどんなエンジンを搭載しているのかまったくわからない……ということで、エンジンの評価なのかクルマ全体を評価すべきなのか大いに迷うものの、今回のテーマは「搭載車」ということだったので、3気筒エンジンとクルマの総合評価で順位を付けてみた。
逆に3気筒の個性や面白さは考慮しなかった、と考えていただければよかろう。
上位はエンジンにモーターが直結しているe-POWERばかりになってしまう。新型エクストレイルの3気筒も「どんなエンジンなのかわからない」です。
またトヨタ式ハイブリッドTHSと組み合わせても3気筒のデメリットをほぼ消せる。1.5L・THS搭載車で最も大きいシエンタあたりを3位にしておきましょう。
日産 エクストレイル
次点はGRヤリス(トヨタ)の性能追求型3気筒。軽さがしっかり活かされてます。
●国沢光宏が選ぶ世界の“いい”3気筒エンジン車
・日産 エクストレイル
・日産 ノートオーラ
・トヨタ シエンタ
・トヨタ GRヤリス(次点)
■「最新技術で3気筒はデメリットを克服」(渡辺陽一郎)
エンジンの排気量を1.6L以下に抑えた3気筒エンジンは、高効率なパワーユニットで、多彩な発展を見せる。
ハイブリッドはマイルドタイプを含めて豊富に用意され、動力性能を高めたターボも選べる。
1位はノートオーラ(日産)だ。
ハイブリッドのe-POWERは3気筒エンジンで発電を行い、モーターを駆動して走るから、加速が滑らかでノイズも小さい。
ノートオーラの上質感をさらに高めた。エクストレイルの圧縮比を変化させる機能を備えたVCターボも凄いが、価格を考えるとノートオーラを推薦する。
渡辺陽一郎氏が1位に選んだのは日産 ノートオーラ。ちょっと意外!?
2位はノーマルエンジンのロッキー&ライズ(ダイハツ/トヨタ)だ。
ハイブリッドもあるが、ノーマルエンジンは低価格ながら、ノイズを抑えて実用回転域の駆動力も相応に確保した。運転しやすく、3気筒エンジンの本質を突いている。
3位はGRヤリスRZ/RC(トヨタ)だ。
1.6Lターボにより、最高出力は272馬力、最大トルクは37.7kgmを発揮する。3気筒の限界に挑戦するようなパワーユニットだ。走行安定性とのバランスもいい。
次点はVWゴルフの1Lターボ。48Vのマイルドハイブリッドシステムも搭載する。モーターの性能は低いが、発進時にはエンジンの回転も下がっており、この時にモーターが駆動力を素早く支援するから走りが滑らかに感じる。
●渡辺陽一郎が選ぶ世界の“いい”3気筒エンジン車
・日産 ノートオーラ
・ダイハツ/トヨタ ロッキー&ライズ ノーマルエンジン
・トヨタ GRヤリス RZ/RC
・VW ゴルフ 1Lターボ(次点)
■「3気筒エンジンのイメージは大きく変化」(片岡英明)
やはり強烈なインパクトを放ち、度肝を抜いたのはGRヤリス(トヨタ)のRZとRCに搭載されているG16E-GTS型DOHCターボだ。
応答レスポンスはシャープで、無理なく7000回転まで使い切ることができる。
モータースポーツ向けだから低速トルクは今一歩だ。が、6速MTの採用もあり、3500回転から上の領域では刺激的な楽しさを満喫することができる。
トヨタ GRヤリス。同じ直3でも1.5Lとはボアピッチもまったく異なる専用設計の1.6Lターボは強烈なパワー!!!
2位に選んだのは、e-POWERに発電用エンジンとして可変圧縮比のVCターボを組み合わせたエクストレイル(日産)だ。
アクセルを軽く踏んでいる時は燃費がいいし、加速する時は瞬発力が鋭く、パンチが効いている。アクセルペダルの踏力を緩めて回生と減速を行うeペダルも便利だ。3気筒なのに静粛性が高いのも美点の1つ。
3位に推したのは、BMWやミニが使っているモジュラーエンジンのB38型3気筒DOHC直噴ターボである。バランサーシャフトの採用もあり、4気筒並みに滑らかに回り、振動も上手に抑え込んだ。
バルブトロニックなどの採用により回していくと快音を放ち、低速トルクもそれなりにある。パワー感は今ひとつにとどまるが、ムチを入れると楽しいエンジンだ。
BMWの直3は1.5Lターボ。現在は118i218iやX1、X2などFF系に搭載。MINIにも搭載
次点は、VWの3気筒と迷った末にクロスビー(スズキ)のK10C型ターボエンジンとした。3気筒を作り慣れたスズキらしい軽やかなパワーフィールが魅力だ。
●片岡英明が選ぶ世界の“いい”3気筒エンジン車
・トヨタ GRヤリス RZ/RC
・日産 エクストレイル
・BMWやミニのB38型3気筒DOHC直噴ターボ
・トヨタ シエンタ
・スズキ クロスビー(次点)
【番外コラム】最強の3気筒エンジン? GRヤリスがダントツではなかった理由
3気筒エンジンを搭載したクルマのベスト3を挙げるなら、強烈なインパクトを放つ、このGRヤリスRZ/RCがダントツなのかなぁ……なんて最初は思っていたのだが、お三方に挙げていただいたベスト3、片岡さんがGRヤリスを1位とした以外、国沢さんは次点、渡辺さんは3位としており、満場一致のダンゼントップということにはならなかった。
もちろん、インパクトは強烈で、動力性能も凄いのだけれど、これよりももっと、総合的に高く評価できる3気筒エンジンがたくさんある、ということだ。
もちろん、GRヤリスのG16E-GTSだって、凄い3気筒であることに異論はない。
GRヤリスRZ/RCに搭載される直列3気筒1618ccターボは専用開発された意欲作。もちろん評価は高いが、ダントツではなかった
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みんなのコメント
普通の3気筒は、やっぱり普通。
ライターの程度が「廉価版」レベルだということを端的に物語っている記事だ。