この記事をまとめると
■後席とラゲッジが狭いモデルと広いモデルを紹介
この後席は狭すぎる! 一見ファミリー向けなのに家族で使うには厳しいクルマ6選
■車格が上だからといって広いとは限らない
■クルマ選びのポイントはラゲッジに重点を置く方がオススメだ
後席も荷室も思ったよりも狭いSUV
SUVというと、家族や仲間とワイワイしながら、荷物をたくさん積んでアウトドアに出かける……というイメージがある。当然、SUVなら後席も荷室も広く、後席でも快適に過ごせ、荷物もたくさん積める、と思いがちである。が、それは主に中大型SUVの話であって、コンパクトクラス、ミドルクラス(のやや下)のSUVだと、それに当てはまらないSUVもあったりする。
そこで、まずは後席が広くないSUVを紹介する。これは身長172cmの筆者の長年の後席インプレッション経験から言えば、後席に座った時の広さ、狭さ感は、頭上方向より膝まわり方向が決め手で、筆者の場合、長時間の着座では膝まわり空間160mm(たとえばVWゴルフ7)が最小限と感じている。それ以下だと膝頭に少々の空間があっても、下半身が身動きできない状態のように感じられ、窮屈な思いをさせられるのだ。
一方、頭上方向は100mmもあれば、それほど気にならない。なぜなら乗車中は基本的に前を向いているわけで、前方視界が開けていれば、頭上空間の大小はほぼ無視できるのである。
で、SUVで後席膝まわり空間が狭い車種として挙げられるのが、マツダCX-3。なにしろマツダ・デミオをベースに仕立てられたコンパクトSUVであり、後席居住空間はミニマムと考えるべき1台だ。具体的には、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で(以下同)、頭上に105mmはともかく、膝まわりには90mmのスペースしかない。
ちょっと前のSUVでは日産ジュークも後席が狭く、頭上に80mm、膝まわりも110mmでしかなく、側方視界もイマイチ。閉鎖感ある居住性だった。
現在、販売されている車種で続けると、3ナンバーサイズなのに後席が狭めの車種としてトヨタ・ヤリスクロスがある。頭上に120mmはいいとして、膝まわり空間は115mmと、5ナンバーサイズのトヨタ・ライズ、ダイハツ・ロッキーの120mmと変わらない寸法なのである。
ボディサイズはそれなりなのに、後席の広さ、居住性で「あれれ」と感じさせるのが、CX-3に続いてマツダ車で申し訳ないが、CX-30とMX-30だ。CX-30の後席は頭上に120mm、膝まわりに120mmと、筆者がある程度余裕をもって座れる160mmに届いていない。MX-30になると観音開きリアドアの乗降性、リヤサイドウインドウの小ささもあって、頭上に100mm、膝まわりに130mmの寸法以上に窮屈に感じてしまいがちなのである。
また、輸入SUVではフィアット500Xの後席が、見た目のサイズ感より狭い印象で、頭上に135mm、膝まわりに105mmのスペース。基本のフィアット500が頭上70mm、膝まわり50mmだから、それよりはマシ……という感じである。
クルマ選びのポイントはずばりラゲッジ!
逆に、車体はコンパクトでも、驚くほど後席が広いクルマとして、純粋なSUVではないものの、ホンダ・フィットクロスターがあり、頭上に120mmはともかく膝まわり空間は320mmもある。軽自動車のクロスオーバーモデルのスズキ・ハスラーも最大300mm(後席スライド位置による)もあるのだ。比べれば、膝まわり空間100mm前後は、さすがに座っていて窮屈感が否めない。
が、だからといって、上記のクルマのパッケージがイマイチ……とも言えない。そもそも企画段階から前席優先、限られたボディの寸法上、むしろSUVに不可欠なラゲッジスペースの使い勝手を後席より優先したパッケージとしているからだ。日本の乗用車の平均乗車人数は1.5人と言われ、多くの場合、1人か2人の乗車であり、カップルユース前提で乗れば(または夫婦+小さな子供)、まったくもって後席の狭さなど、問題にならないのも事実。ごくたまに後席に大人を乗せる際、「狭くて申し訳ない」と感じるぐらいのことである。
ちなみにトヨタC-HRは後席居住スペースこそプリウスベースだけにそれほど狭くはないものの、デザイン優先のエクステリアデザイン、パッケージのため、乗降性は決していいとは言えず、後席に座ってからはウインドウの小ささから閉塞感を感じやすいSUVとなっている。
では、ラゲッジルームの広さについてはどうか。仮に「SUV=アウトドアに乗っていきたいクルマ」と定義すれば、アウトドアに必要な荷物をたっぷり積めることが要件となる。ここで勘違いしてほしくないのは、容量に惑わされないことだ。広さと荷物の積みこみやすさは別で、たとえばクーペライクなSUVはテールゲートが大きく傾斜しているため、手前側に背の高い荷物は積めない。リヤウインドウも手前に傾斜しているから、荷物とガラスの干渉も気になってくる。バックドアが立ち気味で、開口部、ラゲッジフロア部分の高さに余裕があることが荷物の積みこみやすさに直結するというわけだ。
フロアに関しては、奥行が800mm以上あると荷物の積載性が良く、幅は1000mmが基準と考える。1000mm以上あればベビーカーやペットカートを真横に積みこむことが可能。もし、ベビーカーやペットカートが斜めにしか積めないようなスペースだと、その上に重い荷物を置くわけにもいかず、経験上、そのほかの荷物の積載性が著しく悪化してしまうのだ。
SUVでラゲッジスペースの奥行がもっとも狭いのは、特殊なケースとしてスズキ・ジムニーシエラの200mm。スズキ・クロスビーの525mm(後席スライド位置前端)、マツダCX-3の645mm(デッキボード上段、下段は780mm)、トヨタ・ライズ&ダイハツ・ロッキーの755mmあたりになる。
一方、ラゲッジルームの幅方向では、さすがに国産車はベビーカーの積載性にも配慮されているためか、5ナンバーサイズのダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズでも1000mmが確保され、意外なことにスズキ・クロスビーは1305mmもあるのだからびっくり。幅方向に関してはほぼ心配なしである。軽自動車のクロスオーバーモデルでは、タフトが870mmなのに対して、ハスラーは1090mmを確保。立派である。
3ナンバーサイズの車体にして、新型のラゲッジルームの荷物の積載性が先代より後退した車種として、ホンダ・ヴェゼルが挙げられる。寸法自体は先代が奥行790mm、幅1000mm、最低天井高830mmに対して、欧州プレミアムSUVに匹敵するエクステリアデザインを持つ新型は奥行755mm、幅1010mm、最低天井高780mmと、奥行、高さ方向が減少。それだけでなく、後席使用時に先代では余裕で積みこめたゴルフバッグを1個ですら積みこむことが困難。後席格納が必要になってしまったのである。筆者のようにゴルフをしない人にはまったく関係のない話だが、ラゲッジルームの使い勝手としてはちょっと残念。しかし、ヴェゼルはラゲッジルームより後席優先のパッケージとなっていて、後席居住空間は頭上に115mm(先代125mm)、膝まわり空間になんと290mm(先代240mm)もの余裕があるのだから、後席居住性としては手放しで褒められることになる。
もちろん、ラゲッジルームが多少狭くても、1~3名乗車で、後席すべて、あるいは片側を倒してフラットなスペースを確保できれば、アウトドアの荷物ぐらい、余裕で積みこめるはずである。
最後に、ラゲッジルームに余裕があると、お得で便利になるという話をひとつ。筆者の愛車はSUVではないが、ラゲッジルームはコンパクトワゴンながら結構広く、先日もインテリア屋さんで一目ぼれした1人掛けソファを即決購入。しかし、配送料が高く、配送日数も1週間ほどかかるという。で、お店の人にメジャーを借りてソファの寸法を測ってみると、なんと愛車にギリギリ乗せられることが判明(幅840×奥行850×高さ940mm。足を外し、ひっくり返して入れた)。その日のうちに持ち帰ることができ、配送料がかからず、わが家のベッドルームの隅に、TV観賞用として収まった次第。使えるラゲッジルームはそうしたケースでも、かなりありがたいことを痛感したのだった。
当然、ラゲッジルームに余裕あるSUVであれば、アウトドアやキャンプの荷物も無理なく積み込める。SUVでアウトドアに行くのは主に最大大人2人(と小さな子供)、というなら、後席よりもラゲッジルームの広さを優先して選ぶのが、日常的な使い勝手を含め、正解ではないだろうか。そう割り切れば、SUVの選択肢も広がることになる。
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みんなのコメント
後部席を常用するような使い方に適さないのは当然だろ