■平成の幕開けとともに登場した日本の名車たち
自動車史においてもっとも輝いていた年といえば、1989年といえるでしょう。世はバブル絶頂期で、元号も「平成」になるなど、さまざまなニュースや出来事も多かった1年です。
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とくに日本の自動車史にとっては、現在でも語り継がれる名車が数多く登場した、いわゆる大豊作の1年でもありました。
そんな1989年にデビューしたモデルのなかから、当時を知る人には懐かしく、知らない人にも魅力的な名車を5台紹介します。
●日産「フェアレディZ」(Z32型)
日本を代表するスポーツカーの代名詞ともいえるのが日産「フェアレディZ」です。
時代ごとにスタイルやパフォーマンスで完璧なスポーツカーを目指しているフェアレディZですが、1989年に登場した4代目のZ32型は、当時の時代背景を反映してより大きくワイドな2ドアクーペスタイル(全長4310-4525mm×全幅1790-1800mm×全高1245-1255mm)で注目を集めました。
ボディは2シーターと2 by 2と呼ばれる2種類がありました。
日産のスポーツカーとしての地位を確立していたフェアレディZですが、大型化されたグラマラスなボディだけでなく、心臓部には3リッターV型6気筒エンジンを搭載(NAとターボの2種類)。
ターボ車はR32型GT-Rよりも前に280馬力ものハイパワーを実現し、これが馬力自主規制のきっかけとなったともいわれ、輸入スポーツカーに負けない高級感と走行性能を誇りました。
獲物を狙う猛獣のようなスタイリングは賛否両論ありましたが、現在でも十分立派なサイズと走行性能で一部では根強い人気を誇っています。
実質的な速さはR32型GT-Rに譲ったものの、それでもフェアレディZは「打倒ポルシェ&コルベット」を目指しましたが、その後日産の経営悪化を受けて新型の開発が進まず、2000年の5代目登場まで10年以上も生産されたという歴史を持っています。
●日産「スカイラインGT-R」(R32型)
1989年はバブル真っ盛りで、何をやってもお金が入ってくる時代でした。各メーカーもどんどんと開発費を投入し、先進的なコンセプトやメカニズムを採用したモデルが登場しました。
そんななか、1970年代にレースで圧倒的な強さを誇った最強のスポーツカーの称号「GT-R」を受け継ぎ、1989年に華々しく復活したのが「スカイラインGT-R(R32型GT-R)」です。
「スカイライン」自体は8代目ですが、GT-Rとしては3代目となります。
当時、日産が掲げていた「901運動(1990年代に技術世界一のクルマ作りを目指したスローガン)」の集大成として登場したR32型GT-Rは、電子制御トルクスプリット式4WD機構「アテーサE-TS」や電子制御式4輪操舵機構「Super HICAS」といった先進の技術と、専用設計された2.6リッター直列6気筒ツインターボエンジン(RB26DETT)を搭載していました。
その「901運動」に呼応して与えられた命題「レースで圧倒的な強さを証明せよ」を実現すべく登場したR32型GT-Rは、全長4545mm×全幅1755mm×全高1340mmのボディサイズで、当時としては希少だった国産3ナンバーのワイドさを誇ります。
市販車をベースとした「グループA」のカテゴリーで争われ、高い人気を誇ったツーリングカー選手権のレギュレーションに合わせ排気量を2.6リッターに設定。
最高出力は自主規制で280馬力に抑えられていましたが、実際は軽く300馬力以上を叩き出す実力をもったハイパワーエンジンとして有名でした。
レースでもデビュー年から圧倒的な強さを誇り連戦連勝を重ね、「GT-R=真の速さを持つスポーツカー」として、クルマ好きの羨望の的でした。
また当時はハイパワー化させる「チューニング」が大流行していたため、ターボの加給圧をアップして数百馬力ものパワーを誇るモンスターGT-Rが存在するなど、カスタムベースとしても大人気になりました。
現在でもその人気は根強く、細部にまで手を加えられたR32型スカイラインGT-Rはもちろん、程度のいい車両などはプレミアム価格がつくほど中古車市場でも大人気です。
現在のGT-Rにも受け継がれるスポーツ4WDのコンセプトを体現した、名車中の名車といえるでしょう。
■多チャネル路線で生まれた1989年生まれのクルマ
●ユーノス「ロードスター」
バブル当時の日本はイケイケ状態でした。国産メーカーはこぞって海外向けの高級車ブランドを立ち上げ、トヨタは「レクサス」、日産は「インフィニティ」、ホンダは「アキュラ」など、多チャネル販売路線が本格化していた時代でした。
マツダも国内で5つの販売チャネルを展開し、なかでもスポーティなクルマを扱う「ユーノス」から、世界的に大ヒットとなる1台が1989年に登場します。
それがコンパクト2シーターオープンの代名詞ともされる「ロードスター」(NA系)です。
当時はハイパワー競争真っ只中で、先進技術をふんだんに盛り込んだモデルが注目を集めるなか、1960年代に欧米で人気を博した「コンパクトな2シーターオープンで走りを楽しむ」というコンセプトのロードスターは、既存のコンポーネンツをうまく流用して200万円を切る新車価格を実現。
手頃な価格なのにオシャレで走らせて楽しいスポーツカーとして、デビューから多くの注目を集めました。
多くのスポーツカーが大型化、大排気量化、ハイパワー化を目指すなか、全長3970mm×全幅1675mm×全高1235mmのコンパクトなオープンボディに、1.6リッター直列4気筒エンジンという軽快さで勝負。
美しいフォルムと、軽量さゆえの必要十分なパワーを操る楽しさを前面に打ち出し、日本だけでなく海外でも大ヒットモデルとなりました。
その人気とコンセプトは世界のメーカーをも動かし、BMW「Z3」やポルシェ「ボクスターF」、メルセデス・ベンツ「SLK」など、同様なコンセプトのモデルが数多く登場したほどです。
その魅力は現在でも色あせず、現行モデルの4代目(ND系)までコンセプトが受け継がれています。
初代のNA型はかなり走りこまれている車両が多く、程度のいい中古車は少なくなりましたが、現在のような複雑な機構も少なく社外パーツも豊富なため、手頃に楽しめるスポーツカーのカスタムベースとしても魅力的な1台です。
また、2017年にはマツダがNA型のレストアサービスや復刻パーツを販売する「MAZDA CLASSIC」が始まっています。
●トヨタ「セルシオ」
前述のとおりバブル景気のころは各メーカーが多チャネル販売を展開していました。なかでもトヨタは、1989年に北米で高級車ブランドの「レクサス」を立ち上げす。
このレクサスブランドの最上級モデルとして開発されたのが初代「LS」で、日本ではトヨタ「セルシオ」と命名されました。
当時の北米市場では高級車といえばメルセデス・ベンツやBMWかキャデラックなどがシェアを占め、日本車が入り込めない状態でした。
そんな高級車マーケットに打って出るために、「いま作れる最高の高級車」として、セルシオは全長4995mm×全幅1820mm×全高1410mmの堂々としたボディと、4リッターV型8気筒エンジンを搭載して登場したのです。
車格としては「センチュリー」と「クラウン」の間に位置するモデルで、セルシオの最大の特徴は、ライバルと比べて遜色のない走行性能を持ちながら実現した圧倒的な静粛性と極上の乗り心地でした。
また「ピエゾTEMS」と呼ばれる電子制御サスペンションや、日本車初の自発光式メーターを採用するなど、最新技術を惜しげもなく投入。
当時人気だったメルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」と並んでも引けを取らない唯一のメイドインジャパンとして、大ヒットを記録しました。
レクサスブランドが日本でも定着した現在では、セルシオの中古車は減少していますが、日産の「シーマ現象」と並ぶ高級車ブームのけん引役として、現在も息づく「トヨタの高級車のあるべき姿」を最初に体現したモデルとして語り継がれる名車です。
●ホンダ「インテグラ」(2代目)
1989年当時、大人気だったもののひとつに、F1レースがあります。
伝説的なスタードライバーであったアイルトン・セナがホンダエンジンを搭載したマクラーレンで勝利するたびに「やっぱホンダはスゴイ」といわれ、多くのホンダファンが誕生した時代でもあります。
当時は市販車でもハイパワーを絞り出すため、ターボを搭載するか高回転エンジンを搭載するかで競い合っていました。
また実用性より格好良さが優先された時代で、一般的なセダンではなく4ドアハードトップが主流でした。
そんななか1989年に2代目へと進化したのがホンダ「インテグラ」です。
もともとは「シビック」より少し上のクラスとして登場した「クイント」から派生し、2代目で正式に「インテグラ」という単独名になりました。
デビュー当初は3ドアクーペ(全長4390mm×全幅1695mm×全高1325mm)と4ドアハードトップ(全長4480mm×全幅1695mm×全高1340mm)の2種類をラインナップ。
2代目インテグラでもっとも大きなトピックスは、エンジンの低回転域と高回転域で別々のカムを使う可変バルブタイミング・リフト機構「VTEC」が初めて採用されたことです。
1.6リッター直列4気筒VTECエンジンは、低回転域のトルクを犠牲にすることなく高回転域で高い出力を発揮し、自然吸気にも関わらず160馬力ものパワーを絞り出す名機として評判になりました。
その後ホンダのコンパクトスポーツカーとして代を重ねましたが、2007年に4代目が生産終了し、インテグラの歴史は幕を閉じました。
※ ※ ※
1989年といえば30年以上前になりますが、バブル絶頂期の好景気で、世の中が浮かれていた時代でした。
だからこそ儲け度外視で自由に開発できた結果、さまざまな名車が誕生したともいえます。
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みんなのコメント
内装見るとさすがに時代を感じさせるが、近年のはステアリングやインパネ周り見ても、ロクに使いもしないないスイッチだらけ。
雑然としてるから、これに気を取られてかえって事故になるケースもあると思う。
32Zはバブル期に出た車だが、重要度の高いポイントに集中的に力を注いでいて、そういう意味では贅沢だが余計な金はかけてないと思われる。