最近はSUVの人気が高い。国内における新車の約15%をSUVが占める。2005年頃は約5%だったから、この15年ほどの間にSUV比率が急増した。
SUVの中でも特に注目されるのが、クーペ風の車種だ。厚みのあるフロントマスクに大径タイヤという組み合わせは従来のSUVと同じだが、ボディ後部の形状は異なる。クーペSUVは、リアゲートを寝かせ、車種によっては天井も少し低めだ。
令和のスポーツカーはクーペSUV! スタイリッシュなクーペSUV世界選手権
さて、特に日本では、ミニバンやコンパクトカーなど、スペース効率の高いクルマが人気を集めてきた一方で、旧来のセダンやクーペタイプの車種は衰退が進んでいる。
そうしたなかで、なぜスタイル重視ともいえるクーペSUVがいま急増しているのだろうか。
文:渡辺陽一郎、写真:トヨタ、レクサス、日産、マツダ、ジープ、池之平昌信
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クーペSUVは国内外を問わず急速に増加
2016年12月より発売開始したトヨタC-HR
クーペSUVに該当するのは、日本車ではトヨタC-HR、ハリアー、マツダCX-30、レクサスRXなどだ。
最も分かりやすいのはC-HRだろう。2WDの全高は1550mmに抑えられ、リアゲートを大きく寝かせて、ボディの後部をクーペ風に仕上げた。ハリアーはさほどクーペの印象は強くないが、先代型に比べるとリアゲートを寝かせている。
ボディ形状の美しさが魅力的なマツダCX-30
CX-30もリアゲートの角度は極端ではないが、ボディサイドに曲面を持たせて周囲の風景が大胆に映り込む。ボディ形状の美しさやカッコ良さで周囲の視線を集めるクルマ造りは、クーペに通じる。
レクサス RXは、今ではデザイン手法に古さを感じるが、ボディサイドのラインは鋭角的だ。レクサス車の特徴と併せて、クーペSUVの持ち味も備えている。
レクサス車とクーペSUVの良さを兼ね備えたレクサスRX
そして、クーペSUVは欧州車にも多い。メルセデスベンツは、GLCクーペとGLEクーペを用意した。5ドアボディのSUVで、車名も「クーペ」を名乗る。
BMWではX4とX6が挙げられる。両車ともリアゲートを寝かせて、3シリーズグランツーリスモのような外観に仕上げた。
このほかレンジローバーイヴォークは、全高が1600mmを超えるものの、フロントウインドーを寝かせてルーフは後方に下降させた。外観は鋭角的で、これもクーペの印象が強い。フォルクスワーゲンTロックもリアゲートを寝かせた。
室内狭いのになぜ? クーペ風のSUVが増えた背景
このようにクーペ風のSUVが増えた理由は、まずSUVの造形に広い自由度と多様性があるからだ。
過去を振り返ると、SUVはジープに代表される悪路向けのクルマから発展したので、デコボコを走破できる大径のホイールとタイヤを装着する。車高も高めだから、フロントマスクにも厚みがあって強い存在感を放つ。
悪路走破性に優れ、軽自動車初の本格的4輪駆動オフロード車として誕生した初代ジムニー
いい換えれば、大径タイヤを装着してボディの下側にガード風のパーツを加えると、どのようなクルマでもSUVに見える。かつて北米で販売されたレガシィアウトバックには、セダンをベースにしたタイプも用意されていた。
また、1980年代に販売されたアメリカン・モーターズのイーグルは、大径タイヤを装着して最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)も180mmに達するが、ワゴンやセダンに加えてクーペやコンバーチブルまで選択できた。
こういった経緯を考えると、クーペ風のSUVは用意されて当然だ。ワイドに張り出したフェンダーと大径タイヤという力強い下まわりに、さまざまなボディを組み合わせられる。メーカーが車種数を増やす上でも都合が良い。
だからこそクーペSUVが増えた。普通のクーペ、セダン、ワゴンなどはすでに好調に売れた時代を経験しており、今は安定した市場になった。
欧州車では、かつて日本で流行した4ドアハードトップのような4ドアクーペが人気を得たこともあるが、もはやメルセデスベンツCLSクーペなども新鮮なカテゴリーではない。
ランドクルーザー、エクストレイルなどがSUV市場の基盤を築き、クーペSUVの開発とつながった
そうなるとSUVが頼みの綱で、この多様性を生かして最近はクーペ風が増えた。ランドクルーザーのような悪路向けのSUV、エクストレイルやフォレスターなど実用指向の車種がSUV市場の基盤を築いたが、メーカーはさらに売れ行きを伸ばしたい。
そこでSUVの可能性を求めて開発がエスカレートされ、クーペSUVの段階に入った。
クーペSUV増殖の一方でジープなど硬派なモデルも人気
SUVが新しい方向に発展していく一方で、原点回帰を求めるユーザーも増えてきた。
2020年上半期で首位になったトヨタ ライズ
2020年1~6月における小型/普通車の登録台数ランキングで1位になったライズ、ヴォクシーと同等に売れたRAV4は、前輪駆動ベースのSUVながら、ランドクルーザーのような後輪駆動をベースにした悪路向けSUVの野性味を感じさせる。
また、2019年の輸入車販売状況を見ると、登録台数ランキングでジープ ラングラーが16位に入った。ラングラーはミリタリージープの流れを汲む悪路向けの硬派なSUVで、日本でも1980年代から正規輸入されてきた。
1987年から販売され続けているジープ・ラングラー
それが今になって、メルセデスベンツのBクラスやCLAと同様に売れ始めた。GLCクーペのような都会派SUVが増えた結果、悪路向けへの原点回帰も加速してラングラーの高人気に結び付いた。
SUVブームは今後どのような方向性に向かう?
今後もSUV市場の好況は続く。メーカーとしては、SUVはまだ本格的なブームを経験していない唯一の伸び盛りなカテゴリーだから、商品開発も緩めない。
しかもSUVは多種多様の車種を開発できるから、アイデア次第では、今後も新たな人気車を生み出せる。今後登場する日産アリアもそのひとつだ。
日産アリアは2021年中頃発売予定
そして、SUVが先鋭的な方向に進化を続けると、前述の原点回帰も強まり、RAV4やジープ ラングラーが注目される。SUVでは市場の活性化が多角的に続くのだ。
また、クーペ風のSUVも、全高は大半が1550mm以上だから、スタイル優先ではあるが後席と荷室はセダンやワゴンよりも広い。格好良さと実用性を併せ持つ。
新型ハリアーのラゲッジスペースは広めにつくれており、実用性も併せ持
この商品特徴は、子育てを終えて、ミニバンが不要になったユーザーに最適だ。一度ミニバンに慣れると、天井が下がる全高が1450mm前後のセダンやワゴンには戻れない。クーペ風を含めてSUVがちょうど良い。
SUVの使い勝手にも注目したい。クーペ風を含めて、セダンやワゴンに比べると着座位置が適度に高く、乗降時には腰の移動量が少ない。ドアの開口部も広いから、乗り降りがしやすい。
SUVユーザー層に、ミニバンが不要になった中高年齢層が増えてきている
今はミニバンが不要になったユーザーを含めて、中高年齢層が増えた。SUVはこの世代に優しく、ユーザー層をさらに広げている。
今ではSUV市場にロールスロイスまで参入しており、今後はフェラーリもプロサングエを用意する。世界中のブランドがSUVに群がってきた。
今のうちにクーペ風に続くSUVの新たなコンセプトを見つけられれば、ユーザーの興味を維持できて、付加価値の高いクルマの売れ行きも保てる。今後もSUVのカテゴリーから、さまざまな楽しいクルマが登場するに違いない。
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