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テスラ モデル3に新しい「クルマという空間」の作り方を見た

テスラ モデル3に新しい「クルマという空間」の作り方を見た

テスラ モデル 3 パフォーマンス(US仕様)

ギターの弦の音が生音のように聞こえるオーディオ

帰りの高速は渋滞していたので、オートパイロットをオンに。ハンドルの座りがしっかりとして、クルマが運転を引き継いでくれたことがよく分かる。普段はスポーツカーに乗っていて運転が大好きな私でも、やはりこういう時のオートパイロットは最高だと感じる。車線の真ん中を走ってくれるのはもちろん、アクセルやブレーキの操作も的確で丁寧だから、安心してクルマに任せることができる。

ふと、同乗していた編集者がオーディオをオンにした。エリック・クラプトンの「Unplugged」がクルマを包み込むように流れ出す。モデル3はフロントウィンドウに沿ってぐるりとスピーカーが設置されているおかげなのか、ホームシアターのように目の前でライブを聞いているかのごとく、ギターの弦の一本一本がキュッとこすれる音まで聴こえてくる。エリック・クラプトンの曲をきちんと聴くのはこれが初めてだったが、夕日がちょうど落ちていくところをウィンドウ越しに眺めながら「Tears In Heaven」を聴いていたら、不覚にも目の端に涙が滲んだ。

いつの間にか渋滞も忘れて、モデル3の中に流れる時間に身を任せていた。「クルマという空間で過ごす時間って、特別で、安らいだり、思いにふけったり、悩んだり、それが解決したり……自分にとって大切な時間なんだよな」としみじみ感じる。モデル3は、クルマの性能がどうこうよりも、クルマで過ごす時間を豊かにしてくれるということにおいて、とても素晴らしいクルマだ。クルマが電気になったり自動になることで「電車と一緒じゃん」と言う人もいるが「やっぱり、そうじゃないんだなぁ」と思う。クルマで過ごす時間の良さを、オートパイロット中のモデル3の車内で改めて知るとは不思議な感覚だった。

モデル3から降りて編集者と別れ、満員電車に押し込まれて家に帰る道すがら、ふと思い出し「Unplugged」をかけてみたが、あの感覚が消えてしまいそうな気がして、すぐに電源を落とした。

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伊藤 梓(いとう あずさ):ライター
クルマ好きが高じて、グラフィックデザイナーという異業種から自動車雑誌の編集者へと転身。2018年からクルマの魅力をより広く伝えるために独立。自動車関連のライターのほか、イラストレーターとしても活動している。

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