アキュラよどうした? 落日のLAオートショーで記者を最も驚かせた地元の大メーカーの驕りとは…
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office 23
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office 23
北米のサンクスギビング(11月の第4木曜日)後に開催されてきたLAオートショーは、西海岸の巨大な自動車マーケットを背景に、ラグジュアリーカーやスポーツカーが集まる華やかなイベントであった。従来型のモーターショーが衰退しつつあったにも関わらず、2019年には「アストンマーティン DBX」を始め23台がワールドプレミアされたのも記憶に新しい。しかし2020年は新型コロナの影響で翌2021年5月に延期され、それでも感染状況は好転せず、11月に再延期されるなど、実施も危ぶまれていたのだ。
「We are back!(我々は戻ってきました!)」とのスローガンで発表された参加社リストではアルファ・ロメオ、アウディ…と始まり、フォルクスワーゲン、ボルボで終わるまで少なくとも33社が集結する“予定”で、新型「BMW 2シリーズ」のお披露目が期待されたBMWや、フルモデルチェンジした「SL」をすでに発表したメルセデス・ベンツの名前がないのが残念だったが、それでも何かを期待して中西部から西海岸へと眠い目をこすりながらやってきた。
入場に際してのコロナ対策は徹底しており、まずはワクチン接種証明(もちろん2回分)、もし接種していない場合は、会場前の特設テントで行われる検査で陰性証明を取得、もちろんマスク着用義務もある。
まずは大きな南ホールからスタートすることにして、いつものようにアルファベットのAからと、左側のブースへ向かう。しかしアウディも、その奥が定席だったフォルクスワーゲンも不在だ。会場前の広場で「ID.4」のデモランを行っていた現地ディーラーによれば、本社からの参加はないという。
このホールで異彩を放っていたのはEVブランドのフィスカーで、「E-SUV」はインテリアがリサイクル、さらにホイールも一部がリサイクルカーボンで出来ている。全長4.78×全幅1.99×全高1.63mで、20~22インチホイールを装着。
グレードは「スポーツ」「ウルトラ」「エクストリーム」の3つで、後者の2グレードは4WDとなっている。「スポーツ」は275PSで0-60mph加速が6.9秒、航続距離400km、「ウルトラ」は540PS、3.9秒、航続距離547km、「エクストリーム」は550PS、3.6秒、航続距離557km。電池は「スポーツ」がリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池で、「ウルトラ」と「エクストリーム」がニッケル・マンガン・コバルト(NMC:三元系)リチウム電池となり、中国のCATLが供給する。
ルーフのソーラーパネルは年間で1600km相当の電力を供給する。インテリアのディスプレイは縦長17.1インチ、スイッチで90度寝かせることが可能。いわゆるハリウッド・モードでビデオが楽しめる。トランクは566~1274L、プラットフォームはマグナ製、生産もマグナで何と2年間で開発を終えている。
2022年11月の発売予定で、価格は3万7499ドル、4万9999ドル、6万8889ドル。さらに年間3万マイルの上限で月額2999ドル(379ドルのメインテナンスも含む)のサブスクリプション(リース)もある。CEOのヘンリック・フィスカーはデンマーク人デザイナーで「BMW Z8」や「アストンマーティン DB9」をデザインして名を挙げ、一時はテスラでも働いており、「モデルS」のデザインを出がけたと言われる。
この他目立ったのはベトナムの自動車メーカー、ヴィンファスト(VINFAST)である。元GMの副社長ジェイムス・デルーカを社長に抜擢して2017年に創立、2019年には「BMW 5シリーズ(F10)」をベースにピニンファリーナがデザインした「LUX A2.0」を発売している。
今回公開したのはミドルクラスの「VFe35」とフルサイズ3列シートの「VFe36」で、 電池容量は90kW、航続距離は300~400マイル(483~644km)。アメリカでの発売は来年の第4四半期からを予定しており、価格は未定だが、プレミアム・ブランドとして「適正な価格」を考えていると発表された。2024年半ばまでにはアメリカでの生産も考えているそうだ。
さらに同社は元ベトナム・トヨタで経験を積んだベトナム人マネージャーが欧州内での販売拠点を模索中で候補地としてパリ、アムステルダム、フランクフルトが挙がっている。要するに欧州の技術供与があれば、自動車、特に電気自動車メーカーは競争力のある製品が作れ、販売もノウハウを得れば同様に何とかなる時代になってきたということを物語っているのだ。
一方、既存メーカーで頑張っていたのは韓国のヒュンダイで「E-GMP(エレクトリック・グローバル・モジュール・プラットフォーム)」を採用するホイールベース3.2mの巨大SUVコンセプト「セブン」を発表した。自動運転レベル4以上を想定、まさに走るリビングルームようだが最高出力600馬力で0-100km/hは3.5秒、最高速度は260km/hと発表されている。おそらくこのクルマはアイオニックシリーズのトップモデル「アイオニック7」として登場するに違いない。
この他、南ホールではこの他はトヨタ、レクサスそしてニッサンもあったが、特に目新しいものはなく、記者会見も行われなかった。さらに公式発表では参加と言われたホンダ/アキュラ、マツダそしてボルボは単に地元ディーラーが非常に狭い会場の隅に現行モデルを数台持ち込んで並べただけであった。
一方、西館はフォード、ステランティス、キア、スバルが出展。スバルは発表済みの「ソルテラ」を持ち込んだが、ここでもキアが大型電動SUVの「EV9」を持ち込んだ。全長4.95mで、おそらくこのネーミングでシリーズのトップモデルとして北米や中東の市場へ送り込まれるはずである。
今回のLAオートショーを1社で盛り上げていたのは、やはりポルシェだった。西ホールの入り口右側にいつものように行列ができ、ワールドプレミアを飾ったニューモデルが2台並んでいたのだ。中央は「718ケイマン GT4 RS」、その右は「タイカン GTS」である。詳細は次回、開発担当チーフエンジニアとのインタビューを加えてレポートしよう。
このレポートの最後に、ショーの直前に抜け駆け的に「インテグラ」を公開したホンダ/アキュラがLAショーを欠席したことで、同車が一般公開すらされなかったという残念なエピソードも加えよう。同行した中国人ジャーナリストのWAONさんも期待していたのにがっかりした様子であった。
もしこれが、単に目立ちたがりの独自パフォーマンスなのだとしたら、少なくとも北米では大メーカーのホンダ/アキュラらしからぬ、いやそれ故の驕(おご)りから出た行為に見える。LAショー会場と目と鼻の先のトーランスに開発拠点を構えるホンダが、地元のショーを盛り上げるために出席しなかった理由とはいかなるものなのか。
こうした態度がモーターショーを衰退させる一つの要因になるかも知れないのだ。いや、それ以上に、アキュラブランドを国際的なものにするチャンスを失う、墓穴を掘るような行為ではないだろうか。
※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。
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