BMW MがMであるための秘めたるテクノロジー
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆、編集部/写真:菊池 貴之、BMWジャパン
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆、編集部/写真:菊池 貴之、BMWジャパン
今日、多くのメーカーが500馬力オーバーのエンジンを支配下に置くために、トラクションコントロールなどの電子制御機構と4輪駆動を必須アイテムのごとく採用している。しかしBMWは、トラクションコントロールこそ他メーカー同様に使っているが、後者の4輪駆動にはまだ手を出していない。その背景には『駆け抜ける歓び』を求める上で「FRが持つ素直なハンドリング特性が欠かせないからだ」と言う。Mは500馬力オーバーの力を、リアタイヤだけで路面に伝えるFRを採用しながら、それでもなお“違和感の無い”乗り味で提供しているのが凄いのだ。
トラクションコントロールなどの電子制御を、後先考えずに強烈に効かせれば1000馬力だって支配下に置ける。しかし、そんな対処療法的な制御ありきの仕上げでは、アクセルを踏んだら制御がかかるなど、制約ばかりが表に出てきてしまい、ドライバーにはストレスが溜まる。違和感がない乗り味を提供するMには、言うなれば電子制御を最小に抑えながら、FRで500馬力を支配下に置くための “何か”がある。それが、効果は絶大なのにその存在が知られていない究極の影武者、Mデファレンシャルギア。
タイヤは消しゴムと同じで、押さえつけるとグリップする。そのため、外に力が集中する旋回運動中は、内側タイヤはグリップしづらい。そのときアクセルを踏まれると内側タイヤはグリップが低いので空転しやすく、せっかくの500馬力が路面に伝わらないばかりか、車両が不安定な状態に陥りやすい。
そこで、内輪が不安定になったときに、駆動力を左右タイヤに分配するデファレンシャルギアの拘束により、内外輪を連結して安定性を高めている。しかし拘束し過ぎると、今度は直進性が高まり過ぎて、曲がり辛くなってしまう。その“さじ加減”を電子制御で自在にコントロールしているのがMデファレンシャルギアなのだ。その仕事ぶりを表すように、車体を下から眺めると、デファレンシャルギアは巨大な複数の冷却フィンを伴って後軸の中央に垣間見ることができる。
ノーマルのBMWにはない、これだけの“こだわり”と“技術”を組み込み、Mモデルは速さと日常の扱い易さを両立させているのだ。
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