日本車がカッコよかったあの頃――“新しい何か“を予感させたイケメン車3選
掲載 carview! 文:伊達軍曹 183
掲載 carview! 文:伊達軍曹 183
今でこそ自動車ライターという職業を生業とし、ランチア「デルタ HFインテグラーレ エボルツィオーネII」の中古車を買うなどの変態行為を繰り返している筆者ではある。
だが15歳から23歳ぐらいまでの頃、西暦で言うと1980年代半ばから1990年代初頭頃は、クルマというものにまったく興味がなかった。そのため運転免許を取得したのも18歳ではなく、就職を控えた22歳の春であった。
それゆえ1980年代後半や1990年代初めにデビューした、今となっては「おじさんホイホイ」として盛り上がっている往年の国産各車については、ほとんど記憶と知識がない。
だが、当時のそんな私のハートにも突き刺さり、「……車っていいな。買ってみようかな?」と思わせた国産車は、ごく少数だが存在する。
それについて考えてみることは、現代の「車離れ」が進んでいるとされている若人らに今一度、車というものに興味を持ってもらい、できれば購入していただき、その結果として日本国の経済力を今一度上げていくためには、決して無益ではないのかもしれない。
ということで、考えてみることにしよう。車に興味ゼロな男子をも『おっ?』と思わせた国産車3モデルと、それらに共通していたと思われる何らかのポイントを。

車にも勉学にも興味がないボンクラ大学生だった筆者を最初に「おっ?」と思わせた車は、1988年9月1日に発売された初代日産「セフィーロ」だった。ご承知のとおり、同世代の日産「スカイライン」や同「ローレル」と基本コンポーネンツを共用したセダンではあるが、デザイン等々により、ターゲットとなる年齢層をスカイラインやローレルよりもいくぶん下げたモデルだ。
今ググってみたところによれば、発売前に和田 勉さんと中沢新一さんを起用したティザー広告が流れていたそうだが、それについてはまったく記憶がない。だが発売後、当時の筆者と同じように運転免許を持っていなかった井上陽水さんが走行中の初代セフィーロの窓を開け、助手席から「みなさんお元気ですか? ……失礼します」と告げるテレビCMのことはよく覚えている。
そしてそのCMを見ただけで、ボンクラ男子大学生だった筆者はその車が欲しくなったのだ。車自体のことは何もわからない(当たり前だ。運転免許がないのだから)。だが「今までの自動車CMとは根本的に何かが違う!」という部分に、ボンクラは反応したのだ。そして、あれ(セフィーロとかいう車)を手に入れれば、まったく新しい何かが始まりそうな“予感”を覚えたのである。
つまりは、パワーユニットの性能やら燃費やら居住性やら、あるいは「この車を買えばキャンプが楽しくなりますよ」的な、もはや言い古されたこと、おおむね想像がついてしまうようなことを、今さら訴求してもダメなのだろう。
そうではなく「まったく想像もつかないが、とにかく“何か”が始まりそうなことだけは確かである」との予感を若人らに抱かせるプロダクト設計が、求められているのだ。
「じゃあ具体的にそのプロダクト設計って何なのよ?」と問われれば、浅学非才な筆者には答えるすべがない。アタマのいい人たちに考えてもらうほかない。
だが少なくともそれが「エンジンの性能」「走りうんぬん」「燃費」「キャンプ」「アウトドア」といったことではないことだけは、筆者にもわかる。そして「EVうんぬん」「自動運転うんぬん」の訴求も、この場合においてはさほど効果はないだろう。

具体的にどうすればいいかはわからないまま、とりあえず話を進める。車への興味ゼロだった筆者を次に「おっ?」と思わせたのは、1987年9月に発売された2代目のホンダ「CR-X」だった。
こちらは前述の初代セフィーロよりも前に発売されており、何なら1983年7月には初代「バラードスポーツCR-X」もデビューしていた。しかしなにぶん車に興味ゼロだったため、それらのことをまったく知らなかったのだ。
2代目CR-Xのことを初めて知ったのは、確か1991年のこと。どこかへ行く際に友人のS君が買っただか借りてきただかの中古車が、2代目CR-Xだったのだ。
その当時は完全ペーパードライバーだった筆者はS君の2代目CR-Xを運転はせず、ただ助手席に座っていただけだった。だがそれでも、その車がまったく新しい何か、それまでのスポーツカーとはまったく異なる「決定的なまでの新機軸」であることはよくわかった。そのため「……車っていいな。買ってみたいな」と、ふと思ったのだ。
もちろんカーマニア各位に言わせれば、「いや2代目CR-Xは、特に新機軸というほどのものではないよ。小型軽量FFスポーツの歴史はそもそも○○社の××にまでさかのぼり、その派生的に1983年に登場したのがバラードスポーツCR-Xであって……」みたいな話になるのだろう。
だが申し訳ないが、そんな細かいことは「車への興味ゼロ」な人間にとってはどうでもいい話なのだ。
それまでにも、「CR-Xのような車」はたぶんあったはず。だがその概念をわかりやすく、魅力的に、そして廉価にて提示してくれたのが、筆者の年齢からすると2代目のCR-Xであったのだ。年代によっては、それが「1983年の初代CR-Xでした」ということになるのだろう。
「よくわからないが、とにかく“新たな何か”が始まりそうなことだけは確かである」との予感を若人らに抱かせるだけでなく、それを「比較的廉価に、わかりやすい形で確実に伝えられること」が、今後登場が予想される新機軸においては重要となるはずだ。

この雑文も2200文字を超え、いくぶん長くなった。最後は端的にまとめよう。
「車に興味ゼロ」な若人だった筆者をも「おっ?」と思わせた3台目の車は、1989年10月に発売された初代ホンダ「アコード インスパイア」である。これも発売直後ではなく1992年頃、就職した会社の先輩が所有していた個体の助手席に乗せてもらった瞬間、「……車っていいな。ちょっと買ってみたいかな?」と思ってしまったのだ。
初代アコード インスパイアについての細かいことは、当時まったく知らなかった。だがとにかく初代アコード インスパイアは、端的に言って本当にカッコよかった。「俺もこういう車に乗る大人になりたいものだ」と、助手席にてつくづく思った。
もちろん今さら初代アコード インスパイア的な4ドアセダンを作ったところで、現代の若人らの多くは「カッコいい!」とは感じないだろう。今の時代に即した、何か別の新機軸が必要であることは論をまたない。
だがとにかく「端的に言って問答無用にカッコいい車」を作ることは、自動車メーカーにとってはある意味責務なのだ。そして「ああなりたい」と若人から思われるような大人になることは――というか、少なくとも「……ああはなりたくねえな」と思われないように生きることは、私どもおっさんの責務であるはずなのだ。
写真:日産自動車、本田技研工業
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