ドイツのディーゼル規制のニュースから日本は何を読み取るべきか?
掲載 更新 carview! 文:清水 和夫
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ディーゼルを厳しく規制するのはノルトライン=ヴェストファーレン州とバーデン=ヴュルテンベルク州だ。前者はケルンやボン、デュッセルドルフという大きな都市を含むので、都市部の大気汚染が深刻化している。一方、バーデン=ヴュルテンベルク州はメルセデス・ベンツやポルシェの本拠地で、環境派の意見が強くディーゼルの規制を掲げている。EUは年間平均で大気中の窒素酸化物(NOx)の上限を40マイクログラム/立方メートルとしているが、ドイツの多くの都市はクリアできていない。しかも、この基準は最近の東京の環境基準よりもまだ甘いのだ。
環境団体は40年前のカリフォルニアや日本がそうだったように、大気汚染を抑えることに必死である。そのため、排ガス規制の古いクルマをステッカーで表示し、区画ごとに通行を遠慮してもらう政策が取られてきたが、今回の連邦裁判所の認識で、さらに厳しく規制されることは間違いない。
2002年から参画してきた日本のクリーンディーゼル検討会で、私は排ガス(NOx=窒素酸化物とPM=粒子状物質など)とCO2の削減の両立は難しいが(※技術的に燃費を良くするとCO2は減るが、NOxやPMは増えてしまう)、日本メーカーには排ガス対策の技術があるので、クリーンディーゼル車の導入を推し進めるように意見を述べてきた。日本の自動車メーカーは公害防止の観点から1978年に窒素酸化物などの有害物質を規制し、その後のオイルショックでは省エネ(CO2低減)技術を磨いてきた歴史がある。
一方、欧州はCO2規制には熱心だったが、NOxの規制に甘く、2000年以降急速に普及したディーゼル車が、大気汚染を悪化させたことは間違いない。その欧州も、2020年からディーゼル車もガソリン車もRDE(リアルドライビングエミッション)による新しい排ガス試験方式に切り替わり、アウトバーンを高速で走る高負荷時の排出ガスも測定するほど厳格化される。そうなれば浄化装置のコストも高くなるので、大型車や高級車しかディーゼルは使えなくなるかもしれない。
最近のEV旋風が完全なバブルであることはドイツメーカーもわかっている。だが、ディーゼル不正問題で明らかになった大気汚染という公害問題は、欧州の人々の健康に直結するだけに、EV化を急速に推し進めてでも早急に解決すべき問題なのだろう。
その意味では、欧州政府やメーカーはもっと日本の話に耳を傾けるべきかもしれない。エンジン排出ガスのクリーン化と効率技術の両立に長けている日本の自動車産業は、欧州の公害問題をサポートできるかもしれないからだ。F1エンジンでは負けても、環境技術では日本が世界をリードしていることは間違いない。
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