新型セレナ試乗。先代の完成度に迫れるか?
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:小林 俊樹
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走りにおいては環境性能に注目したい。排気量こそ2リッターで変らないが、直噴システムを採用して出力もトルクも向上してきた。また、バンパーデザインやボディ下面処理により8%も空気抵抗を低減している。その結果、燃費性能は先代の13.2km/Lから15.4km/Lに向上している。
中でもアイドリングストップ機能は出色だ。数回に1回の頻度で再始動時の振動が大きい時があるものの、ハンドルを切ろうとすればエンジンがスタートするなど、違和感が少なく使い易い。しかもこのアイドルストップはECOモーターを使う。簡単な話が発電機であるオルタネーターに電気を流してエンジンを始動するのだ。今は始動時に強いモータートルクが求められる寒冷時の信頼性確保の為に、通常のクルマと同様にスタータモーターも搭載しているが、将来的には一つになってコストメリットに貢献するはずだ。ちなみに実燃費は測れなかったが、ミニバンとしてはトップレベルにあることは間違いない。視認性に優れるECOメーターがついたことも、燃費を向上させるだろう。
運動性能や乗り心地に関しては、個人的にはハイウェイスターよりもノーマルグレードがお勧めだ。走行振動を含めた乗り心地面、特に後席での快適性や足回りとの相性によるハンドリングの素直さでノーマルグレードが勝るからだ。もちろん高速道路など滑らかな路面を走るのであればハイウェイスター特有の安定感が光る。だが、電動パワステの操舵力制御が賢く、ノーマルタイヤでもグニャグニャ感が少なく安心感高く走れる特性と乗り心地を踏まえると、ボクの好みはノーマルだ。
最後にちょっとマニアックな話をすると、実は先代モデルの持っていたコーナーリング時の前後バランスの高さは薄れて、走りは普通になった。いわゆるミニバンの、フロントタイヤに頼るバランスで、ハイウェイスターの強化された足回を生かした、カーブでの気持ち良い旋廻性能では先代に軍配が上がると思う。ハイウェイスターはそのデザイン性やキャラクターイメージからメイングレードであり、今やニッチなグレードではない。そう考えると、特にNVHの質をさらに高める必要があるかもしれない。
ミニバンは重心高が高く、一人乗りからフル乗車時の緊急回避性能も視野に入れる必要があるから、新型セレナのセッティングはフル乗車時の安定性を取った結果だろう。しかし、横滑り防止の義務化が決定した今後は、一人乗りでの気持ちよさを重視しつつ、フル乗車時の安全性は電子制御でカバーするという発想の転換もアリではないか?
もちろん、新型セレナの商品力は飛躍的に向上し、引き続きミニバン市場を牽引するはずだ。ただし今後は、宿命のライバルでもあり今は“それぞれ別モデルとして”販売台数計上をしている、トヨタのノアとヴォクシー連合艦隊との頂上戦で、NVH性能をさらに磨く努力が重要になってくると思う。
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