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「車は急に止まれない」が大型トラックは“もっと急には止まれない”ーーそのワケはブレーキにあり!

そもそもトラックと乗用車のブレーキ構造の違いって?

大型車のブレーキ能力をご存知だろうか? じつはとても強力である。大型トラックともなれば車両重量+自重よりも重い積荷+乗車定員を含めた状態(これをGVW/車両総重量と呼ぶ)で最大25tにもなる。この一般的な乗用車の17倍近い鉄の塊を確実に止めるのが、大型車のブレーキだ。

荷物を積んでいない場合(車両重量11~12t程度)のフルブレーキではスポーツカーの75~80%近い数値(▲0.8G)程度を記録する。シートベルトを正しく装着していなければ前方へ投げ出されてしまう強い減速度である。

強力なブレーキだけに操作は難しく、乗用車のブレーキ感覚で大型トラックのブレーキペダルを踏み込むと車体には急ブレーキがかかってしまう。よって、じんわりとしたブレーキ操作が求められる。そう、大型車のブレーキ操作は慣れるまでが難しいのだ。筆者は過去、商用車メーカーでドライバー職を担当していたが、ドライバーがコントロールしやすい強力なブレーキの実現に注力していた。

大型車が備える強力なブレーキの正体は、ウェッジ式エアブレーキと呼ばれるドラムブレーキだ。この強力なブレーキシステムは大型トラックだけでなく中型トラックや、観光バスや路線バスなどの大型バスにも備わる。

乗用車では油圧を用いたディスク式のブレーキシステムが主流だ。後輪にドラム式を採用するモデルもあるが前輪はほぼディスク式。タイヤと共に回転するディスクローターの両側を、油圧の力を用いたブレーキパッドで挟み込むことで摩擦力を発生させ、それが制動力となる。このディスク式はランニングコストがやや高いものの、減速度のコントロール性能に優れている。

対して中型を含む大型以上のトラックではエア、つまり圧縮空気を用いたドラム式(エアブレーキ)が一般的だ。摩擦材を貼り付けたブレーキシューと呼ばれる部材を、ウェッジ式ホイールシリンダを介した圧縮空気でブレーキドラムに押しつけることで摩擦力を発生させ制動力を生み出す。ディスク式よりもランニングコストが安価で制動力も同等以上だが(大型車の場合)、減速度のコントロール性能は劣る。

ブレーキシューは面積が広いため、圧縮空気でブレーキドラムを押さえつけるとすぐさま強い制動力を発揮する。よって前述の通り、意識的にじんわりとしたブレーキ操作を行わないと急ブレーキになってしまう。

ただし、強い制動力を発揮するドラム式のエアブレーキながら、GVW25tの状態ではしっかり踏み込まないと求める制動力が発揮できない。「車は急に止まれない」とは昔からの交通標語だが、大型トラックは“もっと急には止まれない”のだ。

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