マツダデザインが世界で評価される理由とは?
掲載 更新 carview! 文:すぎもと たかよし/写真:中野 英幸、篠原 晃一、マツダ株式会社
掲載 更新 carview! 文:すぎもと たかよし/写真:中野 英幸、篠原 晃一、マツダ株式会社
―現在展開するデザイン言語「魂動(KODO)」に至るには、これまでの一連のコンセプトカーは不可欠なものだったのでしょうか
「数が多ければいいというものではない。昨年提案した『SHINARI(靭)』は私たちの志を素直に形にしたものですが、重視したのは、そのイメージや想いをどうやって商品につなげていくかです。そういう意味で、『SHINARI』はショーカーではなく“ビジョンモデル”と位置づけていて、この一台にこの世代のデザインのテーマ全てを集約しました。そのくらい高い価値をもったモデルということです」
―では、そもそもなぜいま「魂動」なのでしょうか
「先の『ときめきのデザイン』が光と影を追ったように、いままでマツダは何らかの動きを表現してきました。つまりモーションデザインはマツダのDNAであり、それはスタティックな例えばかつてのジャーマンデザインなどとは違う。ただ、今回は『魂』と謳っているのが肝で、単に表面的な動きをスタイリングに表すことではない。命があること、生きているものだけが持っている生命感をクルマに与えることです。それを明確にするにはどうしたらいいのか? 考え抜いた末、『魂動』というキーワードにたどり着くまで1年ほどかかっています」
―「魂動」には、クルマに1本軸をとおすという意図がありますが、それも「魂」に関係するのでしょうか
「そうです。たとえば、野生の動物には激しい動きをしながらも、頭だけは全く上下動しないという特徴があります。一本軸が通っている安定したフォルムです。このフォルムを実現するしなやかながら軸の通った骨格をクルマで表現したい。その軸は目には見えませんが、立体の始点から終点までどのように通すかで、クルマの姿勢も変わってくるのです」
―「動」の話になるかもしれませんが、初代から2代目のアテンザやアクセラ、あるいは現行デミオでは、フロントホイールアーチを大きく見せて、そこからキャラクターラインを引いている。基本的な表現としては「SHINARI」の表現に近いとも言えますが、そこには連続性があるのでしょうか
「ある種の動きを表現している。つまりスタティックな表現ではないところは共通です。ただ、従来の場合はやや表面的で二次元的な表現であり、骨格の部分まで表現していたとは言えないのが違いでしょうね」
―「魂動」というと、5ポイントグリルにシグネチャーウイング、そしてボディのキャラクターラインの“セット”だという認識があるようです。そのあたりに誤解もありそうですが、「魂動」と「SHINARI」の関係は本来どうなっているのでしょう
「私たちは『魂動』という志を持つと同時に、それを商品に落とし込まなくてはいけません。加えてブランド戦略を考える上で、シンボリックで解りやすい表現も必要です。そこでシグネチャーウイングを考え、ひとつのシンボルとしました。つまり、シグネチャーウイングは『魂動』とイコールではなく、表現の手段の一つと言えます。キャラクターラインは特徴的な表現ですが、これも表現手段の一つです。『SHINARI』は、そのシグネチャーウイングを含め、先のとおり『魂動』をもっとも素直に形にしたビジョンモデルで、いま表現するべき要素はすべて入っています。ですから、少なくとも現在のジェネレーションは『SHINARI』が引っ張るということです」
―デザインには時間的な耐久性が必要だと言われますが、この耐久性と「魂動」をどう捉えていますか
「もちろん重要だと認識しています。今回考えたのは“クルマらしさ”と“動態物としての基本”ですね。タイヤとボディ、ボディとキャビンの関係など、もっともクルマらしく安定した姿勢を目指す。その骨格が完成していれば息が長いデザインになる。また、むやみに新しいモノに飛びつかないこともあります。単に新しいものを取り入れるのは簡単ですが、本物を見出すのは難しい。マツダは、その本物にフレッシュなアイデアを少しずつ採り入れることを戦略的に考えています」
―CX-5以降、ソウルレッドという赤色を統一したテーマカラーにしているのはなぜですか
「個人的に黒と赤が好きなのもありますが(笑)、実は歴代のヒット作をはじめ、マツダは赤色がテーマになっていた例が多いんです。FFファミリアやFDのRX-7、ミニバンも赤で出しました」
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