2021年11月2~5日、ラスベガスのコンベンションセンターでSEMAショーが開催された。SEMAショーは、米国自動車用品工業会(SEMA:Specialty Equipment Market Associationの略)が主催する世界最大級のアフターパーツトレードショーで、例年、世界中から約7万人ものバイヤーが来場。
昨年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けてバーチャルでの開催となったため、リアルでの開催は2年ぶり。今回のSEMAショー、はたして、どんなモンスターが公開されたのか、見どころは? 自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が、ラスベガスに飛んだ!
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文/加藤久美子(Kumiko Kato)
写真/加藤博人(Hiroto Kato)
[gallink]
■市場規模476億ドル!自動車アフターマーケットのすべてがわかる米国SEMAショー
ドリフト大会も開催された
SEMAとは、Specialty Equipment Market Associationのことで直訳すると「特殊機器市場協会」となるが、近年は「米国自動車用品工業会」と訳されている。会員社数は7000以上。そのSEMAが主催する年に1度の見本市が「SEMAショー」である。第一回は1967年に開催された。
自動車アフターマーケットで扱われるあらゆる部品や用品、リペアや塗装、ラッピングなどの技術、ホットロッドやオフロード、フォーミュラドリフト、NASCAR、ソルトレイクの世界最高速、モバイルエレクトロニクスや板金修理まで、市場規模476億ドルにも上る米国自動車アフターマーケットすべてのセグメントをまとめる見本市だ。
東京オートサロンのアメリカ版という表現もあるが、オートサロンが一般公開されているのに対してSEMAショーはトレードショー(業界関係者のみ)として開催される。ただし屋外展示エリア(かなり広く、ドリフトのデモ走行などのイベントも多数)は誰でも見ることができる。
もちろん内容も、カスタムカーの展示が中心のオートサロンに対して、非常に業界チックでマニアック、教育的な展示も多いのがSEMAの特徴である。
SEMAショーの始まりは1967年で50年以上の歴史がある。SEMAショーと言えばラスベガスコンベンションセンターでの開催がおなじみだが、実は昔はロサンゼルスで開催されていた。
筆者がSEMAショーに初めて行ったのは1993年で、それから1990年代はほぼ毎年訪れていた。その後しばらくブランクがあり2016年から再び毎年通い始めることになった。
1990年代前半のSEMAはまだSUVという言葉も一般的ではなかった時代で、ビッグスリーのピックアップトラック(フォードFシリーズ、ダッジ・ラム、シボレーC/Kシリーズなど)とそれらをベースにしたフォード・ブロンコ、シボレー・サバーバンなどの4×4。マスタングやコルベット、カマロなどのマッスルカーのカスタム&チューニングカーで埋め尽くされていた。アメリカ濃度ほぼ100%で、日本車や日本企業の出展はあまり記憶がない。
■どんな日本車の出展が多い?
相変わらず人気の高いスカイラインR34GT-R
会場の屋外に展示されていたR35GT-R
あれから四半世紀以上が経過した近年のSEMAは北米における日本車人気とあいまって、日本車ベースの凄いカスタムカーが多数展示されるようになった。
SEMAは「対面」でのコミュニケーションや出会いを大事にするイベントゆえ、いかに多くの人を呼べるブースであるかが重要だ。例えばクラッチやブレーキディスク、ショックアブソーバーなどのパーツだけを並べても人はなかなか集まってこない。
そこで、各社はみんなどこも、魅力あるデモカーを製作したり借りて来たりして展示を行う。デモカーとしてアメリカ人気が高い日本車を展示すれば、多くの人々がブースを訪れるというわけだ。
近年特に増えている日本車の例を挙げてみよう
・ダットサン240Z(S30系フェアレディZ)から370ZまでのフェアレディZ。アメリカでは古くから熱狂的な「Z」ファンが多数存在する
・シビック、インテグラ、CR-Xなどのホンダ車。1990年代からの西海岸スポコンブームの中心的存在
・A70/80系スープラ。アメリカ仕様の左ハンドルに加えて25年ルール解禁で入って来た右ハンドルモデルなど
・スカイラインGT-R系。2014年以降に25年ルール解禁となったR32GT-Rはもちろん、今年は2020年~に解禁となったR33GT-Rのカスタムカーの姿が目立つ
・日産GT-R。アメリカではじめて新車販売されたGT-Rゆえ、日系メーカーはもちろん、米国のビルダーによる出展が急増
・GRスープラ。2019年はスープラ祭で50台以上のGRスープラが出展。今年も30台以上のカスタムスープラが登場
・ランドクルーザーFJ40系。40系はアメリカでも専門店が多数存在するほどの人気。値段も高騰していてアメリカで1000万円以上も珍しくない
■日本の自動車メーカー、パーツメーカー、石油元売り会社も!
新型シビックSiも注目を集めていた
タコマをベースにキャンピングカーとしたタコジラ
日本車の出展が増えているということで日本企業の出展もこの10年間でかなり増えてきている。トヨタ、ホンダ、レクサス、日産などの完成車メーカーをはじめ、クスコ、テイン、HKS、GReddy、OS技研、EXEDY、NGK、ヨコハマタイヤ、トーヨータイヤ、エネオス、出光など、多くの日本企業が出展するようになった。ちなみにエネオスや出光はアメリカ市場向けの高性能なオイル類を販売している。
SEMA2021においては常連のトヨタ、ホンダ、レクサスに加えて今年は日産も加わった。
・トヨタ→TRDデザートチェイスタンドラ、GRスープラスポーツトップ、タコジラ(タコマ+ゴジラ)タコマキャンパーなど
・ホンダ→新型シビックSi、アコードワゴン(Type R Crate Engine)、パスポート(トレイルスポーツプロジェクト)、シビックSiレースカーなど
・レクサス→新型LX600、IS500Fスポーツ、RC F(GTカップカー)など
・日産→新型Z、オーバーランドプロジェクト・パスファインダー、同フロンティア、Sung Kang's "Doc Z"(ワイスピ俳優サン・カン所有の1971 Datsun 240Z)、"Altimaniac,(アルティマをベースにした2000馬力の4座ドリフトマシン)など
完成車メーカーのブースでもっとも盛り上がっていたのは日産ブースだろう。
開幕初日に2時間のレセプションが行われすべての来場者に対してビールやワインなどがふるまわれた。このような一般向けのレセプションは自動車メーカーのブースとしてはとても珍しい。日産の気合を感じた。
アメリカでも超話題の新型Z(2023年モデル)とともに、日本から開発トップの新型Zチーフプロダクトスペシャリスト田村宏志氏が来場。SEMAに出展した日本企業において日本から開発トップが訪れて来場者からの質問に答えたり、写真撮影に応じたりしていたのは恐らく日産ブースだけだと思う。
さらに超豪華ゲスト=2名のワイスピ俳優がレセプションに参加していたことも多くの来場者を喜ばせた。
そのワイスピ俳優とは、ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFTではオレンジと黒のRX-7 Fortune、最新作ジェットブレイクでは同じカラーリングのGRスープラとともに登場した人気キャラクター「ハン」ことサン・カンと、2011年11月30日に自動車事故で亡くなった兄ポール・ウォーカーの代役としてシリーズに出演したコディ・ウォーカーである。
田村氏とサン・カンはJCCS(日本旧車集会)にも訪れていたので、SEMAへの来場も予想されたが、コディの来場は全く予想していなかったので非常に驚いた。
筆者は田村氏にコディが来ていることを教えてもらったのだが、その時、通訳担当の息子が不在で私のつたない英語でやっと聞けた。
加藤:「新しいZはいかがですか?」
コディ:「とてもいいクルマですね。スタイルが美しい。私はブルーのほうが好きです」
教科書の構文のようなやり取りしかできなかったが、コディはにこやかに答えて握手にも応じてくれた。
私の名刺(名前以外日本語)を見ながら微笑む優しいコディ・ウォーカー
そして、サン・カンは自身の新しい愛車「Doc Z」を日産ブースに出展しており、Doc Zを製作したエリックさんも来場。サン・カン、エリック氏、田村氏の3ショットはかなり貴重な写真である。みなさま良い笑顔です!
240Zベースの新しいカスタムカー「Doc Z」を前に、サン・カン氏、エリック氏、田村氏
『ワイルド・スピード×3TOKYO DRIF』』ではオレンジと黒のRX-7 Fortune、最新作ジェットブレイクでは同じカラーリングのGRスープラと共に登場した人気キャラクター「ハン」ことサン・カンの愛車、DOG Z
■最も気合が入っていたのはトーヨータイヤ
1000psを発生する20Bロータリーを搭載いたFD3S
数ある日本のパーツブランドのなかで最も気合が入っていたのは、トーヨータイヤである。例年、屋外にも大きなブースを構えて有名ラリーストであるケン・ブロックのサイン会や特製ピンバッジの配布を行うのに加えて、ホール館を結ぶ巨大な通路に「TOYO TIRES TREADPASS(トーヨータイヤ トレッドパス)」という特別な展示エリアを設けている。
トレッドパスは今年で8回目の設置となり、同社のオフロードタイヤ「OPEN COUNTRY(オープンカントリー)」シリーズや、ウルトラハイパフォーマンスタイヤ「PROXES(プロクセス)」シリーズなどを装着したカスタムカー30台前後が集められ展示される。
半数以上が日本車のカスタムカーで今年は1000whp 1994マツダRX-7(ジョナサン・グルンヴァルト)、レクサスLC500コンバーチブル(ゴードン・ティン)、1986日産300ZX(ブランドン・ミラー)など著名ビルダーによる日本車などが出展された。
なかでも日本のエアロパーツブランド「アーティシャンスピリッツ」の美しいエアロをまとったLC500の周りには多くの来場者が集まり、カメラを向ける人波が途切れることはなかった。
トーヨータイヤといえば、隠れた人気となっているのが出展車両をかたどったオリジナルのピンバッジ(2018年から配布)で、今年は12車種のピンバッチが時間を決めて配布された。コストはかかるだろうが、来場者をブースに呼ぶための素晴らしいアイデアのひとつである。
■EVコーナーも拡大!一方1000馬力の新型V8エンジンのお披露目も
シボレー史上最大10.3L、V8を搭載したカマロのデモカーを展示
GMC HUMMER EV
今年のSEMAはEVの出展が増えたことも注目すべき事実だ。「SEMA ELECTRIFIED」としてコンバートEVを中心にした展示スペースが拡大設置されたほか、EVとしてよみがえったハマーは「GMC HUMMER EV」としてブースを構え、テスラのカスタムモデルも2019年より出展が増えた。
その一方で、シボレーブースではシボレー史上最大にして最強の新型V8エンジン『ZZ632』がお披露目された。632とは632キュービックインチのことで、排気量にするとなんと10356cc! 最高出力1000馬力以上、最大トルクは876lb-ft。しかもこのエンジンは単なるコンセプトモデルではなく2022年の早い時期に発売されるという。価格は$38000(約433万円)。
説明書きには『Chevrolet‘s Biggest, Baddest Big-Block Ever!!』(シボレー史上最大の最凶で最強なビッグブロックエンジン!)とあった。
Badの比較級はworse最上級はworstが文法的には正しいが、Baddestとは「超サイコー!」という最強の誉め言葉になる。脱炭素へ向けて世界の自動車メーカーの電動化が加速するこのご時世に10.3Ⅼの巨大なV8エンジンの誕生を喜ぶクルマ好きの目に見えるようで、なんだかホッとした。
ちなみにSEMAショーは2028年までスケジュールが決まっており、2022年は11月~4日に同じラスベガスコンベンションセンターにて開催される。
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