連続可変トランスミッションとして、1980年後半ごろに登場し、1990年代から一気に普及したCVT。
かつては、その特有の感覚に不満をもつ方が多かったCVTだが、近年は技術の進化によってそうした声も少なくなり、いまやコンパクトカーや軽自動車のほとんどにCVTが採用されている。あのGRヤリスのAT仕様ですらCVTだ。
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あの不評だったCVTの違和感はいつごろから解消されたのだろうか。CVTの歴史を確認しながら、振り返ってみよう。
文/吉川賢一、写真/NISSAN、TOYOTA、SUBARU、HONDA
【画像ギャラリー】あの独特のモタッとしたフィーリングも今は昔!? CVT改善の歴史を振り返る
■日本の道路事情に適しているCVT
アベニールなどにも搭載されたHYPER CVT-M6。当初はスムーズさとスポーティな走りのイメージを持たせたものだったのだが……
CVTは、2つのプーリーの間に金属製ベルトを通し、そのプーリー間の距離を、狭めたり広げたりすることで直径を変化させ、変速比を変更する仕組みだ。
有段ATのように固定されたギアはなく、シームレスに変速が行われるため、走行シーンに適したギア比をつくり出せる。そのため、「トランスミッションの理想形のひとつ」ともいわれているシステムだ。
日本の道路事情のように、信号や渋滞によってストップ&ゴーの回数が多く、また、加減速を高頻度で行う道路環境では、柔軟に変速比を調整できるCVTの方が適している。また、有段ATの変速のようなシフトショックがないのもメリットだ。
エンジンブレーキなどの使い勝手の観点から、CVTの変速を数段回に分け、「○速CVT」という表現をするものもあった。2000年前後の日産車に採用されていた「HYPER CVT-M6」などがそれにあたる。
キューブやマーチ、プリメーラカミノ、ジューク、その後大排気量エンジンにも対応し、3.5L V6エンジンのティアナやムラーノなどにも採用されていた。
2006年に発表された日産HR15エンジンと組み合わされたエクストロニックCVT。この頃になると燃費改善などエコフレンドリーな変速機としてのイメージとなった
CVTとエンジンとの間に2速ステップATをかませ、ハイ・ロー切り替えをする、副変速機付きCVTも2000年代後半に登場。
CVT側を一番高い変速比にしながら、副変速機側にはハイギアを使えば、さらに高いギア比となるため、高速巡航ではさらにいい燃費が期待できた。2009年頃にジヤトコが開発した「Jatco CVT7」が世界初の副変速機付CVTであり、低燃費を重視する軽やコンパクトカーに広く採用された。
一方、ドライバーの意図と関係なく変速比が変わるため、エンジン回転だけ先行して上昇し、後から車速がついてくる感覚(ラバーバンドフィール)が、あいまいで嫌だという声が多くあった。2000年から2010年頃のCVT車では、そのどれもが「モアー」というフィーリングがあった。
とくに、エンジントルクが細く、アクセルを踏み込む量が多くなる軽自動車では顕著であった。ダイレクトにギアがかみ合うMTや有段ATの慣れ親しんだフィーリングを「正解」だとすれば、2010年頃のCVT車は、それらに遠く及んでいなかった。
■よくなってきたのは2015年頃!?
トヨタが2018年に発表したダイレクトシフトCVT。発進用ギアの採用で変速比率を15%拡大するなど画期的なもの
全ての新車に乗っているわけではないので、「何年式のあのモデルから変わった!!」とは、明確に語ることはできないが、自動車メーカーが、「ラバーバンドフィールの改善」に力を入れ、そして、本当にCVTのドライブフィールがよくなり始めたのは、2015年頃の新型車からだったように思う。
そのころから、どのメーカーのCVT車も、加速時には減速比を固定し、エンジンの回転上昇にあうように加速Gを感じさせるフィーリングへと改善した。
全開加速時には、あえてステップシフトを入れる制御を採用し、さらには、パドルシフトでドライバーが変速制御するかのようなマニュアルモードを用意するCVTも増えている。
例えば、2018年に登場したトヨタのダイレクトシフトCVTでは、発進用ギヤを採用したことで、ベルト効率を悪化させることなく変速比幅を15%拡大。また、プーリーを小型化し慣性を40%下げることで変速応答性を向上させている。
カローラシリーズやRAV4、ハリアー、レクサスUX、そしてヤリスなど、いずれも高い燃費性能と、俊敏なレスポンスで、フィーリングも良い。
日産は、ジヤトコの副変速機付きCVT「CVT7」の進化版として、2015年から小型FF車用のCVT「ジヤトコCVT7ワイドレンジ」を採用している(レシオカバレッジ8.7)。また、軽自動車専用として、小型軽量かつ低コストとした新たなCVT「CVT-S」も2019年より採用。デイズ(三菱eKも)などへ搭載している。
ホンダはCVTを自社開発している。1995年発売の6代目シビックにはじめてCVTを搭載して以降、開発を続けている、というのだから歴史も深い。
早くからCVT特有のクセに対して対策を行い、2012年には北米市場の最重要モデルであったアコードに搭載。CVTのクセを嫌うアメリカ人に、「本当にCVTか?」と言わせたほど、有段ATに近いフィーリングとすることに成功している。
大パワーにも対応したCVTで独自路線をいくスバルのリニアトロニック。WRX S4に搭載されたそれは開発者のエンジニア魂を感じる涙が出てきそうになる完成度の高さ
またスバルも、リニアトロニックという独自のCVTをもつ。2009年5月発表の5代目レガシィに、5速ATと並行して、独自開発の「リニアトロニック」を初搭載した。
もともとスバルは、1984年に乗用車用CVT技術を発表、それから3年後の1987年、「世界初のスーパーオートマチック」と銘打ち、SUBARUジャスティECVTを発売した歴史を持つ。
それから30年以上をかけ、現在では、WRX S4のような300ps、400Nm級のパワーを受け止めるチェーン式CVTにたどり着いている。なお、2代目となる新型レヴォーグは、マニュアルモード付の8速CVTだ。
■「油圧PSとEPS」と同様、「MTや有段ATと同じにはできない」
CVTはいまや燃費と快適性を両立するトランスミッションに成長した。しかしまだまだ進化の余地もあるのだ
とはいえ、ダイレクトにギアがかみ合うMTや、慣れ親しんだ有段ATの変速フィーリングには到達していない。なぜならCVTは、ATの弱点を克服しようと、構造を大きく変えたものだからだ。この構図は、かつてEPS(電子制御パワーステリング)が油圧パワステの操舵力を目指したことと重なる。
EPSのモーター出力改良や特性チューニングによって、油圧PS特性に近づけることはできても、まったく同じにはできない。
それよりも、EPSの長所を認識し、「燃費改善」や「モード可変操舵力」、「操舵力アシスト」といった、EPSならではの魅力を磨いて極めたことで、いまではほぼすべてのパワステがEPSへと置き換わるまでになっている。
過去をリスペクトしながらも、新しいものを受け入れる見方が、我々には必要なのかもしれない。
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