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電気で始まった自動車の歴史と変遷そのメリット

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電気で始まった自動車の歴史と変遷そのメリット

この記事は2020年8月に有料配信したメルマガを無料公開したものです。

以前から予想していたように、2020年~2021年にかけて、世界の自動車メーカーから続々と電気自動車が発売されている。もちろんその背景には、2大マーケットのアメリカにおけるZEV規制、中国でのNEV政策がある。

BMW M550i xDrive (V型8気筒ツインターボ+8速AT:AWD)試乗記

厳しい経済状況下での電気自動車

それに加えてヨーロッパのCO2規制の強化があり、2021年からは乗用車のCO2排出量は95g/km(従来は120.5g/km)に規制され、基準を満たせなければ巨額の罰金が科せられる。現状ではハイブリッド車を大量投入しているトヨタだけが95g/kmの規制をパスできるという状況になっている。

こうした世界の政策の下では、自動車メーカーは電気自動車、プラグインハイブリッドの大幅な投入が求められているのだ。しかし、その一方で、アメリカやヨーロッパの景気に陰りがあり、中国においても2018年~2019年にかけての新車販売はやや減速している状況。堅実な右肩上がりの成長は望める状況にはない。

さらに2020年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、かつてない経済危機、自動車産業においては経験したことのない事態に追い込まれている。

しかし、自動車メーカーにとって、今後の生き残りを賭け、電動化に舵を切るしか選択の余地は残されていないのだ。

そうした中、現状では電気自動車やプラグインハイブリッド車が確実に売れたり、急速に普及する保証はどこにもない状況。したがって、電気自動車やプラグインハイブリッド車に対する各国政府の購入補助金、中国ではそれに加えてナンバープレート取得の優遇措置などが実施されているというわけだ。

このような厳しい状況下で、続々と新型電気自動車を開発し、発売せざるを得ない各自動車メーカーは見通しの効かない航海に出発した状況といえるだろう。

電気自動車の変遷

歴史上で自動車が登場した当時は、蒸気エンジン車、電気自動車が主流であり、内燃エンジンは後発だった。電気自動車は1830年代に登場し、ガソリンエンジン車が登場したのは1886年のことだ。

1900年初頭のアメリカでは自動車の40%近くが電気自動車で、フォードT型が登場するまでは電気自動車が一般的だったのだ。

日本でも最初に登場した自動車は電気自動車で、1900(明治33)年に皇太子(後の大正天皇)のご成婚記念に、サンフランシスコの日本人会が献上したアメリカ・ウッズ社製の電気自動車だった。

当時の電気自動車は、蒸気エンジンやガソリンエンジン車に比べ始動が楽で、変速機が不要。騒音、排ガスがないことがメリットで普及したが、その後ガソリンエンジンの出力が大幅に向上するようになると、出力、航続距離の面でガソリン車が電気自動車を駆逐して行った経緯がある。

現在における電気自動車の出発点は、いうまでもなく排ガスゼロ、CO2ゼロという本質的な特性だ。

量産される電気自動車

量産電気自動車では、三菱が2009年に軽自動車をベースにしたi-MiEVを発売。ベンチャー企業のテスラが2008年にロードスターの販売を開始した。ただしロードスターは少量生産車で、テスラの本格的な量産車となるモデルSは2012年に発売されている。

そして2010年に日産がリーフを発売。これらのクルマが現在のような電気自動車のさきがけとなっている。

三菱のi-MiEVは、ガソリンエンジン搭載の軽自動車と電気自動車モデルの共用モデルとして企画されている。日産リーフは電気自動車専用モデルだが、そのプラットフォームは従来のプラットフォームを電気自動車用に大改造したものだった。

これはある意味で当然で、販売の先行きが予想できない新ジャンルの電気自動車にかける投資には限界があったからだ。

テスラは最初のモデル、ロードスターはロータス社のエリーゼのボディユニットを使用していた。だが、より本格的な量産モデルの「モデルS」の開発にあたり、独自設計で電気自動車専用のプラットフォームを採用した。テスラは最初から大容量のリチウムイオン バッテリーを搭載することを前提にEVプラットフォームを設計。車両の床面全体に18650規格(単3電池とほぼ同サイズの電池)を縦置きで2000本以上配置するためのフラットな形状のプラットフォームをつくった。

当初はこの18650規格のバッテリーは、パソコン用など民生製品用を使用したことで話題になったが、のちに性能、耐久信頼性を高めるためにパナソニック製の自動車規格に合致した電池に切り替えている。

大量のリチウムイオン バッテリーを搭載するためにテスラのプラットフォームは必然的にフラットな形状のプラットフォームになったが、これがその後の電気自動車専用のプラットフォームのスタイルになっている。

なぜなら、その後リチウムイオン バッテリーの性能は向上し、電池セルも円筒形の規格サイズだけではなく、日産リーフのような薄板状のパウチ型、その後には角型などが登場しているが、電気自動車はこれらのバッテリーを大量に搭載する必要があり、なおかつバッテリーの重量は100kg~200kgと、極めて重いため必然的に床面に配置するのが合理的だったからだ。

電気自動車のパッケージングとプラットフォーム

電気自動車は、重いバッテリーを床面配置にすることで低重心にすることができ、床面がフラットにできれば室内のスペース効率も高めることができる。この点が、内燃エンジン搭載車と大きく違うところだ。

内燃エンジン車と電気自動車を改めて比較すると、電気自動車はエンジン、変速機が不要(1段または2段の減速は必要)で、動力源の駆動モーター、パワーコントロールユニット(インバーター類)の容積、サイズはエンジン+トランスミッションよりかなり小さい。

一方で大量のバッテリーを搭載しなければならないため、床面にバッテリーを敷き詰めるというレイアウトが必然的だ。

そしてそのフラットなプラットフォームと、コンパクトなモーター/インバーターを前後のどちらかのアクスルに配置するというレイアウトが電気自動車の特長となる。そのため、フラットな床面を生かしたキャビンのパッケージングは内燃エンジン車より有利ということができる。

ただし、これは最初から電気自動車専用に開発した場合に適合する話で、商品企画的に、内燃エンジン車と電気自動車を両立させる、あるいはプラグインハイブリッド車も並行して展開するとなると話は別になる。

このようなケースでは、あらかじめフレキシビリティのあるプラットフォームを準備する必要があるのだ。


現時点でPSAグループは、オペル コルサe、DS3クロスバックE-TENSE、シトロエンe-C4、プジョーe-208 などは内燃エンジン車と電気自動車を両立させるCMPと呼ぶ新世代のプラットフォームを採用している。また電動化戦略を早々と打ち出したメルセデス・ベンツも意外にも電気自動車専用プットフォームを開発せず、従来プラットフォームの大幅な手直しによりEQCを発売している。

そしてボルボのXC40リチャージも内燃エンジン車のXC40と両立させるためにCMAプラットフォームを採用。マツダの電気自動車MX-30も横置きエンジンプラットフォームを流用している。

このように、最初から電気自動車モデル専用のプラットフォームを採用するか、内燃エンジン車と電気自動車の両方を展開するかという商品戦戦略により、プラットフォームの開発手法は違ってくる。

電気自動車専用のプラットフォームのメリット

グループ内で全面的に電気自動車ラインアップを拡大し、なおかつ最初から収益が確保できる戦略を選択したフォルクスワーゲン・グループは、総額で5兆6000億円を超える投資を行ない、グループ内で複数の電気自動車専用プラットフォームを展開する計画だ。

フォルクスワーゲン・グループは、CセグメントをカバーするMEB、プレミアムEV向けの「PPE(プレミアムプラットフォーム・エレクトリック)」、超高級な電気スポーツカー向け「SPE(スポーツプラットフォーム・エレクトリック)」などが計画されている。MEBはID.3、PPEはポルシェ タイカンとして生産が開始されている。

電気自動車専用に設計されたMEBは、フロントに内燃エンジンやトランスミッションが存在しないため、通常よりフロント・アクスルを大幅に前進させることができ、スペック的には超ロング・ホイールベース、ショート・オーバーハングになっている。

この結果、室内の広さ、使い勝手はCセグメントの常識を打ち破り、ボディサイズはゴルフと同等だが、ホイールベースはパサート並になっており、これがパッケージングでの大きな特長だ。

またこの電気自動車専用のプラットフォームでは、駆動モーターをフロント、リヤ、あるいは前後に搭載することが可能で、前後にモーターを搭載した4WDではプロペラシャフトが不要というメリットもある。

このように電気自動車専用のプラットフォームは、従来の内燃エンジン車では不可能なロングホイールベース化、ショート オーバーハングにできるレイアウト、より広い室内パッケージングが可能になり、単に排ガス/CO2ゼロということ以外での優位性がある。この優位点をよりうまく生かすことができれば、電気自動車の可能性を一段と拡張することができるのだ。

また副次的に電気自動車プラットフォームは、バッテリー、モーター、インバーターがセットになった完結したプラットフォームのため、他社に販売することも可能になる。実際MEBは他社に供給することもビジネスとして想定している。

こうした点も従来の内燃エンジン車では考えられなかったことである。

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