走るシーラカンスに試乗 ロシアが作るバン、UAZ
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:中野 英幸
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:中野 英幸
だが乗れば乗ったでまた衝撃。確実に、昔が蘇るのだ。ステップを上がり、運転席に座れば、そこは三丁目の夕日の世界。インパネは鉄板むき出しっていうか鉄板そのもので、ご丁寧に磁石のクリップが張り付き、ドア内張りは昔懐かしい強化ビニール製。メーター類は全て丸型で、しかも小さく左側に寄り添っている。
意外にも「インジェクションなんで一発でかかります」の言葉通り、エンジンは一発始動だが、クラッチを踏むなりむむむむ…。全ての感触が50年前レベルなのだ。
そう、俺が思い出したのは20年前に乗ったランクル40系。あの時もそうだったがスプリングがカキン! と伸びる音と共にクラッチを踏んで走り出すと、ステアリングはもうぶかぶか。大海の中を行く小舟のようというか、重くフリクションの塊のステアリングはセンターポジションが出てるどころか、その存在がわからない。右に切っては切り過ぎ、それを戻すために左に切っては切りすぎて右に戻し…の繰り返しでしばらくはカウンターの連続。初めて櫓付きの船を漕ぐかのようだ。
エンジンもそう。09年より搭載されたUAZ製の2690cc直4DOHCノンターボは112ps/4000rpmで、さらにこの試乗車は違うものの、今回ボッシュ製インジェクションが付いたわけだが、とにかく今のエンジンのような“回す快楽”を期待したら大間違い。
2000rpmだろうが4000rpmだろうが、どの回転域でもスムーズに伸びる感じは皆無で、ガーっという音ともに1速で40km/h、2速で60km/h、3速で80km/hとノイズの塊のように進む。
最高速は4速トップギアで、110km/hぐらいらしいが(カタログ上は127km/h)、とにかくいつでもどこでも“がんばってる”のだ。しかもエンジンを運転席と助手席の間に抱えてるので暑い暑い。しかしこれまた真冬に外に出ずにエンジン整備するためのレイアウトで、まさしくmade in ロシア!!
ちなみにガソリンはレギュラーでも全然大丈夫で、それどころか「オクタン価76でもOKです(笑)」とのこと。
ギアボックスは今回俺が乗った4速MTのみで、加えクラシックなパートタイム式4WDなので、ハイ&ローと2WD&4WDの2つのレバーを持つ副変速機が付く。これがどちらもギアを直接手で触っているかのようなニブイ感触が得られるのだ。
おそらく新型ポルシェ911に乗って良かったとかゴルフGTIはいい…というのとは別の次元。ある意味、昔畑で盗んだスイカを食べた…的な喜びが味わえるのだ。
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