トヨタから新型ヤリスと新型アクアが発売され、ホンダからは新型フィットが登場、日産もノートがフルモデルチェンジして、先ごろノートオーラが発売されている。
いま日本のコンパクトカー市場は大変な激戦区となっている。
どうした俺たちのホンダ&日産! 王者トヨタ独走の裏で2大ライバルはなぜ元気がないのか
そんななか、かつてこのカテゴリーで珠玉の存在として活躍していたモデルが、まったく手つかずのまま放置されている。日産マーチである。
現行型(4代目)マーチの登場は2010年。もう今年で11年が経過した。次期型開発の噂はまったく聞こえてこず、そろそろモデル廃止の話ばかりが囁かれている。しかし日産はマーチを諦めるべきではない。
スカイラインだって「諦めない」と明言したのだから、マーチだって諦めるべきではない。この大事なブランドがなぜ諦めるべきではない重要なモデルなのか、自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に解説していただいた。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部、TOYOTA、NISSAN
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■コンパクトカー戦国時代に取り残された日産マーチ
2021年7月19日に発売された新型アクア。ボディサイズは全長4050×全幅1695×全高1485mm、ホイールベースは2600mm。アクセルペダル1つで加減速を可能にする「快感ペダル」をトヨタ車で初採用
最近はコンパクトカーの売れ行きが好調だ。新車として売られるクルマの約25%を占めて、軽自動車の次に多い。
背景には運転のしやすさや経済性に加えて、クルマの価格が上昇した事情もある。安全装備や運転支援機能の充実により、車両価格は、15年ほど前に比べて1.2~1.3倍に高まった。200万円だったクルマも、今は240~260万円だ。
2020年2月にフルモデルチェンジした現行型フィット。パワートレインは1.3L 直4ガソリン車と1.5L 直4エンジン+モーターのe:HEV
そこで2020年には、コンパクトカーのヤリス、フィット、ノート、ソリオが新型になり、2021年にはアクアもフルモデルチェンジを行った。ノートオーラも加わっている。
このようにコンパクトカーの新型車が次々と登場する中で、伸び悩むのがマーチだ。
2010年7月に登場した現行型4代目マーチ。エンジンは新開発のHR12DE型1.2L 直3DOHC。現行型より生産拠点が神奈川の追浜からタイに切り替わった
過去を振り返ると、初代マーチは、日産の最小サイズのコンパクトカーとして1982年に発売された。この時点から、欧州などの海外市場でも販売されている。
1992年に発売された2代目マーチは、サイドウインドーの下端が低く、視界が抜群に優れていた。ボディもコンパクトで運転しやすく、なおかつ外観デザインもバランスが良い。今でも古さを感じさせず、コンパクトカーの歴史に残る名車といえるだろう。
そのために2代目マーチは売れ行きも好調だった。発売された翌年の1993年には、1か月平均で約1万600台を登録している。しかも年を経るごとに売れ行きを伸ばし、1997年の1か月平均は1万2000台に至った。今日のノートを上まわる。
■2010年の登場以降じわじわと失速
2002~2010年まで販売された3代目マーチ。2003年時点で平均で月1万台ほど売れていた。2003年10月にはスポーツモデルの12SRがラインナップに加わった
一般的にクルマの登録台数は、発売から時間が経過すると下降するが、逆に伸びる車種は優れた商品である証だ。市場の評価を着実に高め、ユーザーを獲得している。初代ワゴンRや初代フィットも、同様の売れ方であった。
この後、1998年には初代キューブが登場してマーチの売れ行きは少し下がるが、依然としてコンパクトカーの主力であり続けた。3代目は2002年に発売され、乗り替え需要も豊富だから、2003年には1か月平均で約1万台を登録している。
問題は2010年に発売された4代目の現行型だ。プラットフォームを刷新したが、コスト低減が著しく、操舵感や乗り心地の粗さが目立つ。シートの座り心地も良くない。後席の背もたれを前側に倒して荷室を拡大すると、シートと荷室床面の間に隙間ができて、3代目に比べると質感の低下が見受けられた。
2013年6月のマイナーチェンジで内外装のフェイスリフトを実施。フロントは日産車の象徴であるVモーショングリルを採用。2020年の一部改良でインテリジェントエマージェンシーブレーキと踏み間違い衝突防止アシストを全車標準装備
同時期に登場したヴィッツ最終型やミラージュに似て質感と商品力はいまひとつ
ちなみに2010年頃に発売されたコンパクトカーには、質感に不満の伴う車種が多い。2008年に発生したリーマンショックによる経済不況の影響だ。先代パッソ(2010年)、最終型のヴィッツ(2010年)、先代アクア(2011年)、現行ミラージュ(2012年)などは、いずれも発売時点の造りが粗く、その後に改善を受けたが不満を解消できなかった。
日産は現行マーチの発売後、2012年には先代ノートを投入して、2016年になるとe-POWERも加えて売れ行きを伸ばした。そのためにマーチの存在感は、さらに薄れてしまう。2012年頃からは、ノートを含めて軽自動車やコンパクトカーも衝突被害軽減ブレーキを採用するようになったが、マーチは放置された。衝突被害軽減ブレーキを装着したのは2020年に入ってからだ。
このような冷遇もあり、マーチの売れ行きは低迷する。2021年1~7月の登録台数は、1か月平均で825台だ。前述の通り2000年代前半までのマーチは、1か月に1万台以上を登録することもあったから、今の売れ行きは10%以下に留まる
■マーチがなくなれば150~170万円の価格帯がぽっかり空く
国内専用車として投入された新型ノート。全車e-POWER搭載により価格は大幅に上昇。売れ筋の新型ノートXが218万6800円、先代ノート1.2Xは150万2280円
そして現行ノートはe-POWERのみだから価格も高まった。先代ノートのノーマルエンジン車(純ガソリン仕様)を使うユーザーは、乗り替える車種を見つけにくい。現行ノートの価格は全グレードが200万円を上まわり、売れ筋のX(218万6800円)に、プロパイロットを含んだセットオプション(42万200円)とLEDヘッドランプ(9万9000円)を加えると、総額は270万6000円だ。先代ノートにノーマルエンジンを搭載したXは160万円以下だったから、大幅な価格上昇になってしまう。
そこで先代ノートのノーマルエンジン車から乗り替えるのに適した車種は、価格が同等か少し安いマーチとなる…はずだったが、売れ行きは若干伸びた程度だ。対前年比の伸長率は大きいが、1か月平均の登録台数は前述の825台と少ない。
2013年12月に追加されたマーチNISMO。グレードは1.2Lガソリン+CVTのNISMOと1.5Lガソリン+5速MTのNISMO S
日産の開発者は「先代ノートのお客様は、価格の安いデイズとマーチに約半分ずつ乗り替えている」というが、販売店は「内外装が上質で安全装備の水準も高いことからデイズを推奨している」と述べる。
この状態は、ユーザーに対して良心的とはいえない。ノートのノーマルエンジン車の代わりに軽自動車のデイズという選択では、峠道や高速道路を走る機会のあるユーザーにとって不満を伴うからだ。ヤリスやフィットと同様、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能を含めて、150~170万円のコンパクトカーが必要だ。
ただし現行マーチは選びにくい。先に述べた通り商品力に不満があり、今では発売から10年を経過したから、選ぶ価値は大幅に薄れた。
そうなると現行ノートとプラットフォームを共通化した新型マーチの登場が期待される。現行ノートのプラットフォームは、ルノーが中心になって開発した経緯もあり、ボディ剛性が高く足まわりを柔軟に伸縮させる。操舵感も正確で、運転しやすく、車両との一体感を味わえるから走る楽しさも味わえる。
エンジンは直列3気筒1.2Lノーマルタイプを搭載して、コストを低減させると、衝突被害軽減ブレーキを装着して価格150~160万円に設定できる。今の日産はキューブやティーダを廃止しているので、マーチのフルモデルチェンジは必須条件だ。
それがダメならルノートゥインゴS(189万円)をベースに、価格を抑えたOEM車をマーチとして販売する方法もあるが、基本設計が古い。
オーテックジャパンが手がけるマーチボレロ。ボレロ専用のフロントグリルやワインカラーの専用モノトーンインテリアがエレガントな雰囲気を演出する
■先代ノートのユーザーの受け皿としてマーチが必要!
強者ぞろいのコンパクトカー市場で存在感を発揮するためにも、100万円台後半のコンパクトカー、つまり新型マーチの投入が必要と筆者は説く
日産の現実的な方針は、ノートを日本仕様として開発したから、国内のコンパクトカーはこのノート1車種に任せるというものだ。ノーマルエンジン(純ガソリン仕様)を削った代わりに、上級のノートオーラを加え、トータルでの売れ行きは同等の水準を保つ。
仮にそれができれば、ノーマルエンジンやCVT(無段変速AT)の開発費用が省かれ、ノートオーラは上級車種だから1台当たりの粗利は増える。ノーマルエンジンの廃止とノートオーラの追加は、日産にとって合理的で、低価格車を求めるユーザーにはデイズとマーチで対応する戦略だ。
しかしそれを続けたら、日産車を購入するユーザーを狭めてしまう。
特に今は、冒頭で述べた通りコンパクトカーが従来以上に人気を高めた。ヤリスやフィットのノーマルエンジン車に対抗できる価格を抑えた新型マーチが必要だ。
ノートにノーマルエンジン車を復活させる方法もあるが、開発者は「現行ノートは先代型よりも高コストだから、ノーマルエンジンとCVTを搭載しても、価格をあまり抑えられない」という。つまりe-POWER専用車になって価格を高めたノートとノートオーラは、低価格のマーチとセットで成り立つ商品なのだ。
そこを乗り越えないと、日産が国内市場で存在感を取り戻すのは難しい。今の国内販売の順列は、トヨタ、スズキ、ダイハツ、ホンダ、日産というものだが、5位は日産にとって不本意だろう。マーチの動向は、日産の将来にも大きな影響を与えることになる。
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