【ついに試乗!】プロサングエをフェラーリがSUVと呼びたくない理由とは?
掲載 carview! 71
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SUVブームは終わらない。やや古いデータだが2021年の世界自動車販売台数の内45.9%、およそ3550万台はSUVであった。このトレンドに乗ったスーパースポーツカーメーカーのランボルギーニは「ウルス」の販売を2018年から開始、2022年の記録的な販売台数のうちスポーツSUVは5367台、すなわち58%と半数以上を出荷している。
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<写真:ランボルギーニ ウルス>
こうした状況下でフェラーリも昨年、同社としては初の4ドアSUVモデル「プロサングエ」(イタリア語でサラブレッド)を発表したのだ。
「フェラーリよ、お前もか!」と突っ込みたくなるところだが、冒頭に述べたようなSUV全盛期にあって、営利企業としては当然のことながらこのトレンドに乗らないわけにはいかないだろう。しかしスポーツカーの老舗として誇りもある同社は決して“後発SUV”とは言われたくない。
そんなわけで今回の発表試乗会ではビデオ、3つのワークショップそしてデザイン解説と多くの時間が割かれたが「SUV」という言葉は一回も聞かれなかった。さらに生産についても年間およそ2000台規模と他ブランドに比べると控えめな数字が聞こえてきたのだ。
<写真:フェラーリ プロサングエ>
プロサングエは全長4.97×全幅2.03×全高1.59m、ホイールベース3.0mのクロスオーバーSUVで、ロングノーズのプロポーションが特徴的。サラブレッドの筋肉のような緊張感をもったサーフェスはどこから見てもフェラーリである。
<写真:フェラーリ プロサングエ>
北イタリアのハイエンドスポーツカーブランドとしての初めての4ドアモデルはまるでハイテクショーケースのようで、まず搭載されるエンジンは「812」シリーズから移植された自然吸気6.5リッターV12で、最高出力725ps、最大トルク716Nmを発生する。
搭載位置はフロントアクスル(前車軸)後方のフロントミッドシップで、リアにギアボックスをもつトランスアクスル方式である。
<写真:フェラーリ プロサングエ>
またエンジン前方にPTU(パワートランスファーユニット)をもつ独自の4WDシステム(4RM-Sシステム)は「GTC4ルッソ」から引き継いだもので、後輪ステアも組み合わされる。こうしたレイアウトの結果、前後重量配分は49対51と理想的な数値を得ている。
運転席周りは近年のフェラーリ・フォーマットに則った人間工学的レイアウトで、短時間の学習で一通りの操作はできる。ちょっと驚いたのはオリジナルのナビが無いのでオーナーのスマホと接続する必要があることだ。また「ローマ」のように助手席にも10.2インチのモニターがレアウトされている。
<写真:フェラーリ プロサングエ>
2トンをわずかに超える自重にもかかわらず、スタートは力強くスムースで若干雪の残る路面でもしっかりとしたトラクションが掛かり安定した走りを見せる。さらに大径扁平タイヤにも関わらず48Vのアクチェーターで駆動する電子制御ダンパーによってロールは効果的に抑えられ、かつGT独特のメリハリのあるしっかり感を併せもった快適性が保たれている。
<写真:フェラーリ プロサングエ>
シャープでフィードバックの確かなステアリング特性と、リヤ操舵のお陰で路肩の緩んだ狭い道でも安心して走破することが可能だった。
観音開きで79度まで開く自動リアドアに招かれると、前席と同じセパレートスポーツシートが並ぶリアコンパートメントには日本人平均女性(158cm)はもちろん男性(171cm)でも十分以上の広さが確保されており、ファミリーロングドライブを楽しむことが可能である。
<写真:フェラーリ プロサングエ>
プロサングエはこれまでのフェラーリでは重視されていなかった多様性と機能性、そしてオフロード走行性能までを備えた4ドアボディと十分なトランク(473リッター)をもつSUV…失礼! スポーツクロスオーバーであった。
価格は4760万円とこのカテゴリーでは最も高価な部類に入るが、ユーティリティとスポーツ性がフェラーリのレベルで融合した類まれな内容と、一台で間違いなく二役を演ずることが可能なことを考えると、まあリーズナブルと言える。
もっともそう考えるのは一般庶民で、ほとんどの場合はガレージの隣にはフェラーリブランドのスポーツカーなどが並んでいるに違いない。生産は間もなくスタートするが、デリバリーは来年の夏ごろになるだろう。
テスト:トーマス・ガイガー(キムラ・オフィス)
解説/木村好宏(キムラ・オフィス)
写真:フェラーリ
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