自動車デザインの常識を疑え。ゴルフやパンダはアジアでも名作と呼べるのか?
掲載 更新 carview! 文:島下 泰久
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ましてトヨタやVWのような世界で1千万台を売り上げるようなブランドにとっては、すべてのモデルを同じデザインテーマで貫くのは無理な話だ。日本でトヨタは40%ものシェアを持つ。それらがすべて同じ顔だったら、それこそ景観問題になる。
一方、シェア4%のヨーロッパでは、トヨタはキーンルックと呼ばれるフロントフェイスの統一化を進めている。あるべきデザインは、そうした市場要件によっても異なってくるのだ。
もちろん、何かすべてのモデルに通じる背骨のようなものがあれば、とは筆者も思う。けれども、それがBMWのキドニーグリルのようなディテールなのか、それともじんわりと感じられる出汁みたいなものなのかは、思案しどころである。
個人的には初代パンダやゴルフ1~3は大好きだし、ポルシェ911には常に特別な思いを抱き続けている。「W124」だって大好物。その統一感、オーセンティックさに魅了されているのだ。
けれど世界は刻々と変化を続けており、自動車を取り巻くものだって、それこそ街並み、人々の志向、ブランドのあり方等々、あらゆる面で変わっている。そんな中でこれら名車たちを未だに基軸とし続けるデザイン論を金科玉条のごとく掲げ続けるのは、それこそ時代に取り残されかねないのではないだろうか?
想像してみてほしい。1920~30年代には自動車デザインの正義、あるべき姿とは、馬車のようなキャビンの前端にエンジンコンパートメントがあり、独立したフェンダーの内側に自転車用のような細いタイヤが備わっているものだったのだ。それがたとえ美しさは不変であるにせよ、今の時代に相応しい自動車の姿だとは、誰も思わないだろう。
個人的には、「トヨタ シエンタ」の方が、よほどしっくり来ると感じる。独特のスタイリングの向こうに、しっかり今の時代に求められる機能的な要求が満たされているのを感じるからである。
世界が変わり、人が変わり、自動車が変わってきた中での“今の”自動車デザイン。それこそ電動化の潮流が大きくなり、自動運転の時代を迎える中で、そうしたものこそ見てみたいし、デザインを巡る議論も、そこを指向するべきではないか。長くなったが、そんなことを考える昨今なのだ。
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