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タイ人は「やっぱりEVじゃない」と気がついた!? 日本車と中国車が激しく争うタイの自動車市場のいま

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タイ人は「やっぱりEVじゃない」と気がついた!? 日本車と中国車が激しく争うタイの自動車市場のいま

この記事をまとめると

■タイの自動車ショーは会期中の予約台数によって成否が判断される

BEVの大幅値下げによる乱売で中国メーカー車に対するユーザー離れの恐れがあるタイ! 遅いと言われる日本のBEV普及スピードこそが健全な姿

■自動車ローンの審査が厳格になったタイでの新車販売は苦戦傾向にある

■日本メーカーも「バーツ高」によりタイ国内の一部工場閉鎖を余儀なくされている

タイにおける自動車トレンドに変化の兆し

2024年11月29日から12月10日の会期で「タイ国際モーターエキスポ2024(バンコクモーターエキスポ)」がタイの首都バンコク近郊にて開催された。毎年開催されるこのショーは、同じく毎年春に開催される、「バンコク国際モーターショー」と並び、「タイ二大自動車ショー」として日本では広く認知されている。

主催者発表によると、来場者総数は142万6044人(2023年開催は150万3030人/2023年比7万6986人減)、会期中の予約台数(正式契約には至っていない仮受注?)は四輪車と二輪車を合わせて6万2495台(2023年開催は6万621台/2023年比1874台増)となっている。来場者数は減少しているものの、会期中の予約台数は前年開催比で増えているため、数値を見る限りでは2024年のバンコクモーターエキスポは成功を収めたといえよう。

タイの自動車ショーは完全なる「トレードショー」といえるタイプのもので、主催者としても会期中に「何台クルマが売れたか」が最大のフォーカスポイントであり、新車が売れるショーだからこそ、多くの完成車メーカーが出展するのである。

来場者数に関しては、出展業者(メーカー系ディーラーなど)が自社製品の販売促進のために購入見込み客やお得意さまに無料招待券を配ることもあり、世界的に「オワコン」とはいわれる自動車ショーであるにもかかわらず、毎回活況を呈している。来場者数が前年比で減少していることについて、チケットを自費で購入して会場を訪れる人が減ったのか、それとも出展者(メーカー系新車ディーラー)などが購入見込み客を呼び込めていないのかははっきりしていないのでなんともいえないが、会期中の予約台数が前年比で増えていることからも、一般来場者の減少傾向が目立っていると見ることもできる。

バンコクモーターエキスポ2024の様子を見る限りでは、タイの自動車業界はまだまだ元気なようにも見えるが、会場を一歩出ると暗雲垂れ込める深刻な状況となっている。2023暦年締めでのタイにおける年間新車販売台数は77万5780台(2022年比8.7%減)であったが、地元メディアの報道では、ある完成車メーカー関係者の話として「2024暦年締めでの年間新車販売台数は60万台を割り込む」とのコメントを紹介していた。

筆者は2023年開催のバンコクモーターエキスポと2024年春開催のバンコクモーターショーを訪れたのだが、その当時すでにタイ国内の新車販売が苦戦傾向にあるとの話を聞いていた。タイでは新車購入においてはローンを組んで購入することがほとんどとなっているのだが、このローン審査が厳格化され、都市部の所得がそれほど高くない層の新車購入をとくに直撃したという。ローン審査が厳格化した理由としては、ある意味「バブル経済」のようなものも一因のようなのだが、地元メディアでは各家庭が抱える債務が際立って増えていることが背景にあるとしていた。

この流れもあり、都市部ではコンパクトモデルの販売苦戦が顕著となっているようである。

そして、さらに新車販売苦戦傾向を決定づけたのが2024年10月にタイ北部で発生した大洪水である。タイ北部はピックアップトラックがよく売れる地域でもあるのだが、洪水被害によりこれらのピックアップユーザーのオートローン支払い滞納が多発、つまり焦げ付きが問題化した。さらに、ピックアップトラックのメイン需要地域でもある北部が甚大な被災地となったことで、タイにおける新車販売でボリュームのあるピックアップトラックの急激な販売減少が顕在化したのだ。

タイ国内における2024年1月から11月の累計新車販売台数でみると、販売トップのトヨタハイラックスが7万1464台(前年比21.15%減)、2位いすゞD-MAXが5万6146台(前年比43.77%減)、3位フォード・レンジャーが1万1735台(前年比44.42%減)、4位三菱トライトンが5913台(前年比47.41%)となっている。「ハイラックスの減少幅がほかの3車の半分程度となっていますが、これは派生車の『チャンプ』が2024年の販売台数に合算されたことが影響しているといえます。それまではD-MAXとほぼ横並びでした」とは現地事情通。

かつてはハイラックスとD-MAXで熾烈なピックアップトラックの販売首位争いを進めていたのだが、ここへきて販売台数に差が出ているのは、何もハイラックスが『チャンプ』を販売台数で合算させているからだけではないとは前出事情通。「トヨタは10万バーツ(約46.2万円)程度の大幅値引きを行っているのに対し、いすゞがほぼ値引きゼロで販売を続けていることも販売台数差を招いているといえるでしょう」。

タイでもアルヴェルでウハウハなトヨタ

新車購入に際して、タイではオートローンを組むのが一般的と前述したが、そうなると支払い途中での乗り換え(下取り査定額などで残債処理を行う)も頻繁になるので、各モデルの再販価値というものがタイでは重視されている。

「いすゞの現地法人などでは、再販価値の維持のために値引きゼロでの販売を現状でも貫いているようです。『クルマはお客さまの大切な資産』という意識が強いようです。いすゞのメイン商品であるD-MAXのメイン販売地域ともいえる地方部のお客にはそのようなポリシーが支持されて成功し、絶大な信頼を得ているからこそ、タイではいすゞが強みを見せているのです。ただし、大量の在庫を抱えるなか、新エンジンを搭載した新型車を発表しております。このような状況変化は今後の売り方に変化をもたらすかもしれません」(現地事情通)。

話をバンコクモーターエキスポ2024に戻すと、会期中の出展ブランド別の予約台数の推移をみると、トップはトヨタの8297台となり、以下2位BYD6917台、3位ホンダ5081台、4位AION(広州汽車系BEVブランド)3668台、5位MG(上海汽車系)3311台、6位ディーパル(長安汽車系)2756台、7位三菱2609台、8位日産2219台、9位GWM(長城汽車)2060台、10位ネタ2016台となっている。

トップ10内に中国系ブランドが6つも入っている。タイでは中国系といってもBEVばかりではなく、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、純粋なICE(内燃機関)車もラインアップしているのだが、多くのブランドではBEVが販売の中心だ。タイにおいて、中国メーカー同士でBEVの乱売が顕著になっていることは、日本でもネットニュースなどでよく目にするようになった。

現地事情通は、「タイの自動車ユーザーもようやくBEVという幻想から目が覚めた」と表現するように、洪水被害などを見て「タイでBEVはやはり無理がある」と消費者が気づきはじめたなどともいわれている。しかし、「BEV=中国車」とほぼほぼいい切れるタイでは、相変わらずBEVの需要は旺盛のように見える。

これは、「政府からの補助金や各種優遇措置の『賜物』であり、補助金が段階的に引き下げられる今後の動向は見渡せません。タイ国内生産の規定台数を確保する意味でもBEVは乱売傾向となっていますが、この国内生産規定台数が、かつて中国生産モデルを輸入販売していたときの台数の2倍にまで引き上げられますので、乱売も限界があるように思えます」(現地事情通)。

「タイでは中国メーカーに日本メーカーが押され気味」という報道も日本では目にすることがあるが、この点については、「あくまで私見となりますが、中国メーカー車に翻弄されているのはホンダやマツダではないかと考えています。ホンダについてはタイでのラインアップがタイ人に対しては地味すぎるように見えます。マツダは変化に乏しく、消費者の間で飽きがきているように見えます」(現地事情通)。

日本国内同様にアルファードもガンガン売れるなど、高収益車種の販売も堅調なトヨタはタイでも安定感を見せている。トヨタが得意のHEVに対しては、タイ国家電気自動車政策委員会により、二酸化炭素排出量が1km当たり100グラム未満の場合は6%、二酸化炭素排出量が1km当たり101~120グラムの場合は9%、物品税率を引き下げるという優遇措置が2026年から2032年まで講じられている。

このような優遇措置もあり、HEVではとくに世界的にその性能の高さが認知されているトヨタは、中国系メーカーをほぼ寄せつけないままタイでのトップシェアを維持しているともいえよう。

ただしタイ国家電気自動車政策委員会は、2024年12月下旬にはHEVに加えマイルドHEVにも優遇措置を講じることを発表している(物品税率の引き下げはHEVよりも少ない)。

現地報道によると、いまのタイにおける新車販売の低迷傾向は緩やかに回復してとのことだが、本格的な回復までには時間を要することになるだろうとも付け加えられていた。

販売だけではなく車両生産拠点としても東南アジアの要となるタイ。国内販売の低迷だけではなく、完成車輸出でも問題を抱えるタイ工業連盟自動車部会は、2024通年の自動車生産台数目標値の引き下げを発表し、国内向け・海外向けを合わせた目標値を170万台から150万台に下方修正している。

タイの現地通貨バーツの「バーツ高」によりタイからの完成車輸出にも悪影響が起きており、タイ工場の閉鎖やタイでの生産見直しなどを一部日本メーカーは余儀なくされている。

「所詮は海の向こうの話」と思うなかれ。その影響は現状ではなんともいえないが、日本はグローバル経済の渦中にいるだけに、「対岸の火事」ではなく、思いもよらないところでその余波を受けるかもしれない。

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みんなのコメント

106件
  • ckpz
    都市部ならいざ知らず、アメリカみたいにピックアップトラックが人気なるお国柄。
    当然こうなりますよ。
  • cb_********
    欧州も反トヨタでEVって流れだったけど、漸くそれが間違いだって気付いてEV一辺倒を改めたしな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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