■MT車が意外と人気!? マツダとトヨタが設定拡大する理由は?
いま、日本では新車のトランスミッションはAT(オートマチック・トランスミッション)が主流です。しかし30年ほど前までは、トランスミッションはMT(マニュアル・トランスミッション)が主流でした。
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ATの高性能化や市街地での燃費に優れるCVTの登場などもあり、運転操作が複雑なMTはどんどん少数派になったのです。そのため昨今では、日本の乗用車販売におけるMT比率は2%弱だといいます。
そのような背景もあってMTが選べる車種は減り続けていますが、なかにはMTを選択できる車種を多く用意しているメーカーもあります。それはマツダです。
マツダは「CX-8」以外のすべての自社生産車種にMTを展開し、「マツダ2」「マツダ3」「マツダ6」「CX-3」「CX-30」「CX-5」そして「ロードスター」をラインナップ。国内ではスズキに次いで、MT設定モデルを多く用意しています。
また、トヨタもMTをいくつかの車種に展開し、コンパクトカーの「ヤリス」やスポーツカーの「86」をはじめ、セダンやワゴンの「カローラ」にまで用意しています。また「C-HR」は昨年秋のマイナーチェンジで、従来は用意のなかったMTモデルを追加するなど、むしろMT展開を拡大している雰囲気すら感じます。
いっぽうで、MTの展開が減っている(もともと少ないのではなく明らかに減少傾向にある)メーカーの代表はスバルでしょう。同社は数年前まで、MTを幅広く展開していました。しかし2020年3月末現在でMTが選べるのはスポーツカーの「BRZ」のみ。
MTを残しているメーカーとMTを減らしているメーカーの違いは、どこにあるのでしょうか。
まずは、マツダとトヨタの新車販売におけるMT構成比を車種別に確認しましょう。マツダは、2019年12月から2020年2月にかけての3か月の統計を見ると、マツダ2が5%、マツダ3が8%、マツダ6が9%、、CX-3が5%、CX-30が3%、CX-5が3%、ロードスターが69%となり、マツダの全車種におけるMT比率は約6%だといいます。
スポーツカーのロードスターを購入する人の約7割がMTを選ぶのは納得ですが、マツダ6購入者の約1割がMTを選ぶというのは意外です。
日本においてラージサイズのステーションワゴンでは、マツダ6のほかにMTを選べる車種がないことも影響していると考えられます。
マツダ広報部は、「運転の楽しさを期待してマツダ車を購入いただく人が多く、スポーツカー以外のモデルでもMT車を楽しみたいという声も頂戴します。それに応えるべく、2012年から始まった新世代商品群では、CX-8を除く全てのモデルでMT車を設定しております」と説明します。
トヨタはどうでしょう。MTを設定する代表車種の販売比率は、86が63%、GRコペンが32%、カローラスポーツ(ガソリン車)が22%、C-HR(ガソリン車)が3%となります。
C-HRが少ないのは、当初はCVTのみでMTは途中から追加されたという事情があると考えていいでしょう。一方で、カローラスポーツのガソリン車では、2割以上もの購入者がMTを選んでいることに驚きを感じる人も多いのではないでしょうか。
当初はMTの設定がなく、途中から追加されたC-HRに関して、トヨタ広報部は、「マニュアル車を望んでいるお客さまの声があり、このクルマの特徴を踏まえ、より多くの人にクルマを楽しむことを提供したいと考えて設定しました」と市場からのニーズを反映しての設定であることを強調します。
また、1.2リッターターボエンジンをMT専用としたカローラセダンやツーリング(ワゴン)に関しては、「お客様からの要望にお応えしたいということと、マニュアルならではの走りの楽しさ、操る楽しさを味わっていただきたい」とコメント。“ぜひ味わってほしい”というメーカー側の願いも込められているようです。
■なぜ? MT車のイメージが強かったスバルは減少傾向
MT車をラインナップする事情は、軽自動車などは少し異なるようです。たとえばスズキ「ワゴンR」や「アルト」は、現行世代も含めて歴代モデルいずれもMTが用意されています。
その理由について開発者に尋ねたところ、「年配の人でMTしか運転できないというニーズに応えるため」と教えてくれました。
ちなみにワゴンRは現行モデルと先代モデルはデビュー時にMTの設定がなく、フルモデルチェンジから数か月遅れてMTモデルが追加されています。これについては「開発のタイミングの違い」とされています。
いずれも前提となるのは、日本でもMTモデルを販売する車種は、国内専売の軽自動車を除けば、海外向けにもMTモデルが設定されていることでしょう。メカニズムを共用することで、絶対的なMT販売台数が少ない日本にも用意できるというわけです。
マツダやトヨタとは逆に、MTが減っているのがスバルです。かつて同社はMTを設定するイメージが強かったのですが、2019年12月に「WRX STI」のオーダーが終了した現在、新車でMTを選べるのは、トヨタ 86の姉妹車である「BRZ」だけになりました。スバルにはどのような事情があるのでしょうか。
スバルがMTを減らす理由は、同社の「アイサイト」が大きく関係しているようです。
「海外ではMTを展開しているモデルもありますし、日本でも求める声があるのは理解しています。しかし現在、日本において、多くのユーザーに支持を頂いているのはアイサイト(先進安全運転支援システム)であり、そちらを優先したバリエーション展開としています。将来的にもアイサイトを搭載したMT車が設定されない、とまでは言い切れませんが」とスバル広報部は説明します。
スバルも海外の一部地域では、BRZ以外のモデルにもMTを設定しています。しかしそれらのMT車にはアイサイトが搭載されていません。
自動ブレーキ機能に関しては、MTに組み合わせることも理論的には可能ですが、現行世代のアイサイトはACCの渋滞停止保持機能を組み込むことが基本であり、スバルがスタンダートと考えるその機能を、停止時にドライバー自身がクラッチ操作をする必要があるMTには組み込むことができません。そこが大きなネックとなっていると思われます。
ちなみに、マツダ CX-5などのACCでは、AT車の場合は渋滞時停止保持機能を備えていますが、MT車では車速が30km/hになると作動キャンセルになるなど、トランスミッションによる制御の違いがあります。
理想とする運転支援装備を全車に組み込むのか、それとも、メカニズム上、組み込むことができないMT車は割り切って一部機能を省略するかのといったところが、メーカーの考え方の違いといえそうです。
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みんなのコメント
30年前の1990年時点の販売台数統計でもAT:MTは7:3でATが既に多数派。
ちゃんと調べてから記事書いてほしい。