日産が満を持して投入した新型ノートe-POWER。2020年12月23日に発売され、発売1ヵ月後の受注台数は2万台を超え、幸先のいいスタートを切った。
最新の2021年1月の新型ノートの販売データを見ると、7532台を販売し、総合6位。一方、同クラスのライバルとなるヤリスだが、1万8516台で総合1位。しかし、自販連のデータではヤリス(ハッチバック)とヤリスクロスを合わせたものとなる。この販売台数からヤリスクロスを抜いたヤリス単体の販売台数では9166台。フィット5889台で、総合10位だった。
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新型ノートを狙っているユーザーは、ヤリスHVとフィットe:HEVと、どう違うのか、気になっているのではないだろうか?
そこで、動力性能、居住性、乗り心地、内装の質感、価格の割安感など、項目別に、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底比較した。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】ノート ヤリス フィット……最新コンパクト3台をじっくり見る
幸先のいいスタートを切ったノートの販売
2020年12月23日に発売された新型ノートはe-POWER専用車として登場した
2020年12月23日に発売された日産のコンパクトカー、ノートは売れ行きが好調だ。12月の発売から1ヵ月で2万台を受注した。この台数は月販目標(8000台)の2.5倍に相当する。
現行ノートの発売は12月23日だが、価格などを明らかにする発表は11月24日であった。したがって実質的には2ヵ月にわたり受注をしていた。しかも先代ノートは2012年に発売され(ハイブリッドのe-POWERは2016年に追加)、設計が古くなっていた。新型の登場を待っていたユーザーも多く、2万台の受注は驚くほど多くはない。
ちなみに先代ノートは、2012年の発売後、2週間で2万2000台を受注した。2016年にe-POWERを加えた時も、フルモデルチェンジではなかったのに、発売後3週間で2万台に達している。
先代型の実績も振り返ると、新型の2万台も納得できる。また2020年にはコンパクトカーのヤリスも発売されたが、発売後1か月の受注は3万7000台であった。
そしてノートが堅調に受注した背景には、最近の日産の売れ筋車種が大幅に減った影響もある。ノート+セレナ+デイズ+ルークスの販売台数を合計すると、2020年に国内で売られた日産車の64%を占める。今ではスカイラインなどのセダンは売れ行きが大幅に落ち込み、ティアナは終了した。
ノートのパワートレインは1.2Lエンジン+e-POWER。価格は202万9500円~
さらにかつて人気車だったエルグランドやマーチは、発売後10年を経過してもフルモデルチェンジされていない。エクストレイルは海外では姉妹車の新型ローグが発売されたのに、日本では安全装備などが劣る旧型を売っている。
このような具合だから、多くの日産車が販売を低迷させ、一部の車種だけが国内販売を支えている。その基幹車種がノートだから、販売力も集中した。
数少ない売れ筋車種となれば、新型も力の入った開発をするのは当然で、新型ノートはルノー・ルーテシアや海外で売られる現行ジュークとプラットフォームを共通化した。その上で国内専売車種として造り込み、内外装は上質でシートの座り心地は快適だ。
注意したいのはグレード構成で、新型ノートには純エンジン車が用意されずe-POWERのみだ。開発者は「低価格(150万~160万円)のNAエンジンがあれば、ここまで質感を高めるのはコスト的に困難だった。e-POWERのみだから、上質に仕上げられた」という。
ただしここにノートの難しさがある。e-POWERのみだから価格も全車が200万円を超えてしまう。開発者は「先代ノートもe-POWERの比率が75%前後に達していた」というが、逆にいえば25%はNAエンジン車が売れていた。この乗り替え需要は行き場を失う。マーチでは後席が狭く、質感も下がるから、ノートの代わりにならない。
販売店では「先代ノートのNAエンジン車を使っていた法人などのお客様は、軽自動車のデイズやルークスに乗り替えることも多い」という。先代ノートに相当する実用的で割安なコンパクトカーが存在しないからだ。
新型ノートのコクピット。メーターは7インチのカラーディスプレイを採用
純エンジン車を用意しないノートは、果たしてヤリスやフィットのライバル車なのか。ヤリスの場合、1.5L直列3気筒エンジンに加えて価格の安い1Lも用意するから、NAエンジンの販売比率が54%に達する。
フィットはe:HEV(ハイブリッド)比率が高いが、それでもNAエンジンが約30%を占める。ハイブリッド専用車という意味では、ノートのライバル車はアクアという見方も成り立つ。
しかしヤリスとフィットをハイブリッドに限れば、ノートと共通点が多い。全長が4m前後の5ナンバー車で、全高はいずれも立体駐車場を使いやすい1550mm以下だ。ライバル車と考えて良いため、この3車を機能別に比べたい。
ノートをヤリス、フィットと徹底比較
フィットのパワートレインは1.3Lガソリンエンジンと1.5Lエンジン+2モーターのハイブリッド。写真はハイブリッドの売れ筋グレード、e:HEVホーム
■視界と取りまわし性
1位:フィット
2位:ヤリス
3位:ノート
※対象車はすべてハイブリッド
街中を中心に使われるコンパクトカーにとって大切な視界と取りまわし性は、フィットが最も優れている。全長はヤリスよりも長いが、フィットは水平基調のボディでフロントピラー(柱)にも工夫を凝らし、前後左右ともに視界が優れているからだ。2位はボディの短いヤリス、3位は全長が4mを超えるノートだが、2/3位は僅差になる。後方視界はヤリスよりもノートが勝るからだ。
水平基調に仕立てられたフィットのコクピット。フロントピラーを従来の半分の厚さに抑え、視界の良さを確保した
■内装の質感
1位:ノート
2位:フィット
3位:ヤリス
内装の質感はノートが最も優れている。メーターは7インチのカラーディスプレイで、質を高めると同時に視認性も向上させた。質感の2位はフィット、3位はヤリスだがこの2車も僅差だ。フィットの2本スポークのステアリングなどは好みが分かれる。
■前後席の居住性
1位:フィット
2位:ノート
3位:ヤリス
新型フィットの後席に身長170cmの筆者が座ると膝先空間は握りコブシ2つ半、頭上空間にも握りコブシ2つ弱入る
前後席の居住性はフィットが圧倒的に1位だ。特に差が付くのは後席の広さで、身長170cmの大人4名が乗車した場合、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半に達する。この余裕はミドルサイズセダンと同等だ。ウインドウの面積が広いので開放感も味わえる。
2位はノートで、後席の足元空間を同様の方法で測ると握りコブシ2つ分になる。シートの座り心地も柔軟でリラックスできる。ヤリスは握りコブシ1つ少々と狭い。フィットとノートはファミリーで使えるが、ヤリスは1~2名の乗車に適する。
■荷室の広さと使い勝手
1位:フィット
2位:ノート
3位:ヤリス
フィット最大の特徴ともいえるのがコレ。後席をチップアップすると、ベビーカーや観葉植物など長尺物も積むことができる
荷室の広さと使い勝手もフィットが1位だ。燃料タンクを前席の下に搭載して荷室の床を低く抑えた。リアゲートの開口下端部も3車の中で最も低いため、荷物を高い位置まで持ち上げる必要はない。
荷室の横幅はノートに余裕があるが、奥行はフィットが長い。またフィットなら後席を床面へ落とし込むように格納できるから、2名乗車時には大容量の空間を得られる。
後席の座面を持ち上げて、車内の中央に背の高い荷物を積むことも可能だ。荷室の2位はノートで、3位はヤリスだ。ヤリスは天井を後ろに向けて下降させ、リアゲートも寝かせたから、荷室の高さも低めになった。
走りはノートが圧倒!?
滑らかな加速、乗り心地、静粛性の高さ……どれをとってもノートに軍配が上がる
ノート、ヤリス、フィットの主要諸元比較表
■動力性能
1位:ノート
2位:ヤリス
3位:フィット
次は走りを比べる。動力性能は、加速の滑らかさや静粛性を含めてノートが1位だ。モーターが駆動するから瞬発力が強く、新型ではアクセル操作と発電を行うエンジン回転を同期させて違和感も抑えた。ハイブリッドの制御が先代型に比べると洗練されている。
2位はヤリス。アクセルペダルを踏み込むと、直列3気筒エンジン特有のノイズが少々耳障りだ。それでも車両重量が1050~1090kgに収まるから、加速に軽快感が伴う。3位は僅差でフィット。滑らかで静かだが、軽快感はいまひとつだ。
■走行安定性
1位:ノート
2位:フィット
3位:ヤリス
ハイブリッド車も含めて車重1100kgを下回るヤリスは、キビキビとした軽快な走りが特徴だ
走行安定性はノートが最も優れる。乗り心地を重視したから、カーブではボディが相応に傾くが、挙動の変化が穏やかで唐突感もない。従って走行安定性を損ないにくい。カーブを曲がっている時に、故意にアクセルペダルを緩めることで、車両を内側へ向ける操作もしやすい。この挙動は同じプラットフォームを使うルノー・ルーテシアに似ている。
2位はフィットだ。ノートに比べると峠道などでは少々曲がりにくいが、後輪の接地性が高く不安定な状態には陥りにくい。さまざまなユーザーが安心して運転できる。3位は僅差でヤリス。軽快に曲がって楽しいが、落ち着いた印象には少し欠ける。
■乗り心地とノイズ
1位:ノート
2位:フィット
3位:ヤリス
乗り心地はノートが一番だ。前述の通りカーブではボディが少し大きめに傾き、時速40km以下では路上の細かなデコボコを伝えやすいが、コンパクトカーでは足まわりが柔軟に伸縮する。速度が時速50km以上に高まると快適になる。
2位はフィット。少し硬めだがコンパクトカーでは快適な部類だ。ただし15インチタイヤは硬めで、特にノーマルエンジンのベーシックは指定空気圧も高く乗り心地が粗い。
逆にクロスターは16インチで扁平率も60%だから最も快適だ。つまりフィットは、タイヤによって乗り心地が大きく変わる。3位のヤリスも同様で、街中ではコツコツとした硬さを伝えやすい。
ヤリスのインテリア。ノートやフィットよりも比較的オーソドックスな印象
■安全装備の充実度
1位:ヤリス
2位:ノート
3位:フィット
安全装備の充実度はヤリスが最も高い。衝突被害軽減ブレーキは、右左折時の直進車や歩行者、さらに自転車も検知する。2位はノート。後方の並走車両を検知して知らせたり、後退時に左右方向から近付く車両も知らせる。3位はフィットで、衝突被害軽減ブレーキは右左折にも対応したが、ウェブサイトなどではアピールされていない。
ヤリスの燃費には到底追いつけない!?
ヤリス ハイブリッドXのWLTCモード燃費は36.0km/Lと、乗用車の中ではトップクラスを誇る。フィットe:HEVホームの燃費が28.8km/L、ノートは28.4km/L
■燃費性能&経済性
1位:ヤリス
2位:フィット
3位:ノート
燃費性能はヤリスが1位だ。2WDのWLTCモード燃費は35.4~36km/Lだから、国産乗用車の中で最も優れている。2位は売れ筋グレードが28.8km/Lのフィット、3位は28.4km/Lのノートになる。実際に計測した実用燃費も上記の順番だ。
■価格の割安感
1位:フィット
2位:ヤリス
3位:ノート
価格設定では、最も割安なのはフィットだ。売れ筋のe:HEVホームは、車内や荷室が広く、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能を装着して206万8000円に収まる。2位はヤリスで、ハイブリッドGは運転支援機能も含めて213万円だ。
3位はノート。売れ筋になるXの価格は218万6800円だが、運転支援機能のプロパイロットやLEDヘッドランプが装着されない。これらはすべて複数の装備を組み合わせるセットオプションだから総額は270万6000円に達する。
ノートはオプションが割高だから、プロパイロットは人気の装備なのに、装着比率が41%と低い。今後はニーズの高い装備を厳選した特別仕様車などを用意する必要がある。
総合評価ではフィットが1位、2位はノート、3位はヤリス
★総合評価
1位:フィット
2位:ノート
3位:ヤリス
以上を総合的に比較すると、機能のバランスが最も優れているのはフィットで、ファミリー層も含めて幅広いユーザーに適する。ヤリスは後席が狭いからファミリーには不向きだが、パーソナルユーザーにはピッタリだ。軽快な運転感覚も楽しい。
そしてノートは、実用的にはフィットとヤリスの中間で、内装と走りの質は最も高めた。ノーマルエンジンを選べないのは残念だが、ハイブリッドが欲しいユーザーには、価格が割高なものの、クルマ好きの人達も含めて幅広く推奨できる。
実際に購入する時は、この3車種を乗り比べると良いだろう。仮に目当ての車種がノートだとして、フィットやヤリスと比べると機能の優劣が良く分かり、購入すべき車種を正確に判断できる。
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