2018年9月20日より、ドイツ・ハノーファーで開催されるIAA商用車ショーにおいて、メルセデス・ベンツの新型アクトロスが発表される。労働環境の改善、燃料コストの削減という社会的なニーズに応えるべく、「アクティブ・ドライブ・アシスト」を命名された半自動運転技術が搭載されるという新型アクトロスは、ついにドアミラー・レスを実現する。そう、日本風にいえばCMS(カメラ・モニタリング・システム)を標準装備するというのだ。
ドアミラーを薄い筐体のカメラに置き換えたほか、キャビン全体として空力性能を追求したことで高速道路の燃費は3%ほど改善したというアクトロス。それにしても、CMSの採用は、そのルックスもイメージを大きく変えることに成功している。大きなミラーがなくなり、スタイリッシュなウイング状のパーツがドア上部から飛び出しているだけの姿は、実際以上の空力性能の改善を感じさせる。
さて、ベンツとして初めてのCMSで注目なのはコクピットのデザイン、カメラの映像を映すディスプレイをどこに配置するのかが気になるところだ。ひとまずアクトロスでは15インチの縦型ディスプレイを左右のAピラー内側に置き、そこにカメラの映像を映し出すという。現時点では、どんなやり方が正しいのか断言できないが、少なくともこのレイアウトは、視線移動は従来通りで慣れ親しんだ乗り方を変えないことでドライバーの負担を増やさないことを優先したのだろう。
一方で、せっかく自由度の高いCMSを採用したのに視線の移動量が多いのはもったいないという見方もできる。ドライバーの慣れの問題もあるので、ディスプレイ位置の最適解がどこになるのかを断言できるものではないが、まったく改良の余地がないということはないだろう。トラックのコクピットではスペース的な余裕もあるので、このレイアウトが可能だが、乗用車では視界の問題からAピラー付近にこれほどのディスプレイをつけてしまうのは考えづらい。
もっとも乗用車のミラーサイズを考えれば、もっと小型のディスプレイで事足りるわけで、ベンツがアクトロスで示したCMSは、あくまでもトラックにおけるひとつの答えと捉えるべきなのも事実。そして、ここをスタートに、どのような解が生まれてくるのかを考えてみるのも面白そうだ。たとえば乗用車であれば、超ワイドなルームミラー(モニター)として、そこに左右と中央の映像を合成して映すことで情報の漏れが少なくなるといったアイデアを考えてみたが、いかがだろうか。
文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト