普及しないのはタクシー業界の陰謀? ライドシェア熱望論で考えるべき本当の〇と×
掲載 carview! 11
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街の中心部は別として、ちょっと繁華街を外れるとなかなか捕まらないタクシー。特にインバウンドの復活もあって、観光地などではタクシー不足が加速している。
<写真:アフロ>
そんななか、事態を一気に解決する方策として、にわかに注目を集めているのがライドシェアの解禁だ。海外では、今や当然の光景となりつつあるライドシェアだが、日本で暮らしているとどんな仕組みなのかわからない部分があるのも事実。
そこで、今回はライドシェアの仕組みをおさらいしたうえで、タクシーと比べた場合のメリット、デメリットをまとめてみた。
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まず、ライドシェアの仕組みについて。これは都市部などで爆発的に増えているウーバーイーツなどのフードデリバリーサービスと基本的に同じ。
<写真:アフロ>
つまり、クルマを所有するオーナーがウーバーなどのプラットフォーマー企業にドライバーとして登録し、あとは同じプラットフォーマーに登録したユーザーが出発地と目的地を設定してクルマを呼ぶと、近隣のドライバーが来てくれるという仕組みだ。
こうした簡単なシステムゆえに海外では爆発的に広がりを見せ、今や国によっては従来のタクシーを使う人の方が少なくなっている程だ。
便利なシステムにもかかわらず、これまで日本でサービスが展開されていなかった大きな理由のひとつは、道路運送法という法律によって自家用車を使った有償旅客運送を、いわゆる違法な“白タク行為”として禁止しているから。
こうした法規制の維持を強く求めているのがタクシー業界だ。例外的に、過疎地などでは厳格な要件の元でライドシェアが実施されているが、これも地域限定の取り組みに過ぎない。
そんなわけで、海外では隆盛を極める米国ウーバーや中国DiDiなども、ここ日本ではタクシーを呼び出すサービスとしてしか機能していないのだ。
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こう書くと、いかにも解禁が正義、規制は悪と思えてしまうが、現実はそう単純ではない。そこでここからは、タクシーとライドシェアのメリット、デメリットを項目ごとに比べてみたい。
<写真:アフロ>
【安全性:タクシー:○、ライドシェア:△】
まず、ユーザーとして最も気になる安全性について。実はこの部分が、タクシー業界がライドシェアの解禁に強く反対している最も大きな根拠ともなっている。
現状2種免許を必要とするタクシードライバーには誰でもがすぐなれるわけではなく、専門の免許の取得が必須だ。さらにクルマ自体も、営業用自動車には自家用車より頻繁な点検が必要とされている。
これらを根拠に、タクシー業界は高い安全性が担保されたサービスとして主張しているのだ。
たしかに、2種免許は運転歴3年以上などといった通常の免許より厳しい制約があり、旅客運送用の自動車(緑ナンバー車)は車検の有効期間が1年と、自家用自動車より短く、車両メンテナンスにおいて安全性は折り紙付きと言えるだろう。
しかも、タクシー乗務員は乗車前の呼気点検が法的に義務付けられているため、飲酒運転の心配もほとんどない。
対して、ライドシェアでは基本的にこうした制約はないから、通常の免許でドライバーに登録できるし、クルマも普通に車検期間は2年。もちろん呼気点検などもない。
極論すれば、免許取り立て、もしくはペーパードライバーが、ボロボロの自家用車を使って(場合によっては飲酒運転で)運用することも仕組み上は、可能になってしまう。
もちろん、このあたりは登録ドライバーの要件を厳しくするとか、ユーザーの評価が一定レベルを下回ると登録抹消されるなどのシステムである程度は防げるだろうが、ドライバーのすそ野が広がることで性犯罪などの可能性も指摘されている。
事故が起きたときの補償や保険も万全とは言えない。タクシーなら乗車中の事故でケガなどを追った場合、タクシー会社に慰謝料が請求できるが、現状はライドシェア企業の対応もまちまちで、業界の法整備や保険会社の対応も整っているとは言い難い。
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<写真:アフロ>
【乗りやすさ:タクシー:△、ライドシェア:○】
冒頭書いたように、郊外や観光地ではタクシーが捕まえにくい状況となっている。要因はインバウンド需要の急増のほか、賃金水準や労働条件などの面から、若年層の就職希望者が減少している傾向にあり、結果的にドライバーが高齢化し、慢性的な人手不足になっていることがある。
また、こうした問題以外にも、従来から地方都市などでは“流し”のタクシーが少なく、タクシー会社に電話して来てもらうというパターンが多く、利便性が低いという実態がある。
最近では、地方都市でも配車アプリの導入が進みつつあるが、それもいざ使おうとすると、手数料を取られることを嫌ってか、ほとんど空車が見つからないというパターンもある。また、外国語が使えるドライバーも少なく、インバウンド需要に対応できないという課題もある(これは海外も同じだが)。
一方、ライドシェアは誰でも簡単にドライバーとして登録できるので、副業解禁の時流もあり、人手不足とは無縁の世界だ。
システム的にもアプリで近隣のドライバーを呼び出すことが前提なので、スマホさえあればどこでも使えて待ち時間も相対的に短い。
しかも、ドライバーの位置がリアルタイムで把握できるので、「あと何分で来るか」というイライラ感も少なくて済むのだ。
さらに、ユーザーとドライバーとのやり取りはアプリ上のメッセージなので、翻訳AIなどを組み込めば外国人も気兼ねなく利用できる。加えて、最初にアプリで出発地と目的地を入力すると料金が表示されるので、ぼったくりの心配もない(日本では元々少ないものの、この点が発展途上国でライドシェアが流行る理由)。
ただ、海外で利用してみると、やはり繁華街にドライバーが集まり、郊外では少ない傾向はあるので、ライドシェアでもドライバーの分散を促す仕組みなどを工夫する必要はあるだろう。
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<写真:アフロ>
【過疎化への対応 タクシー:×、ライドシェア:○】
実はライドシェア解禁の議論で一番重要と思われるのがこの点。なかでも、高齢化が進み、日常の買い物や病院通いもクルマがないとどうにもならない中山間地では、集落の存続にも関わる課題だ。
特に、最近では高齢ドライバーの事故が多く報じられ、免許返納の必要性が訴えられているなど、一刻の猶予もない。
もちろん、そうした地域でもタクシーがすぐ来てくれるなら話は別だが、人口が希薄で平均1日1~2件の輸送では商売として成立せず、遠く離れた街から迎車を呼ぶのでは運賃がバカにならない。
また、タクシー運賃はドライバーがそれだけで生計を維持できる水準でないとならないので、過疎化対応とはいえ、むやみに引き下げることはできないし、運賃補助を出すとしてもコストがかさむ。
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そうしたなかで、ライドシェアが解禁されれば、若い住民がドライバーとして登録し、仕事の合間に高齢者を乗せるという仕組みが成り立つだろう。
<写真:アフロ>
周辺に若い人がいないという危機的集落もあるだろうが、行政が補助金を出すといった仕組みを作れば少々遠い場所でも登録する人はいるだろう。また、副業の扱いならタクシーより安い運賃も設定できるだろうから、この点でもメリットがある。
現状でもいくつかの自治体でライドシェアは例外的に認められているが、ウーバーなど既存のシステムに乗ることができれば、劇的な導入拡大も期待できるだろう。
以上のように、タクシーとライドシェアには一長一短があるというのが実態。ひと言で全面解禁、あるいは禁止と正解が出ないところは難しいところが、まず免許や車両などに安全性を高めるための基準を設けたうえで、タクシーが簡単に捕まらない地域でライドシェアを解禁してみるのもいいかもしれない。
いずれにせよライドシェア解禁は国の在り方にも重大な論点だから、幅広く国民を巻き込んだ議論の展開を期待したいところだ。
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<終わり>
写真提供:アフロ
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