かつて大人気だったステーションワゴンは今……。
全高次第ではステーションワゴンだってアリ!
今、セダンやハッチバックでなくSUVに乗るひとが多いように、1980年代から90年代にかけてステーションワゴンが人気を集めていた。
当初はセダンベースで、どちらかというと商用。でも90年代には、当初から乗用車ベースで開発され、ステーションワゴンゆえに人気が出た車種がいくつもあった。
いまでも、メルセデス・ベンツ「Cクラス」、BMW「3シリーズ」、アウディ「A4」、フォルクスワーゲン「パサート」、それにボルボ「V60」などは、ステーションワゴンが高い人気を誇っているのは、ご存知のとおり。
ステーションワゴンを嗜好する人が多い背景は、SUV人気とつながっていると思う。それに、SUVだと全高が高すぎて駐車場に入らないこともあるため、ステーションワゴンが選ばれる。
乗り心地も、SUVよりステーションワゴンのほうが良好って場合も少なくない。セダンに対しては、それほど分があるわけではないけれど、少なくともルーフの前後長が長いぶん、スタイリッシュともいえる。
(1)スバル「レガシィ」(初代)90年代を代表するステーションワゴンといえば、スバル・レガシィだ。登場は89年1月。かんたんに特徴をいうと、“怒濤の……”とも言いたくなる多様なモデル構成と、贅沢な作りにあった。
「水平対向エンジンとシンメトリカルAWDシステムは、ずっと守り続けていくべきスバルのヘリテージ」。
2024年5月、カーボンニュートラル時代へと向けて新世代のプラグインハイブリッドシステムを発表した際、スバルの大崎篤代表取締役社長兼CEOはそう語っていた。
スバルのヘリテージは、このレガシィも受け継いでいる。とにかく速かった。ATモデルにはアクティブトルクスプリット式、MTモデルにはビスカスLSD付きセンターデフ式と、駆動系も凝っていたし、電子制御エアサス搭載モデルも設定されていた。
ステーションワゴンにはターボの「GT」があり(セダンにはモータースポーツに興味ある人向け「RS」シリーズも)、いっぽうで、クオリティを重視した2.2リッターエンジンにエアサスの、いわゆる3ナンバーモデル「ブライトン」も設定されるといったぐあい。
さらにスポーティ志向のユーザー向けにターボの過給圧を高めるなどして高性能を追求した「ツーリングワゴンSTi」も限定発売。当時のレガシィの商品展開は、メルセデス・ベンツAMG、あるいはアウディRSと重なったものだ。
レガシィは、93年に2代目(BD型)に、98年に3代目(BF型)にモデルチェンジ。後者ではステーションワゴンが専用設計となるなど、レガシィといえばステーションワゴン、の人気が定着していた。
レガシィは、先にも触れたとおり、メカニズムに凝っていたのが大きなセリングポイントで、たとえばこのとき、ビルシュタイン(ダンパーのメーカー)という名前や、倒立型という配置を知ったなんてひとも、けっこういるのではないだろうか。
90年代のスバルというと、車両の開発にたっぷりお金をかけるぜいたくなメーカーというイメージだった。いっぽう、ボディ幅は1.7m未満に抑えられていて、今、乗ってもよさそう。
問題は当時から、燃費の悪さだった。私の記憶だと、リッターあたり5km程度の走行距離だ。この問題は現在いたるまで、スバルの水平対向エンジンにつきまとっている。熱容量が大きく(温度を上げるのに必要な熱量)暖めるのに燃料を使っているからだという。
新世代の水平対向エンジンには電気モーターを組み合わせて問題の解決をはかる、とは先の大崎社長の弁だ。
(2)日産「ステージア」(初代)日産も、90年代はステーションワゴンのラインナップを拡充させていた。80年代に若い世代に人気が高かった「サニー・カリフォルニア」に続き、「マーチ」「ウイングロード」「アベニール」「プリメーラ」「アベニール」「セフィーロ」などにステーションワゴンが設定された。
日産はステーションワゴンを若い人向きの車種と割り切っていたようで、かつてのようにセドリック/グロリアにステーションワゴンを設定することはやめてしまっていた。
ステージアは、日産のラインナップにおいて、もっともおとなっぽいステーションワゴンといえた。中身はローレルとスカイラインである。R32型スカイラインにも搭載された2.5リッター直列6気筒ターボエンジン「RB25DET」を載せた後輪駆動で、メインは4輪駆動だった。
さらにR32型スカイラインGT-Rに匹敵するスペックスのオーテックバージョン「260RS」も、このステージアには設定されていた。280ps(当時、許されたマックスパワー)のRB26DETTエンジンに、4WDのアテーサE-TS、後輪操舵のスーパーHICAS、それにブレンボのブレーキというぐあい。見た目も迫力十分だった。
初代ステージアはボディのプロポーションもよく、高性能でプレステージもあるステーションワゴンというコンセプトがうまく昇華できていたように思う。欧米でもウケそうなコンセプトだった。
ただし、高性能が欲しければスカイラインがあるし、RV(レクリエーショナルビークル)が欲しければ、ほかにも選べる。市場のニッチ(すきま)を狙いすぎたのでは、というのが、ステージアの印象だった。いいんだけれどねぇ。
(3)ボルボ「850エステート」日本のステーションワゴンブームの火付け役などと(一部で)言われるボルボの850エステート。ことの真偽はともかく、ボルボのイメージを若々しくリフレッシュした立役者として、記憶に残るモデルだ。
いまでも日本で人気の高い200シリーズに変わる新世代として850セダンが登場したのが91年。93年にボルボがエステートと呼ぶステーションワゴンが追加された。
200シリーズは後輪駆動だったが、850ではいきなり、エンジン横置きの前輪駆動へと変更。それにも驚いたが、従来「走行安定性の面で後輪駆動を採用している」と、言っていたボルボなのに、なんでいきなり前輪駆動なのか? というのも驚きだった。
エンジンは5気筒という変わった設計で、手がけたのはポルシェデザインだったという(同社はさまざまなメーカーのために技術を供与)。ボルボはなんでも70年代からこのクルマのプロジェクトに取り組んでいたとかで、850シリーズでは、レースにも積極的に参加した。
同時に、F1(ベネトンやアローズ)や世界耐久選手権(マツダやポルシェ)など、モータースポーツでの経験豊富なスコットランド出身のエンジニアリングディレクター、トム・ウォーキンショウ(TWR)と組み、T-5Rなる高性能モデルを開発。1994年にBTCC(英国ツーリングカー選手権)に参戦した。
セダンが常識だったレース界にステーションワゴンボディのレースカーという、ボルボの常識外れのチャレンジは大いに話題に。車体の重さと、基本が前輪駆動ゆえの前後のバランスの調整に、TWRのエンジニアは手を焼いた、と、私は当時、彼らのファクトリーで聞いたことがある。
いっぽう、ワゴンの前後長の長いルーフはダウンフォースを生むのに有効で、たとえばコーナリング能力が上がるなどメリットをもたらしたとボルボのホームページに記載がある。95年と96年はリカルド・リデルをドライバーに、連続して総合3位入賞と悪くない成績を残した。
いまでも時々、限定発売された850T-5Rを見かけることがある。根強いファンがいるのだ。中古車市場では600万円前後で取り引きされていて、人気が高い。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)
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