アキュラSLX(1995年)
ホンダ傘下のアキュラは、急成長する高級SUV市場に参入するため、手っ取り早い方法を求めていすゞにコンタクトを取った。いすゞは高級車を販売していなかったが、経営陣は2代目トルーパー(ビッグホーン)を高級車に仕上げることができると考えていた。
1995年にアキュラSLXとして米国で発売。グリルなど細かいデザインを除けば、見た目はいすゞそのものである。インテリアはウッドとレザーの組み合わせで、より洗練されたものとなっている。
3.2L V6を搭載したSLXは、トルーパーよりも力強い走りを見せたが、馬力だけでは質素なルーツを隠すことができず、販売は伸び悩んだ。アキュラは1999年モデルでSLXの販売を終了し、2001年モデルからはSUVではなく乗用車志向の強いクロスオーバーである初代MDXに切り替えた。これは自社開発で、2000年代前半に華々しく売れた。
余談だが、2代目トルーパーのOEM供給を受けた自動車メーカーはアキュラだけではない。シボレー、ホールデン、オペル、ヴォグゾール、ホンダ、スバルも長年にわたってその名を連ねてきたのである。
インフィニティQX4(1996年)
ライバルであるアキュラやレクサスと同様、日産傘下のインフィニティも1990年代には高級SUVセグメントへの迅速かつ容易な参入を必要としていた。2代目パスファインダーの内装にレザーや装備を追加して快適性を高め、エクステリアはフロントエンドのデザインを変更。インフィニティ初のSUV、QX4は1996年に米国で発売された。
QX4はアキュラSLXよりも多くの台数を販売したが、BMWやメルセデス・ベンツとの競争により、経営陣はゼロから出発する必要があると確信するようになった。QX4は2002年に生産を終了し、インフィニティは2003年モデルから日産350ZのプラットフォームをベースにしたFXを発売したのである。
マーキュリー・マウンテニア(1996年、初代)
1990年代、米国で主流自動車メーカーが購買層を維持するためには、少なくとも1車種のSUVを展開する必要があることが明らかになった。アイデンティティの危機に瀕していたマーキュリーは、2代目フォード・エクスプローラーを譲り受け、光沢のあるグリルなどのマイナーチェンジを施した。1997年の販売開始時にはV8が搭載されていたが、その後6気筒も追加されている。
初代マウンテニア(Mountaineer)は年間4万5千台程度の販売台数であったが、ほぼ同型で安価なエクスプローラーは米国を代表するSUVとして根強い人気を誇った。しかし両モデルとも、ファイアストン社による数十億ドル規模の大規模リコールの対象になっている。
今でこそ知名度は低くなったものの、初代マウンテニアはその後の2台の後継車を上回る売上を記録している。マーキュリーは2010年にマウンテニアを引退させ、翌年にはブランド自体も閉鎖されてしまった。
いすゞ・ビークロス(1997年)
1990年代、いすゞの辞書に「スタイル」という言葉は無いかのように思われた。ところが1997年、2代目トルーパーのパーツを流用し、乗用車のようなビークロス(VehiCROSS)を開発し、世間とマスコミを驚かせたのだ。
高いフロントエンドには珍しい形状のヘッドライトを配し、リアエンドには大きな膨らみを持たせ、その下に内側からアクセスする必要のあるスペアホイールを隠している。黒い樹脂製のクラッディングは、イエローなどの派手な色を選ぶと人目を引くことができる。
図面からショールームまで、味を薄めるような企業会議など通さずに作られたビークロス。約6000台が製造され、そのうち約4200台は1999年から米国に送られた。残りはほぼ日本市場にとどまっている。後継車種がないまま引退し、きれいな個体も少なくなってきているので、最近ではゆっくりと、しかし確実に人気が高まってきている。
三菱パジェロ・エボリューション(1997年)
三菱パジェロのレース活動は華々しいもので、1985年、1992年、1993年のパリ・ダカール・ラリーで優勝している。この過酷なレースで培ったノウハウを、ホモロゲーション用にスーパーSUVが三菱から限定生産で発売された。1997年から1999年にかけて製造されたパジェロ・エボリューション(Pajero Evolution)だ。
3.5L V6エンジンを搭載し、最高出力280psを発揮。オーバーフェンダーやルーフウィングなど、モータースポーツ界から伝わったアドオンを装着した2ドアモデルで、約2500台が生産された。
1990年代にはまだ高性能SUVは稀であったため、愛好家たちは記録的な速さで全生産台数を買い上げてしまった。パジェロ(一部市場ではモンテロとして販売)はダカール・ラリーで通算12回の優勝を挙げているが、いまのところ三菱は高性能SUVセグメントから身を引いたままだ。
ダッジ・ラムチャージャー(1998年、3代目)
2代目ダッジ・ラムチャージャー(Ramcharger)は1993年に米国市場から引退したが、メキシコ市場では1996年まで現役だった。米国では2ドアSUVの需要が底をついていたため、経営陣は後継を望まなかったのだ。しかし、メキシコでは事情が異なり、ダッジのメキシコ部門は、同市場向けに3代目ラムチャージャーを開発した。
1998年に登場したこのSUVは、ピックアップトラックのラムをベースにしており、正面から見ると両モデルの違いはほとんどないように見える。ミニバンのキャラバンからハッチを流用し、コストダウンを図っている。V8を2種類ラインナップしたが、四輪駆動は設定されなかった。約3万台がメキシコのみで販売された後、2001年に生産終了した。
いすゞ・アクシオム(2001年)
2000年代のいすゞのフラッグシップとして、新しい道を切り開いたのがこのアクシオム(Axiom)。SUVらしいルックスと性能を持ちながら、高級感のあるパッケージで、快適性にも妥協しない、そんなユーザーのためにつくられた。
ピックアップトラックのロデオをベースにしているが、見た目はまったく違う。また、このクルマの名前を募集し、優勝者には1台プレゼントするという大々的な企画も行われた。いすゞに寄せられた応募は4万7000点にも上る。
しかし、この宣伝効果も長くは続かず、ライバルの影に隠れてしまったこともあり、経営陣が期待したほどの成功は収められなかった。北米におけるいすゞの衰退は、すでに始まっていたのだ。アクシオムは2001年から2004年まで、インディアナ州ラファイエットにあるスバルとの合弁工場で約2万5000台が生産された。生産台数の大半は米国で販売され、日本には正規輸入されていない。
サンタナPS10アニバル(2002年)
スペインに本社を置くサンタナ・モーターは、数十年にわたりランドローバーのシリーズモデルをライセンス生産している。1983年の提携解消後も2500と名付けられたシリーズIIIの生産は続けられたが、より近代的なオフロード車(ディフェンダーなど)は1994年にそのキャリアに終止符を打った。
しかし、サンタナは基本に忠実な4WDの需要がまだあると信じていた。2002年に発表され、翌年発売されたPS10アニバルは、プロユーザーのニッチなニーズに応えるために開発されたものだ。
2500の後を継いだもので最先端ではなく、エアバッグやアンチロックブレーキもなかったが、パワーステアリングやエアコンなどの快適装備が用意(有料オプション)された。また、ディフェンダーと区別するためにフロントエンドのデザインを変更し、イヴェコ社製のターボディーゼルエンジンを搭載している。
2011年にサンタナが破産するまで、PS10アニバルの民間仕様車と軍用仕様車は欧州全土で販売された。2010年代には生産再開を計画していたが、実現には至らなかった。
三菱エンデバー(2003年)
イリノイ州ノーマルにある三菱工場(現在はEVメーカー、リビアンの拠点)で生産されたエンデバー(Endeavor)は、あまり冴えないルックスから、年間8万台という販売計画はちょっと非現実的に思える。悪いクルマではなかったが、特別に良いクルマでもなかった。
三菱初の米国専用車だが、フォード・エクスプローラーなど手ごわいライバルが多く、初年度の販売台数は3万2000台にとどまる。その後、2011年に販売中止となるまでこの数字は年々減少していくった。
GMCエンボイXUV(2004年)
エンボイXUV(Envoy XUV)は、それなりに売れたSUVをベースに、後部を樹脂パーツで覆ったピックアップ風の荷台に変更し、100kg近い電動格納式ルーフを装備したモデルである。この重いルーフは動力性能に悪影響を与え、直6とV8が用意されていたにもかかわらず、性能はあまり良くなかった。
GMの大物、ボブ・ルッツがデビュー時に廃止させようとしたようだが、叶わなかった。年間10万台の販売を見込んでいたものの、2年間でわずか1万3千台しか出荷されず、結局ルッツの思い通りになった。
イヴェコ・マッシフ(2007年)
2007年に一部の市場で発売されたイヴェコ・マッシフ(Massif)は、英国をルーツとするスペイン製オフローダーのイタリア版である(複雑)。ランドローバー・シリーズIIIをベースとしたサンタナ(ギタリストではなく自動車ブランド)のPS10に近い多国籍SUVだが、イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロの指導のもと、イヴェコ専用のフロントエンドを持ち、インテリアも独自の仕様となっている。
2ドア、4ドア(7人乗り)、2ドア(ピックアップ)の3タイプで展開。年間約4500台が生産され、その多くがイタリア政府の各支部で使用されることになった。2011年11月、マッシフを製造していたサンタナが破産を申請したことにより、生産が終了。現在、アルプス以外ではほとんど見られなくなっている。
ポンティアック・トレント(2005年)
かつて名声を誇ったポンティアックブランドは、今世紀に入るとGMの中で次第に影を潜めていく。アズテックのような眉唾物のモデルで打開を図ったが、控えめに言っても結果は散々だった。
トレント(Torrent)はアズテックの後継車で、シボレー・エクイノックスMk1の焼き直しのようなポンティアックらしい無難な仕上がりになっていた。エンジンは3.4L V6のみで、後に3.6Lに拡大された。
しかし、知名度の低さと印象の弱さが災いした。シボレーはエクイノックスを50万台近く販売したが、ポンティアックはトレントを10万台強販売するにとどまり、最終年の2009年にはわずか9638台しか売れなかった。
サーブ9-7X(2005年)
かつて素晴らしい自動車会社であったサーブは悲しい結末を迎える。末期の非常に奇妙なモデルである9-4Xは、サーブに対するGMの不始末を象徴するものであったと言える。
横行するバッジエンジニアリングの犠牲者になった9-7Xは、サーブとはほとんど関係がなく、シボレー・トレイルブレイザーやオールズモビル・ブラバダのような、どこにでもあるGMT360プラットフォームを採用している。ただ、それら兄弟車の中で最も高価なモデルであり、高級車市場で戦うべく装備を整えていた。
GMは少なくとも、サーブの特徴であるイグニッションを中央に配置するなど、ある程度の独自性を持たせようとした。しかし、それ以外の部分はGMの香りをすべて覆い隠すことはできなかった。オハイオ州で8万6000台が製造された後、モデルも製造工場も消滅。サーブにとって最初のSUVであり、最後のSUVである。
クライスラー・アスペン(2006年)
近年のクライスラーで印象に残るモデルは少ないが、このアスペンもその1つ。ダッジ・デュランゴの兄弟車としてバッジエンジニアリングされたアスペン(Aspen)は、デュランゴの販売台数には全く及ばなかった。
デュランゴは、ソリッドビームのリアアクスルを持つラムの派生モデルである。そのため、アスペンはクライスラー初のトラックベースのSUVとなった。販売台数が伸び悩んだため、わずか2年のモデルライフを経て2009年に生産終了した。
アスペンとデュランゴには、経済性を高めるためにハイブリッド車も設定されたが、世界的な金融危機のさなかであったため、発売後まもなくコストの理由で廃止。両ブランド合わせて約800台が製造されている。
スズキXL7 Mk2(2006年)
初代はグランドエスクードとも呼ばれていたが、2代目はより大人っぽいSUVとなった。シボレー・エクイノックスの兄弟車で、GMとのプラットフォーム共有によって生み出された。エクイノックスとは細かい違いがあり、3列目のシートが狭いのが難点だが、エンジンはGMの3.6L V6を搭載している。
米国市場の低迷と、長期にわたる燃料価格の高騰の中で誕生したXL7は、わずか2年で生産中止となり、5万台ほどが販売された。スズキは2013年に米国市場から完全に撤退した。
キア・ボレゴ(2008年)
キアの最新モデルは、ますます尖ったラインナップになってきているが、ピーター・シュライヤーが同社のために初めて手がけた量産車のデザインは、決して傑作と呼べるものではなかった。一部の市場ではモハベと呼ばれたボレゴ(Borrego)は、旧式のボディオンフレーム構造、3列シート、V6およびV8エンジンを特徴としていた。
しかし、米国で発売された当時は金融危機の渦中にあり、キアの名前も今よりずっと確立されていなかった。また、乗り心地や燃費が悪いこともあって、わずか2年の間に約2万3千台を売り上げただけで販売中止となった。2011年には小型のソレントが間接的な後継として、2019年にはテルライドが直接的な後継として登場した。
サーブ9-4X(2011年)
GMは2000年代にキャデラックSRXという高級クロスオーバーを設計していた頃、サーブにも9-4Xとい名でこれを導入することにした。GMがその生き残りをかけて戦っていたこと、そしてその戦いでますます不利になっていくスウェーデンの子会社を余剰な存在として見なしていたことは、忘れてはいけない。
サーブ9-4Xは、SRXと同じメキシコのラインで製造されていた。しかし、2011年モデルとして発売された直後にサーブの社運が尽き、わずか814台が生産されただけで、ブランドとともに幕が引かれた。
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みんなのコメント
またまた大袈裟な。
名車 珍車ってベストカーのパクリ?