もちろん、大ヒットしたクルマの各コピーもいいけれど、世間でそれほど評価されなかったあの迷車たちにも、それはそれはステキな迷コピーがあった!! 今回は記憶に残る愛すべき迷・名車の数々とツッコミたくなる迷コピーをご紹介!(本稿は「ベストカー」2013年9月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
「オレの彼女は超アムロ」えええ……マジで………? クルマCMの迷コピー謎コピー傑作選│1990年代~2000年代編【10年前の再録記事プレイバック】
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■「ファースト・ミディアム宣言─あのクルマとは違う。」三菱・初代ディアマンテ(1990年)
販売期間は1990~1995年。ディアマンテとはスペイン語でダイヤモンドの意味。三菱のダイヤマークにちなんでこの名になったらしい
自信満々のこのコピーは、三菱の3ナンバー上級セダン、ディアマンテのもの。このクラスのクルマに当時としては珍しく4WD仕様が最初から用意されていた。
エクステリアの雰囲気が、「BMWと似ている」といわれており、「あのクルマとは違う」というコピーの「あのクルマ」とは、BMWのことを指すのかも。
しかし、バブルの申し子的存在感や独特のゴージャスな内装は今でも一部から熱く愛されている。戦前生まれの老人たちは「ディアマンテ」から「イヨマンテの夜」を連想し「イヨマンテ」と呼ぶ始末。歴史を感じる1台。
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■「タイムマシンかもしれない。」日産・NXクーペ(1990年)
いやそんなこと言われても……「そうなん?」としか……。販売期間は1990~1994年
7代目サニーをベースにした個性的なデザインの3ドアクーペ。コマーシャルでは、黄色い壁から黄色いNXクーペがにょきっと飛び出し、車体がぐにゃりと歪んでいた。
当時の最新技術によって作られたと思われるCGと風変わりなエクステリアが、「イカしたヤングのハートをつかむ!」ハズだったのにつかめず、コピーの「タイムマシンかもしれない。」も「タイムマシンなら、この惨敗結果を見に行けたはずだよね?」と意地悪なツッコミを入れたくなる。タイムマシンではなかったことを身をもって証明した。
ちなみに、このクルマ、車内に「傘入れ」という謎のスペースがあり、傘が標準装備されていたそう。コピーやコマーシャルの派手さに比べて、付属品が傘って小市民的過ぎるだろう! 全体的にちぐはぐ感が漂う迷車中の迷車だ。
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■「うさぎの勝ちだ。」三菱・初代RVR(1991年)
いやそんなこと言われても……「そうなん?」としか……。販売期間は1991~1997年
そのまんまの車名からわかるとおり、RVブームの時代に発売されたRV風味のトールワゴン。コマーシャルにはバックスバニーが登場して、ロングスライドシートや広々としている室内空間をアピールした名車。コピーは「うさぎの勝ちだ。」。
うさぎが、いったい誰と何の競争をしているのかはまったく説明がないものの、うさぎのアニメとコピーのわかりやすさで、案外当時の子供(担当ほか、現在の中年たち)の記憶に残っていることは確か。
「うさぎの勝ちだ。」を今更ながら実感させる、深いコピー(そうでもないか?)。
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■「RVヌーボー、始まる」三菱・初代チャレンジャー(1996年)
いやそんなこと言われても……「そうなん?」としか……(しつこい)。販売期間は1996~2001年
RVヌーボー!? なんだかよくわからんが、キッパリ言い切っているあたりにすごい自信を感じるこのコピー。いったい、どうしたんだ?
「ヌーボー(フランス語で新しいもの)」とかいっているわりに、人気車「パジェロ」をベースにして、背をちょいと低くし、なんとなくサーフ似に仕上げたクルマである。って、どのあたりがヌーボーなのか、いったい何が始まるのかよくわからん。
日本では、一部愛好家からの支持にとどまりブームを巻き起こすほどには至らなかったものの、海を渡った先では人気車に。国際的には、「RVヌーボー、始まる」だったのかもしれない。
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■「オレの彼女は超アムロ」日産・初代パルサーセリエS-RV(1996年)
販売期間は1996~2000年。苗字に「超」を付けるセンスが90年代だなぁ~
「超アムロってなんだよ?」と今となってはつぶやかずにいられないこのコピー。別にガンダム操縦士の男を指しているのではなく、コギャル(死語)のカリスマ・安室奈美恵を指しているわけだが、当時の彼女の人気はすさまじかった。そして、何にでも「超」をつけるのが超はやっていた。
売り上げが低迷していた5代目パルサーにRV風味をまぶして起死回生をはかったのが、このクルマ。当時のヤングとしていわせてもらうと、安室ちゃん世代の人間がこのクルマを格好いいと思うと思えない!
アムラーって10代半ばから20代前半ですよ。パルサーって大人っぽすぎませんか。が、安室人気に乗っかって、売れたっていうんだからすごいっす。
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■「良さそうなワゴン」ホンダ・オルティア(1996年)
販売期間は1996~2002年。平凡と個性の兼ね合いって難しい!
シビックシャトルの後釜として登場した5ナンバーのワゴンで、排気量は1.5Lと2.0Lがあった。
室内スペースとインテリアは、今の感覚で見ると「懐かしい雰囲気」だが当時としてはそれなりのもの。で、コピーは「良さそうなワゴン」。
た、確かに良さそうなワゴンですね! でも「良さそうだけど、特別良いわけじゃない」ってことでしょうか。
CMには、ドラえもんになる前のジャン・レノが出演。カネのかかってそうなおされな仕上がりです。
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■都会暮らしの休日は、君とジョニーとこのワゴン トヨタ・オーパ(2002年)
販売期間は2000~2005年。このコピーは2002年のマイチェン時のもの
何はなくとも「ジョニーって誰さ?」とツッコミたくなるこのコピー。CMに出てくるのは、黒谷友香嬢とペンギンとオーパのみ。ジョニー大倉もしくはジョニー・デップがギター片手にどこかから現われるんじゃないかと目を凝らしてみたが発見できず。ってことは、ペンギンの名前がジョニーなのだろうか? でも、都会でペンギン飼ってる人なんて激レアだろ! 格好つけているようで、なんだか意味不明なコピーである。
肝心のオーパは、直噴エンジンD-4にCVTの組み合わせで燃費もよく街乗りしやすい5ナンバーサイズワゴン車。しかし、好き嫌いの分かれそうなデザインで、キャラ付けがはっきりしないまま、どっちつかずで生産終了した。
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■「泣く子も黙る79万円」スズキ・初代スイフト(2002年)
販売期間は2000~2006年。CMは、「泣いていた子役がスイフトと出会って笑顔になる」というコピーのまんまの展開
一抹の迷いも照れも感じられないオヤジギャグコピー「泣く子も黙る79万円」。初代発売から2年後、値下げされ79万円に。これほど当時のスイフトと、スズキという会社のキャラクターを明確に押し出したコピーはほかにない。
エクステリアデザインの微妙さや「軽自動車に毛が生えた」程度のサイズ&機能含めて、まさに、泣く子も黙る大ヒット車だった。
商品のコピーは、その品を少しでも美しく、格好よく見せようとして作られるもの。普段、使わないような美辞麗句や非日常的な語彙センスの言葉を並べ立てるのが一般的なスタイルだ。
そこへきて、オヤジギャグで勝負したスイフトって本当に潔い。ま、確かにこの当時のスイフトってダジャレが似合うようなダサかわいいクルマだったわけだけど……。
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■「世界のわがままGRANDIS」三菱・グランディス(2003年)
販売期間は2003~2009年。CM楽曲はおフランスの歌手、クレモンティーヌが担当
三菱が満を持して発売したシャリオグランディスの後継車、3ナンバー3列シートの次世代型ミニバン。エクステリアやインテリアには曲線を多用して日本的な美を表現していた。
テレビCMでは、「ミニバンにわがままを言いましょう。そのわがままが、ミニバンを変えるのだから」と物わかりのよさそうなことを謳い、コピーも「世界のわがままGRANDIS」とやたらと立派でスケール感があった。
が、でっかいコピーはいいっぱなしに終わり、国内での販売成績はイマイチ。「世界のわがまま」を消化不良にしたまま、2009年にひっそりと販売が終了した。
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■コピーがよくて売れたクルマはあったか!?
まあ、いろんなコピーがあったもんです。ここで紹介したのは、国産車のCMに使われたコピーのほんの一部。ほかにも、秀作、傑作、ダジャレ風コピーとさまざまあり、どれもが製作スタッフの大変な努力のたまもの。本当に頭が下がります。
さて、CMのコピーとクルマの販売に関係があるのか。前出の広告マン氏によると、
「CM製作に参加したクルマが売れれば嬉しいですが、結局、クルマがいいから売れるンです。逆に、担当したクルマが売れないと責任を感じることはありますよ。正直な話、CM製作段階で、売れそうなクルマ、売れそうもないクルマってなんとなくわかる。売れそうなクルマの時は、こちらも力が入ります」
名車に名コピーが生まれるのはある意味必然的なのかもしれない。逆に売れそうもないクルマの時はどうしてるんだ。
「手は抜きません。というより思いっきり遊んだりします。意表を突くコピーで消費者に訴えかけたりね」
迷車に迷コピーは、こんなところに原因があるのかもしれない。
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■クルマCMはコピー命! コピーライター艱難物語
「クルマのCMはコピーが命です」。大手広告代理店で、長年クルマのCM製作に携わってきた広告マン氏の弁である。
「ケースバイケースですが、ニューカーのCM製作では、だいたい3チームを編成し競い合わせていました。各チームが、最終的なコピーを決めるまでに、だいたい30から40本のコピーを考え、絞り込んでいます」
3チーム合わせると、1台のCMを作るのにおよそ100本のコピーが考えられるわけだ。そして世に出るのが、おおむね100分の1の確率で選ばれたコピーということになる。
もちろん、「そのクルマを一発で表現できるコピー」が理想なのだが、なかなか思うように出てくるものではないらしい。コピーライターは、生みの苦しみで絞りだしている。
そうして決まったコピーだが、本当にいいと制作側が納得できるのが10本に1本くらい。そして、いいのができたと思っても、スポンサーである自動車メーカーの担当者が気に入らなければお蔵入り。コピーライターってつくづく大変な職業なんですね。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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みんなのコメント
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これは車CM史の中で特に輝く名コピーだと思う
ここまで言わせるメーカーが自信をもって世に送り出す車
そして、その車が本当に多くの人の「憧れ」になり、「俺もいつかは・・・」と思わせる車が少なくなってしまったのが悲しい