ラグジュアリークーペはクルマに対する夢や憧れが詰まった分かりやすい存在なのもあり、クルマ好きだったら一度は自分のものにしたいジャンルだ。
現在日本車のラグジュアリークーペはレクサスLCがあるだけで、このジャンルは1000万円超えの輸入車が中心という寂しい状態である。
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しかし、バブル景気だった平成初期には日本メーカー各社がラグジュアリークーペを揃えていた時代もあり、当記事では日本車ラグジュアリークーペの黄金期を彩ったクルマたちを振り返ってみた。
文/永田恵一 写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUBARU
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■トヨタ ソアラ(2代目モデルから4代目モデル)
1981年登場のトヨタ ソアラ。ラグジュアリークーペの基準を作ったといっても過言ではない記念すべきモデルだ
昭和56年(1981年)に登場したソアラの初代モデルは、オイルショックや排ガス規制による暗黒時代から日本車が立ち直りつつあった時期にトヨタのイメージリーダーカーとして開発された。
そんなクルマだっただけに格調ある内外装やデジタルメーター、2.8リッター直6DOHCエンジンの搭載といった最新技術の搭載も功を奏し、トヨタの想像以上の成功を収めた。
昭和61年(1986年)に登場し平成3年(1991年)まで販売された2代目ソアラ。
初代モデルのキープコンセプトではあったものの、当時日本最強の3リッター直6DOHCターボ(230馬力&33.0kgm)や世界初の電子制御エアサスに代表される「トヨタが実用化できる最新技術」を存分に盛り込み、初代ソアラが確立した地位をより強いものとした。
平成3年に登場した3代目ソアラは、2代目モデルまでのソアラが日本専用車だったため5ナンバーサイズで上品なエクステリアを持つラグジュアリークーペだったのに対し、アメリカでのレクサスブランドの開業もあり、レクサスブランドではSCの車名で販売されるラグジュアリークーペに移行。
そのためボディサイズは全長4860mm×全幅1790mmと大幅に拡大し、エクステリアもアメリカの風景にも似合いそうなボリューム感あるものとなった。
パワートレーンも2代目モデルの2リッター直6エンジン搭載車の後継的存在となる2.5リッター直6ツインターボに加え、フラッグシップとして初代セルシオなどに搭載された4リッターV8NAも設定された。
技術面では最上級グレードとなる4.0GTリミテッド系にGPSを使ったカーナビを設定した(4.0GTリミテッドでは標準となるエアサスとカーナビ装着車の価格は545万円)。
1986年に登場した2代目ソアラ。初代のキープコンセプトに加えて当時の最新技術を多数盛り込んだ
4.0GTリミテッドにはロールを強制的に抑えることも可能なアクティブサス+4WS(745万円)を設定するなど、3代目ソアラも「トヨタの技術のショーケース」であり続けた。
ただ、3代目ソアラは登場から数か月でバブル崩壊による景気低迷や2代目モデルまでのソアラを好んだ日本人には大きな変化が受け入れられず、2代目モデルまでのソアラほどの成功は収められなかった。
3代目ソアラから10年後の平成13年(2001年)に登場した4代目ソアラは、2代目アリストをベースとした電動オープンとなるメタルトップと小さいながらもリアシートを持つ、オープンカーとしても使える4.3リッターV8エンジンを搭載したラグジュアリークーペに姿を変えた。
4代目ソアラ(初期モデルの価格は600万円)は21世紀に入って登場したクルマだったこともあり、時代が慎ましやかな方向になっていたことも影響して3代目ソアラまでほどのインパクトはなかった。
それでも技術面ではまだ出始めだったランフラットタイヤのオプション設定や、ラグジュアリークーペらしい優雅な内外装による雰囲気のよさなどによりソアラらしさを保った。
4代目ソアラは平成17年(2005年)に日本でもレクサスブランドが開業したことに伴い海外同様にSCに移行し、ソアラの車名は消滅した。
■日産 レパード(2代目モデル、昭和61年から平成4年)
1980年に登場した日産 レパード。ソアラの対抗馬として生まれたと思われがちだが、意外にもソアラよりも早くからあったモデルなのだ
初代レパードは昭和55年(1980年)登場と、意外にも初代ソアラ以前からあったラグジュアリークーペである。
しかし、ラグジュアリークーペと書いたのと矛盾するように4ドア車も設定した点など(今になるとレパードの4ドア車は現在の4ドアクーペのような存在で、時代を先取りし過ぎていたのもかもしれない)、初代ソアラに比べると全体的にどうにもパッとしなかった。
2代目レパードは昭和61年(1986年)に2リッターと3リッターのV6エンジンを搭載する2ドア専用のラグジュアリークーペにフルモデルチェンジされたのだが、2代目レパードの直前に登場した2代目ソアラと比べるとアドバンテージがほとんどなかったのは否めなかった。
「あぶデカ」ファンには今も絶大な人気を誇る2代目レパード
2代目レパードは昭和63年(1988年)にダッシュボードの形状変更を含む内外装の大幅な変更や初代シーマに搭載された3リッターV6DOHCターボの搭載が目玉となるビッグマイナーチェンジを行ったものの、それほど状況は変わらなかった。
平成4年(1992年)まで販売され現役時代はパッとしなかった2代目レパードだが、ビッグマイナーチェンジ前、後のモデルともに当時放送されていた刑事ドラマ「あぶない刑事」の劇中車に使われていた影響で、現在の注目度は2代目ソアラより強い。
またそういったイメージも含め今見ると、BMW6シリーズの初代モデルのようなクラシカルなラグジュアリークーペという魅力を感じるところもある。
なお、レパードは平成4年登場の3代目モデルではJフェリーのサブネームを持つ4ドアクーペ的なモデル、平成8年(1996年)登場の4代目モデルは当時のY32型セドリック&グロリアの細部違いに限りなく近い兄弟車という歴史を歩んでおり、同じ車名でここまでコンセプトがコロコロと変わったクルマも珍しかった。
■ホンダ レジェンドクーペ(2代目モデル)
1985年に登場したホンダ レジェンド。アメリカで大成功を収めたモデルだ
初代レジェンドは当時のクラウンとセドリック&グロリアをターゲットとした個人オーナー向け高級車として、昭和60年(1985年)に登場した。
初代レジェンドは、高級車は伝統や信頼といったブランド力が重要なジャンルということもあり、日本での販売は伸び悩んだが、ホンダに対するブランドイメージが高いアメリカでは成功し、昭和62年(1987年)に2.7リッターV6エンジンのみを搭載した2ドアハードトップも追加された。
2代目はレジェンドクーペと名前を変えて登場した。2021年現在ホンダ最後のラグジュアリークーペだ
2代目モデルは1990年(平成2年)に4ドアセダンがフルモデルチェンジされたのに続き、平成3年(1991年)に車名をレジェンドクーペに変え登場した。
2代目モデルも初代モデル同様に4ドアのレジェンドを2ドア化したラグジュアリークーペで、3.2リッターV6エンジンをやや特殊な縦置きとしたFFミッドシップレイアウト、運転席に加え助手席エアバックやシートベルトプリテンショナーの標準装備化による高い衝突安全性などが特徴だった。
レジェンドクーペは4ドアセダンのレジェンドを2ドアクーペに仕立て直したモデルということもあり、ソアラのような2ドアクーペ専用車ほどのインパクトはなく、目立たないまま絶版となり、レジェンドクーペ以来ホンダからラグジュアリークーペは登場していない。
■ユーノス コスモ
ユーノスブランドから登場した4代目コスモ。ユーノスというブランド名がすでにバブルを感じさせる
初代モデルが世界初のロータリーエンジン搭載の量産車だったコスモは平成2年(1990年)登場の4代目モデルで、当時マツダがユーノスブランドを立ち上げたこともあり、そのフラッグシップとなるラグジュアリークーペとなった。
ユーノスコスモは世界でただ一社ロータリーエンジンを実用化したマツダの悲願であった3ローターエンジンの搭載(3ローターだけでなく2ローターも設定し、どちらもターボ)を実現した。
ほかにもジャガーXJSのようにダンパーが一輪に2本付くリアサスペンション、ラグジュアリークーペらしいクラシカルなエクステリアとゴージャスなインテリア、世界初となるカーナビの採用など、バブル期らしい贅を尽くしたクルマだった。
しかし、特に3ローターターボエンジン搭載のユーノスコスモは「全開加速すると燃料計が下がっているのが見える気がする」といわれることが少なくないほどの極悪な燃費や、ATのみの組み合わせだったこともあり低速トルクの細さによる通常走行時のギクシャク感といった弱点があった。
それに加え、バブル崩壊もあり販売は低迷。結局平成8年(1996年)に絶版となったが、強いインパクトを残したことは確かだ。
■スバル アルシオーネSVX
ジウジアーロデザインの個性的なエクステリアが特徴のスバル アルシオーネSVX
昭和60年(1985年)にレオーネベースの2ドアクーペとして登場したアルシオーネは、空気抵抗の低減など意欲的なモデルだった。
しかし、エクステリアや本当にゲームセンターのドライブゲームのようなデジタルメーターなどにより、よくいえばアヴァンギャルド、悪くいえば奇抜としかいいようのないモデルだった。
その反省もありアルシオーネの後継車として平成3年(1991年)に登場したアルシオーネSVXは「500miles a day(1日800kmを快適に走る)」というキャッチコピーに基づき、3.3リッターの水平対向6気筒NAエンジンをスバル伝統の4WDに組み合わせた。
さらにジョルジェット・ジウジアーロ氏率いるイタルデザインによるエクステリアを持つラグジュアリークーペとなった。
販売面では不発だったアルシオーネSVXだが、アルシオーネとはまったく異なるいい意味での個性に溢れていたこともあり、少数ながら未だ熱狂的なファンがいるモデルだ。
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