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世界の大メーカーが「反則スレスレ」の本気バトル! なぜ市販車でニュルのタイムを争うのか?

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世界の大メーカーが「反則スレスレ」の本気バトル! なぜ市販車でニュルのタイムを争うのか?

 この記事をまとめると

■日本ではニュルのタイムはクルマの高性能ぶりを示すベンチマークとして捉えられている

オヤジセダンから軽自動車まで! 「ニュルブルクリンク」で走りを鍛えた「意外な」クルマ4選

■ホンダvsルノー以外にもポルシェvsメルセデスAMGなどがタイムを削りあっている

■現在の市販車最速はポルシェで6分43秒300、コースレコードもポルシェで5分19秒546

 1990年台に入りメーカーによるタイムアタックが本格化した

 ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェ。1927年にオープンしたドイツの古いサーキットは、いつ頃からタイム・アタックの聖地として重んじられるようになったのか、ボクは具体的には知らない。

 けれど、1995年に『マイナス21秒のロマン』というキャッチとともにスカイラインのR33GT-Rがデビューしたときに大きな話題となり、それまではル・マン、スパ・フランコルシャン、デイトナと並ぶ世界的な24時間レースの開催地として知られていたサーキットというぐらいにしか思ってなかった多くのクルマ好きたちの認識がガラッと変わったような記憶があるから、日本ではその辺りから“ニュルのタイム=クルマの高性能ぶりを示すベンチマーク”として捉えられるようになっていったのだと思う。

 全長、世界最長の20.832km。コーナーの数、超低速から超高速まで合わせて172。高低差、およそ300m。路面の舗装は新旧のつぎはぎ、荒れた箇所も多く、波打ち、ほこりっぽく、バンクもあればジャンピング・スポットもあり、コーナーの多くはブラインドで、エスケープ・ゾーンも狭い。あまりの過酷さに“緑の地獄”と呼ばれることすらある、世界でもそう類をみない超難関コースだ。

 イヤでもクルマの総合力がはっきりと浮き彫りになるわけで、それだけに古くから自動車メーカーがテストコースとして利用することが多く、とりわけスポーツカーや高性能モデルを開発する際にこのコースで鍛え抜くケースが目立つ。

 また、一部に速度制限があったり、違法車両は走れなかったりなどレギュレーションは存在するし有料ではあるものの、一般開放日には誰もがどんなクルマ/オートバイを持ち込んでも走行することができる。つまり、ノルトシュライフェの厳しさ、難しさを体験することができるわけで、”ニュルで速い”というのがどれほど凄いことなのか”が一般の人たちにも理解できる。そうしたこともあって、メーカーによる最速タイム合戦は次第に熱を帯びて現在に至っている。

 このコースでの最速タイムにこだわるメーカーは少なくない。たとえばルノーとホンダによる、メガーヌRSとシビック・タイプRのタイム塗り替え抗争もよく知られるところだ。

 2014年にメガーヌRS275トロフィRが量産FF車最速タイムを刻めば、2017年にシビック・タイプRが挑戦して打ち破り、2年後の2019年にはルノーがほとんどレーシングカーのようなメガーヌRS300トロフィRを仕立て上げてタイムをさらに更新。

 しかもタイムを記録したマシンとほぼ同じ仕様の、カーボン・セラミックのブレーキやカーボン・ファイバーのホイールなどを備えた”ニュルブルクリンク・レコード・パック”を販売して「市販車と違うじゃん!」という他社からの突き上げをあらかじめ回避しておくという、ほとんど仁義なき戦いのようなものである。

 そして今、ホンダが来年のデビューを予告している新型のシビック・タイプRのテストをニュルで行っている真っ最中で、記録更新への期待がググッと高まっている。

 さまざまなカテゴリーのベストラップが更新され続けている

 冒頭に触れたとおり、日産もR32GT-Rの開発後期から歴代モデルをニュルで鍛え上げ、タイムアタックも行ってきた。

 また、GT-Rの仮想敵といえるポルシェも、2000年代に入ってからとりわけ911の中のスポーツ性の高いモデルでメーカーとしてタイムアタックを行ってきており、2015年を境に日産がニュルでの記録更新を休止するまで、熾烈な争いが繰り広げられた。2008年にはR35GT-Rが市販車最速タイムをマークすると、ポルシェのエンジニアがオフィシャルな場所で”あのタイムは別のタイヤを使って出したのではないか?”と疑惑を投げかけ、結果的に恥をかいたようなカタチへ。

 そして時を隔てた2021年11月現在、市販車の最速タイムは2021年6月にポルシェが911GT2RSで叩き出したもの。

 ただし、ポルシェのモータースポーツにおけるパートナー、マンタイ・レーシングと共同開発した空力パーツやサスペンションなどで構成される”マンタイ・パフォーマンス・キット”などの”純正オプション”が備わったクルマであることから、その直前までAMG GTブラック・シリーズでトップに立っていたメルセデスAMGから、「ポルシェの新記録、おめでとう。僕たちの記録を破るためにパフォーマンス・キットまで用意したんだね」と皮肉まじりの祝福コメントを浴びせられている。ボクらが嬉しくいなるような大人げのなさ、だ。

 もちろんそのメルセデスAMGも、メーカーとしてタイムアタックに挑戦している。

 ニュルの記録を見ていくと欧州の自動車メディアがテストをしてタイムを残したものが多いのだが、メーカーとしてはこれまで触れた以外にもランボルギーニがアヴェンタドールSVJ LP770-4で市販車最速3位の座につけているなど熱心だし、シボレーがコルベットやカマロで、ジャガーがXE SVプロジェクト8で、アルファロメオがジュリアやステルヴィオのクアドリフォリオで、フォルクスワーゲンがゴルフGTIクラブスポーツSで、アウディがRS3で、ランドローバーがレンジローバー・スポーツSVRで、といった具合にオフィシャルに計測を行い、好タイムを記録してきている。

 もちろんこのニュルブルクリンク・ノルトシュライフェで叩き出したタイムが、クルマのすべてを証明することにはならない。けれど、パフォーマンスに関わる部分の多くを判断する重要な基準となることは間違いない。仮にハイブリッドの技術がもっと進んだり100%ピュアEVの時代が来ることになるとしても、それは変わることがないだろう。

 いや、もう始まってるのかも知れない。公道走行が可能な量産車最速である911GT2RSマンタイ・パフォーマンス・キット装着車のタイムが6分43秒300。そしてこちらはあくまでもEVの競技車両であるが、2018年のパイクスピーク・マシンであるフォルクスワーゲンID.Rをベースにしてニュルに最適化させたマシンが6分05秒336。

 参考までにすべてを含む車両の最速タイムは、WECを走っていたプロトタイプ・マシンをレギュレーションの縛りなしにチューンナップした”無制限クラス”ともいうべきポルシェ919ハイブリッドEVOが、5分19秒546。その差は約45秒。ID.Rのタイムは、その2年前に同じEVのNIO EP9が出した記録を40秒以上も短縮したものだった。

 僕らは新しい時代になっても繰り広げられる終わりなき戦いを、きっと楽しむことができるに違いないのだ。

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