ドイツ御三家にプレッシャーをかけるファーウェイ
中国市場におけるEVシフトの急加速によって、じつは日本メーカー以上に打撃を被ってしまっているドイツ御三家について、その苦しい販売動向を詳細に分析します。
発売後72時間で約5000台が売れた! ドイツのプレミアムEVセダンキラー「ファーウェイSTELATO S9」の恐るべき競争力
今回注目するのが高級車セグメントです。とくに、その高級車セグメントでこれまで圧倒的なシェアを築いていたのが、アウディ、BMW、そしてメルセデス・ベンツというドイツ御三家です。中国人の間では、このドイツブランドという価値は絶対的であり、よってこれまで中国メーカーは、安いガソリン車を作り続けることで販売シェアを伸ばそうとしていたわけです。
ところが、ドイツ御三家が支配していたプレミアムセグメントに地殻変動が起こっています。まず、中国EVメーカーとしてNIOとLi Autoが2014年に設立。NIOは、バッテリー交換というコンセプトを打ち上げて、2024年5月から9月まで、5カ月間連続で月間2万台超を発売することに成功。
Li Autoは、当初はレンジエクステンダーEVのパイオニア的な存在として、とくにプレミアムセグメントを購入検討する富裕層の場合、EVが欲しいが急速充電に対する不安を抱える層が多かったこともあって需要とマッチ。
さらに、富裕層のファミリー層に特化した、高性能シートやエンタメ機能という快適性を追求することによって、これまで中国車が立ち入ることができなかったプレミアムセグメントで急速にシェアを拡大中です。直近の9月は5万台超という史上最高の販売台数を更新しました。
さらにその上、中国の既存メーカーも独自のプレミアムEV専門ブランドを次々と立ち上げています。BYDはDenza。GeelyはZeekr。SAICはIMモーター。BAICはArcfox。ChanganはAvatr。DongfengもVoyahなどを立ち上げています。
さらに、第三勢力として注目を集めているのが、シャオミとファーウェイというテック企業の存在です。
まずシャオミは2024年4月からSU7の納車をスタート。このSU7はプレミアムEVセダンの王者「テスラ・モデル3」を凌ぐEV性能を実現することによって、現在急速に販売シェアを拡大中です。
その上、現在ドイツ御三家に対してもっともプレッシャーをかけてきているのがファーウェイです。ファーウェイはマーケティング戦略をはじめ、ファーウェイストアで車両を販売するまでを包括的に担当するHarmony Intelligent Mobility Alliance、通称HIMAを設立。すでにSeresと立ち上げたAITO、Cheryと立ち上げたLuxeed、BAICと立ち上げたStelato、そしてJACと立ち上げるMaextroという独自ブランドをそれぞれ設立し、販売規模を拡大中です。
現在、月間4万台級の販売規模を実現しており、Li Autoとともに、中国のプレミアムEVセグメントで2強体制を構築しています。
そして、これらの存在によって、ドイツ御三家の販売台数に大きな影響が出始めています。とくに直近の2024年Q3でトップの販売台数を達成したのがテスラの存在であり、前年同期比で30.3%ものプラス成長を実現しています。また、NIOも前年同期比で10.1%ものプラス成長を実現。さらにファーウェイも11.3万台以上を売り上げて、前年同期比で8倍もの急成長を実現しています。そして、Li Autoも前年同期比で45.4%もの急成長を達成し、ドイツ御三家を上まわる販売規模すら実現しています。
その一方で、Li Autoに販売台数で抜かれたドイツ御三家の販売台数は減少傾向です。アウディは前年同期比で18.1%ものマイナス成長。メルセデス・ベンツも前年同期比で12.2%ものマイナス成長。そしてBMWはQ3単体で12.7万台と、ドイツ御三家としてはもっとも販売台数が少なく、ファーウェイの販売台数とも接近。しかも前年同期比30%ものマイナス成長です。
ポルシェの販売台数も減少中
では、小売価格が約50万元、日本円で1000万円級の高級セグメントの販売動向も確認してみましょう。これまで、中国でもっとも人気の高級車はアウディA6Lだったものの、それを追い越す形で5カ月連続で高級セグメントトップの販売台数を達成していたのが、ファーウェイのAITO M9です。
そして、A6Lの販売台数は前年同月比で14.3%ものマイナス成長を記録。さらに、BMW X5の販売台数が、9月単体で6050台と、前年同月比で26.8%ものマイナス成長を記録しています。このX5は中大型SUVセグメントであり、急速に販売台数を伸ばすAITO M9の競合ということから、M9に販売台数を奪われているのではないかと推測可能でしょう。
じつはドイツ御三家は、2024年Q3に突入した7月以降、中国国内の値下げ戦争への追随戦略を諦めて、販売のクオリティ向上にコミットする動きを見せていましたが、その7月単体の受注台数が想定以上に落ち込んでしまったのか、早々に値下げ戦略を復活させています。
実際問題として、A6Lは42.79万元からのスタートだったものの、現在28.67万元からと、300万円近い大幅値引きを断行中。BMW X5も、これまで61.5万元からのスタートであったものの、最大100万円程度の値引き中です。
そして現在、A6LとGLCという売れ筋モデルを狙い撃ちしてきているのが、ファーウェイとLi Auto、そしてBYDのです。とくにA6Lに対しては、ファーウェイのStelato S9、BYDの高級ブランドDenzaのフラグシップセダンであるZ9 GTが迎え撃ちます。
またメルセデスGLCに対しては、Li AutoのL6やAITOの売れ筋モデルのM7が迎え撃ちます。
ちなみに、ドイツ御三家とともに中国市場で厳しい動向が確認されているのがポルシェの販売動向です。2024年シーズンに突入して以降、明らかに販売台数が減少中であり、2024年1月から9月の通しで、前年同期比29%というマイナス成長です。
ポルシェは中国市場における販売減少の理由を、過度な値下げ戦争に追随していないからと説明しているものの、たとえば現時点でカイエンは8万元の値引き、パナメーラも12万元の値引き、売れ筋のマカンも7万元値引き、最新のマカンEVも、発売直後にもかかわらず5万元の値引き措置を断行しており、値下げ競争に参加していないことが販売台数減少の理由にはなっていません。
まさにこれは、中国において、ポルシェというブランド価値の終焉が近づいていることを意味するのかもしれません。もちろん細部を見れば見るほど、ポルシェのさまざまなよさに気づくことはできるかもしれませんが、結局、バッテリーEVによる動力性能の高さを存分に活かすことによって、ポルシェのような動力性能とともに、ソフトウェアの完成度の高さから来るさまざまなソフト部分の価値、および高級シート素材などの快適装備を追求することを両立。その上でポルシェの3分の1の価格で買えるとくれば、これまで見栄のためにポルシェをはじめとするドイツ車を購入していたユーザーも、中国製高性能EVを検討するのは自然なことでしょう。
日本では想像できないかもしれませんが、中国製EVが、ポルシェを含めたドイツ車を代替できるような性能と新たな付加価値を、コストパフォーマンス高く両立して提案することができているという点こそが、あのドイツ車好きの中国人のマインドの変化を促している最中なのです。
この世界最大マーケットであり、ドイツ御三家にとって重要な中国市場におけるプレミアムセグメントの販売動向の行方には目が離せません。
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最近、B〇Dの車輪がサスペンションごと脱落するありえない事故が多発しているようですが、発火事故といい中国企業の品質管理はどうなっているのでしょうか?
安かろう悪かろうでは今まで優秀な日本車に乗ってきた日本人には通用しないのではないだろうか。