■新型車の国内導入はまだ減る? 東京モーターショー開催年なのに…
最近は新型車(新規投入やフルモデルチェンジされる車種)が大幅に減っています。1990年頃には、基本部分を共通化した姉妹車を除いても、1年間に30車種以上の新型車が発売されました。それが今は10車種前後です(マイナーチェンジやグレード追加を除く)。国内で発売される新型車は、20~30年前の半数以下になりました。
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なぜ国内市場に新型車が投入されなくなってしまったのでしょうか?
2019年の今年は、東京モーターショーが開催される年に当たりますが、数多くの新型車が発売されるという噂があまり立ちません。現時点で把握できている新型車は以下の車種です。
●2019年に発売される可能性が高い新型車
■トヨタ
・GR スープラ
・カローラセダン&ワゴン
・RAV4
■日産
・デイズ
・デイズルークス
■ホンダ
・フィット
■マツダ
・アクセラ
・新型SUV
■三菱
・eKワゴン
・eKスペース
■ダイハツ
・タント
■国産メーカーにとって日本の重要性が下がった
新型車が減った一番の理由は、メーカーにとって国内市場の重要性が下がったことです。今はダイハツを除くと、世界生産台数の80%以上を海外で売っています。
国内の販売比率は各メーカーともに20%以下で、2018年(暦年)のトヨタは約18%でした。日産は国内比率が約11%にとどまり、三菱製の軽自動車を除くと約8%まで下がります。
日本の販売比率が下がったことで、メーカーにとっての重要性も薄れ、日本国内で新発売される車種が減ったわけです。
ちなみに過去を振り返ると、日本車は1973年のオイルショックをきっかけに、まずは北米市場で人気を高めました。燃費が優れ、壊れにくく、低価格というメリットが、ガソリン価格急騰の中で注目されたのです。
そして1990年頃までは、海外と国内の販売比率はおおむね50%ずつでした。
ところがその後にバブル経済が終わります。また1989年に自動車税制が改訂されて3ナンバー車の不利が解消され、日本メーカーは海外向けの3ナンバー車を国内にも流用するようになりました。
■海外とは異なる特殊な日本のマーケット
この日本のユーザーを軽視した安直な商品展開も売れ行き不振の材料になり、国内販売は1990年の778万台をピークに、急降下を開始します。その一方で海外は売れ行きを伸ばした結果、2000年頃には国内比率が約30%に下がりました。2010年には20%に減り、今はそれ以下となっています。
2018年の国内販売台数は527万台ですから、1990年の68%です。国内市場を諦めて新型車の発売も怠ったため、売れ行きがさらに下がる悪循環に陥りました。
メーカーの商品企画担当者に尋ねると、この国内軽視については、いくつかの言い訳が聞かれます。まずは市場環境です。「国内市場は特殊なのです。国内専売の軽自動車が全体需要の36%に達して、海外ではマイナーな3列シートのミニバンも売れ筋です。日本と海外の両方で売れるのは、コンパクトカーだけです。これでは日本向けの商品を積極的に開発するのは難しいです」とのことです。
また「今は国内市場を贔屓(ひいき)しません。市場の規模と将来性を客観的に判断して、投資対効果の高い市場には、新型車を優先的に投入します。日本は市場規模が縮小傾向で、将来的にも需要が伸びる見込みが乏しいため、新型車も少ないのです」
■「日本で買えない日本車」をもっと国内で活用すべき
このほかには「クルマの耐久性が向上して、1台の車両を長く使うユーザーが増えました。そうなればフルモデルチェンジの周期も長引きます」「環境や安全技術への投資が高まり、以前ほど新型車を活発に開発できません」といった話も聞かれます。
いずれも理屈は通りますが、成り行き任せでしょう。国内の需要を積極的に掘り起こして回復させる心意気は見えません。モーターショーの開催年だから、新型車を発売するといった意欲もありません。
この状況では、国内販売の回復は難しいでしょう。自動車業界を元気にする一番の原動力は、魅力のある新型車になるからです。
新型車が発売されると、それを見に出かけた顧客が自分のニーズをあらためて見直して別の車種を購入することも多いです。新型車はいろいろな意味で、市場を活性化させるのです。
したがって国内向けの新型車を開発するのが難しいなら、せめて海外向けの商品を投入すべきです。かつてトヨタが販売していた「FJクルーザー」、ホンダ「エレメント」などは、北米向けの商品でしたが相応に注目されました。海外向けに開発された「日本で買えない日本車」を、もっと国内で活用すべきです。
業務提携をいかせば、たとえばルノー「トゥインゴ」を新しい日産「マーチ」として販売するなど、柔軟な商品開発も考えられます。もちろん最善の方法ではありませんが、新型車がほとんど発売されない状態がもっとも悪いのです。いつの時代も、クルマは楽しく、興味を引きつける商品であって欲しいです。
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