2021年9月に発売されたトヨタの新型SUV「カローラクロス」が絶好調だ。同年11月には早々と7300台を登録。この台数はカローラシリーズで最も多く、車種別の小型/普通車登録台数でカローラシリーズが久々に首位を獲得する原動力となった。
カローラクロスはなぜ高い人気を得たのか? 今までのトヨタSUVラインナップになかった魅力とはなにか? カローラクロスの長所、短所や、オススメグレードを解説する。
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文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部
[gallink]
トヨタSUVラインナップから読み解くカローラクロスの立ち位置
今はSUVの売れ行きが好調だ。このなかでも特に高い人気を得ているのは、全長を4500mm以下に抑えた比較的コンパクトなSUVで、2021年9月に発売されたカローラクロスはその代表に位置付けられる。
カローラクロスは、2021年11月には7300台を登録した。ヤリスクロスの6480台、ハリアーの6384台、ライズの6217台を上まわり、SUVの最多販売車種になった。その結果、2021年11月にはカローラがシリーズ全体では1万3631台を登録して、小型/普通車の車名別登録台数では1位になっている(軽自動車まで含めた総合1位はN-BOX)。カローラシリーズのうち、カローラクロスが占める割合は54%に達する。
カローラクロスは、なぜ高い人気を得たのか。それは今までのトヨタのSUVラインナップには偏りがあり、カローラクロスが登場したことで、ユーザーの不満も解消されたからだ。この事情は下に示したラインナップ構成を見ると分かりやすい。
トヨタのSUVラインナップ
SUVが人気を得た一番の理由は、大径タイヤの装着などに伴う外観の強い存在感と、ワゴン風のボディスタイルによる快適な居住性や積載性を両立させたことだ。SUVはカッコ良くて実用的だから人気を高めた。
2つ目の理由は、SUVの多様性だ。日常的に快適かつ便利に使える前輪駆動ベースのシティ派、悪路走破力を高めた後輪駆動ベースのオフロード派、前輪駆動ベースながらも悪路のイメージを持たせた中間的なラフロード派がそろう。
これらのうち、今ではオフロード派は少数で、日本車ではランドクルーザーと同プラド、ジムニーと同シエラ、ピックアップのハイラックスしか用意されない。
それでもひとつのカテゴリーで、シティ派とラフロード派を用意できるメリットは大きい。SUVの注目度が高いこともあり、トヨタはコンパクトなヤリスクロスとライズ、LサイズのハリアーとRAV4を好調に販売している。シティ派とラフロード派という2つの性格を使い分けることで、トヨタのSUVでは、同じサイズに2車種の共存を可能にした。
ただし売れ行きを見ると、ミドルサイズだけは弱かった。カローラクロスが登場する前はC-HRに限られ、2021年1~11月の1か月平均登録台数は1545台に留まる。先に挙げたヤリスクロスの6480台、ハリアーの6384台、ライズの6217台に比べると圧倒的に少ない。
C-HRの外観は鋭角的でカッコイイが、SUVの典型ではない。ボディサイズの割に後席と荷室が狭く、カッコ良さは満足させても実用性に不満があった。
しかもC-HRの中間的なミドルサイズは、本来なら国内市場で最も売れ行きを伸ばせるゾーンだ。ヴェゼルやXVは、このサイズと適度な価格設定によって成功している。C-HRがデザインやコンセプトのために売れないのは、トヨタとして残念で歯がゆいことだった。
トヨタミドルSUVラインナップを救った「カローラクロス」
2021年9月に発売されたカローラクロス。ボディサイズは全長4490×全幅1825×全高1620mm
そこで「救世主」としてカローラクロスが投入された。カローラクロスのプラットフォームは、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値まで含めてC-HRと共通だ。全長は4490mm、全幅は1825mmだから、C-HRに比べると105mm長く30mmワイドだが、同程と考えて良い。
しかしボディスタイルは大きく異なり、カローラクロスはSUVの典型だ。リアゲートを立てて、背の高い荷物も積みやすい。全長も少し長いから、積載性が優れている。
その代わり外観は保守的だが、これは欠点にならない。例えばミニバンではアルファードやヴォクシーが売れ筋だが、この2車種の基本的な外観は、約20年前に初代モデルを投入した時からほとんど変化していない。ミニバンの場合、今も昔も存在感が強く、車内の広そうに見えるデザインが好まれるからだ。
セダンも同様で、メルセデスベンツCクラス、BMW 3シリーズのような典型的なデザインが人気を得ている。逆にクラウンは、ボディ側面のウインドーを3分割してリアウインドーを寝かせ、先進性を表現したが、売れ行きは下降している。
つまり好調に売るには「セダンらしさ」や「SUVらしさ」が大切で、C-HRはこの点で失敗した。逆にカローラクロスは、国内市場に最適なサイズでSUVの典型的なデザインを採用したから成功している。
さらにC-HRは全車に4輪独立懸架を採用したが、カローラクロスでは、2WD(前輪駆動)のリアサスペンションをトーションビームの車軸式に簡素化した。トーションビームは構造がシンプルだから空間効率が優れ、コスト低減も可能になり、価格を割安に抑えられる。同様の手法をカローラのセダンとツーリングも採用している。このようにカローラクロスには、好調に売るための仕掛けが多い。
カローラクロスの長所と購入時にチェックしておく注意点とは
ダッシュボード全体が水平基調で構成されたカローラクロスのインパネ
カローラクロスでは室内空間にも特徴がある。インパネなどの質感は特に高くないが、不満も感じさせない。価格を考えれば納得できる。
居住性も同様だ。4名が不満なく乗車できる広さを備える。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ弱だ。ヴェゼルの2つ半に比べると狭いが、大人4名の乗車に支障はない。
そして荷室長(荷室の奥行寸法)は、後席を使った状態で849mmとされ、全長が4500mm以下のSUVでは最長レベルだ。前述のとおりリアゲートの角度を立てたので、荷室容量も大きく、4名で乗車して荷物を積む用途に適する。SUVの典型的な外観から想像されるとおりの実用性を備える。
エンジンは直列4気筒1.8Lのノーマルタイプとハイブリッドを搭載する。ノーマルエンジンは実用回転域の駆動力が高く運転しやすい。ノイズは小さく、登坂路などを除くと気にならない。
ハイブリッドはプリウスなどに幅広く使われるタイプで、不満のない動力性能を発揮する。特に街中の走りは、モーター駆動の効果もあって滑らかだ。ノイズも小さく、快適で運転しやすい。
操舵感は特に機敏に曲がるタイプではないが、操舵に対する反応は比較的正確で、後輪の接地性も優れているから安心できる。上質とかスポーティという印象はないが、誰にでも運転しやすく、カローラブランドの本質を突いている。車両重量はノーマルエンジンがハイブリッドよりも50~60kg軽く、峠道などを軽快に運転できる。
乗り心地は駆動方式とグレードによって異なる。駆動方式については、足まわりが4輪独立式になる4WDが快適だ。後輪が車軸式の2WDは、やや上下に揺すられる印象になる。グレードについては、18インチタイヤを装着する最上級のZよりも、17インチタイヤのSとGが柔軟だ。
つまり乗り心地が最も快適なのは、SとGの4WDになる。足まわりとタイヤの両方が柔軟に動き、引き締まり感は乏しいものの、乗り心地を柔らかく仕上げた。逆にZの2WDは、粗さはなくヤリスクロスに比べると快適だが、カローラクロスのなかでは時速40km以下の低速域を中心に硬く感じる。
以上のようにカローラクロスは、さまざまな機能をバランス良く仕上げた。特に適度なサイズのSUVで、荷室の広さと使い勝手を重視するユーザーにとって、カローラクロスは選ぶ価値が高い。
カローラクロスの後部座席。後席の膝先空間は、身長170cmの大人4名が乗車して握りコブシ2つ弱
逆に注意点としては、4名で乗車するときは後席の足元空間を確認したい。前述のとおり、ヴェゼルよりは少し狭く、長身の同乗者が座ると窮屈に感じる場合がある。
荷室は広くて使いやすいが、後席の背もたれを前側に倒すと、広げた荷室の床に大きな段差ができる。ディーラーオプションのラゲージアクティブボックス(2万8050円)を装着すると、荷室の床が高まって段差が埋められ、床下には収納スペースができる。
動力性能はノーマルエンジン、ハイブリッドともに充分だが、前者は設計が古く燃費性能は良くない。アイドリングストップが非装着なこともあり、WLTCモード燃費は14.4km/Lに留まる。駆動方式も、ハイブリッドでは後輪をモーターで駆動する4WD(E-Four)を選べるが、ノーマルエンジンは2WDのみだ。そのためにカローラクロスでは、国内販売総数の90%近くをハイブリッドが占める。
装備では安全面に注意したい。衝突被害軽減ブレーキは、自車が右左折するときに、直進車や横断歩道上の歩行者を検知してブレーキを作動させる機能がない。これらを備えたヤリスやヤリスクロスの衝突被害軽減ブレーキに比べると、カローラクロスは新型車でありながら、設計の古さが見られる。
最もお買い得なグレードはハイブリット? それとも?
次はカローラクロスのグレードを選びを考える。まずはノーマルエンジンとハイブリッドを選択する。カローラクロスの場合、ハイブリッドの価格はノーマルエンジンに比べて35万円高いが、同じパワーユニットの組み合わせになるカローラツーリングの価格差は、43万4500円に達する。ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差は、一般的には37~60万円だが、カローラクロスは35万円だからハイブリッドが割安だ。そこで4WDも設定した。
そしてハイブリッドは購入時の税額も約10万円安いので、実質価格差は約25万円に縮まる。レギュラーガソリン価格を160円とすれば、5万km前後を走ると、25万円の実質価格差を燃料代の節約で取り戻せる。カローラクロスでは、ノーマルエンジンのWLTCモード燃費は14.4km/L、ハイブリッドは26.2km/Lと1.8倍の開きがあるので、価格差を取り戻せる距離が短くなった(10万km以上を要する車種も多い)。
そうなると最も買い得なグレードは、実用装備を充実させ、乗り心地の快適な17インチタイヤを装着するハイブリッドSだ。価格は275万円(2WD)になる。雪道や悪路を走る機会が多いユーザーは、4WDのS・E-Fourも検討する。価格は295万9000円に高まるが、悪路走破力と併せて前述のとおり乗り心地も快適になる。予算を抑えたい時は、240万円で設定されるノーマルエンジンのSを選ぶ。
このようにカローラクロスは、実用性を高めて価格は割安だから人気車になった。販売店に納期を尋ねると、2021年12月下旬時点での注文で、納車されるのはノーマルエンジン車が2022年5月、ハイブリッドは8月になるという。グレードによってはライバル車のヴェゼルよりも少し短く、そこがカローラクロスのメリットにもなっているが、5~8か月では依然として長いことに変わりはない。商談は早めに開始したい。
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