2000年前後に登場した「人とちょっと違う」コンパクトカーたちを振り返ろう
1990年代から2000年代にかけて日本では空前のミニバンブームが吹き荒れましたが、コンパクトカーも各社からあまたのモデルが投入され百花繚乱の様相を呈していました。残念ながら1代限りで終わってしまったものの、個性が光っていたクルマたちを振り返ります。
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ダイハツ ストーリア:ちょっと日本車離れした雰囲気だった
ダイハツの軽自動車以外の乗用車というと「5m2(平米)カー」の初代「シャレード」が有名。そのリッターカークラスの(当時の)新顔として1998年に登場したのが「ストーリア」だった。うろ覚えだが、たしか宇宙人のようなキャラクターが登場するTV−CMがオンエアされていたが、当時ダイハツは創立90年を迎えた頃で、一緒に流されていた「We do COMPACT.」の企業スローガンも懐かしい。
ストーリアは楕円のフロントグリルや何かの種か実のような形状のヘッドランプを組み合わせたマスクで、ちょっと日本車離れした雰囲気の持ち主だった。ダイハツのデザイン部門は古くからのイタリアとの交流を絶やさなかったようで(残念ながら突っ込んだ取材はしなかったが)、コケティッシュなルックスはそういう事情から生まれたものだったのかも。当時フィアット初代「プント」を足に乗っていた筆者など、インパネの雰囲気に何か感じるものがあった。
実車はロードノイズの車内への侵入など鷹揚なところはあったものの、スッキリとした広さの室内空間など、こざっぱりとした使いやすい実用車だった。ちなみに「デュエット」はトヨタ版の兄弟車。
マツダ ベリーサ:センスにこだわった隠れたロングセラー
マツダ「ベリーサ」の発売は2004年6月。当時のニュースリリースには「造り込みのよさを実感できる新型コンパクトカー」とあった。成り立ちとしては当時の2代目「デミオ」と同じプラットフォームを元に作られ、2490mmのホイールベースはデミオと共通の数値だった。
ではデミオとこのベリーサは何が違ったのか? というと、デミオが初代のコンセプトを受け継いだ実用重視の多用途車だったのに対し、ベリーサは、あくまでセンスにこだわりをもつ、いわば意識高い系の人のお眼鏡にもかなう仕立てのクルマだったという点。
当時、同車のデザイナーのKさんに話を聞いたが「BMWミニとか、そういった個性、質感を大事にしたクルマ」とのことで、外観はシンプルだったが、内装のレザーシート、ピアノブラックのセンターパネル(マイナーチェンジ車)やミュージックHDD、アドバンスキーレスシステム(カードキー)など、装備も充実。後席の背もたれを前倒しするストラップは左右分を中央に寄せサッとスマートに操作できるようにしてあったりと、平たく言うとお洒落さん向けのクルマだった。2004年~2016年と息の長いモデルだった点も見逃せない。
トヨタ イスト:早すぎたSUVタイプのコンパクト
2002年に登場したトヨタ「イスト(ist)」は、「ヴィッツ」をベースに誕生。同世代のクルマに同じ出自で多目的車の「ファンカーゴ」があったのに対して、イストは「早すぎたSUVタイプのバリエーション」だったというべきか。
特徴は1535mm(または1530mm)と全高を高くし、15インチ大径タイヤを組み合わせた、いかにも使えそうなクルマとなっていたのが特徴。4WD車(とFFの1.3L車)は最低地上高も175mmとあり、決して見掛け倒しではない機動性ももっていた。
あくまで個人的な見解だが、後ろ姿が文福茶釜のようにも見えた親しみの持てるシンプルなスタイル、レンジローバーやR50「ミニ」のように2本のピラーを立てたセンターコンソールをアクセントにしたインテリアなど、さり気なく気持ちのいいデザインの内装なども特徴だった。最長320分の再生にも対応したMDデッキ内蔵のMD、CD、AM/FMマルチ電子チューナー一体2DINオーディオも今では懐かしい。
三菱コルト:スマート フォーフォーとプラットフォームを共有
リトマス試験紙のようだが、三菱「コルト」と聞いて600、800、1000など1960年代のコルトの車名と姿を連想する人は、クルマ好きの人生をかなり長くやってきた人ということになる。一方で「新しい方のコルト」は、同じ車名をリバイバルさせて2002年に登場したクルマ。
といっても登場から早いもので20年以上が経っているから、10年をひと昔とすればもう、ふた昔前のクルマということになる。ふた昔を感じさせるのは、このクルマがかつて三菱と当時のダイムラー・クライスラーが協業していた時期があり、その頃に共同開発されたプラットフォームをもとに生まれたということも。この時にダイムラー・クライスラーから誕生したのがスマートの「フォーフォー」である。
スタイルは当時の三菱に在籍したオリビエ・ブーレイデザイン本部長の手になるもの。ワンモーション的に作られたボディはそれなりに斬新。インテリアも空間重視で後席には150mmのスライド機構も備わった。ラリーアート仕様や、リアオーバーハングを伸ばして(2500mmのホイールベースは変わらず)荷室を広げた「コルトプラス」などもあった。
トヨタiQ:欧州市場を意識したAセグメントのマイクロカー
2007年のフランクフルトショー(と東京モーターショー)にコンセプトカーを出品。2008年のジュネーブショーで量産型が登場、同年のパリサロンで正式デビューを果たした。こうした流れだけでもこのトヨタ「iQ」がいかに欧州市場を重視していたかがわかるが、2007年には2代目が登場したスマートとともに、盛り上がるか!? と思われたマイクロカー市場に投入されたクルマだった。
特徴は何といっても3mを切る2985mmの全長に対して1680mmの全幅を組み合わせ、それをクルマとして成立させたユニークなパッケージングだった。ホイールベースも2mの短さで、前後オーバーハングも極限まで切り詰められていた。最小回転半径は3.9mの小ささで、これについでは登場時のプレス向け試乗会で、スマートより小さいことをアピールするデモが行われていたほど。
そして驚くべきは+2の4名乗車を可能にしていた点。ガソリンタンクは薄型にし床下へ、後席背後には世界初だったリアウインドウカーテンシールドエアバッグを備えた。エンジンは3気筒996cc、駆動方式はFF、普通であれば割り切りそうな静粛性への配慮などもされた、いかにもトヨタらしいマイクロカーだった。
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